茶業研究報告
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1985 巻, 62 号
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  • 中村 順行
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 1-7
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    チャの組織培養における不定器官分化を解明する目的で,種々の器官および茶期別・節間別茎切片からの根の分化とその品種間差異を検討した。
    1) 培養器官別の根の分化率は茎切片(51%)>根切片(44%)>葉切片(29%)>子葉切片(0%)の順であった。
    2) 秋季の新芽の各節間から採取した茎切片からの根の分化率および分化本数は第1節間で4.84%,0.11本,第2~5節間で25,17~27.48%,0.45~0.58本であった。
    3) 各茶期の茎切片における根の分化率は一番茶期で75%と高く,三番茶期や四番茶期のそれと比較し約3倍となった。根の分化本数も一番茶期で3.18本と多く,三番茶期から四番茶期にかけて少なくなった。
    4) 18品種・系統の一番茶期の茎切片の培養では,カルスは培養7日後頃より認められ,60日後には大部分の茎切片がカルス化した。また,根の分化は培養10日後より観察され始め,供試品種・系統を平均し60日後には28%,90日後には45%の分化率を示した。
    5) 茎切片培養における根の分化には著しい品種・系統間差異が認められ,根の分化率および分化本数は大葉ウーロン,やぶきた,おおいわせ,かなやみどりなどで高く,ふじみどり,やまとみどり,Ace137などで低かった。
    本試験を実施するに際し,多大なる御協力をいただいた静岡県立農業短期大学校,昭和59年度生の福島和義氏,望月直美氏に謝意を表します。
  • 岡井 仁志, 岩崎 長, 吉田 輝久, 平野 正史
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 9-13
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    京都府下の多くの玉露,てん茶園では,施肥の際に元出し,元寄せと呼ばれる伝統的な作業が行われている。しかし,この作業の実施時期は秋の根の生長期にあたっており,根系を傷めるおそれがあると考えられるため,元出し,元寄せが枝条の生育に及ぼす影響について検討した。
    (1)慣行の深さ(約10cm)で元出しが実施された場合,元出し時期が早いほど,その年の枝条の生長,および翌年の枝条発生数が強く抑制される傾向があった。従って,伝統的な元出しの実施時期は,枝条の生育を抑制することの少ない時期であると考えられた。
    (2)深層(約30cm)まで元出しを行うと,その実施時期に関係なく,個々の枝条の生長,および枝条の発生数が強く抑制された。
    (3)総括的にみると,元出し,元寄せが連年実施されると,「少数大枝条型」の生育となる傾向があった。また,枝条数の方が一枝新芽重よりも,生葉収量を大きく左右する要因であったために,元出し,元寄せを連年実施した区の生葉収量は,対照区に比べて少なかったものと考えられた。一方,荒茶品質は,元出し,元寄せを行うとやや向上する傾向が認められた。
    以上のことから,伝統的な元出し,元寄せは,枝条数の確保よりも個々の枝条の生長を重視した施肥慣行であり,この作業によって,生葉収量は減少するが,荒茶品質は向上すると考えられた。
    なお,本論文のとりまとめにあたっては,農林水産省茶業試験場茶樹第3研究室長青野英也博士から懇切なる助言と指導を賜った。ここに深謝の意を表したい。
  • 保科 次雄, 小菅 伸郎
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 14-17
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶樹による施肥窒素の同化および地上部への転流について,15Nトレーサー法を用いて試験を行った。
    茶樹の根はアンモニア態窒素の施肥を受けると,急速にグルタミンの濃度が高まった。15標識Nのアンモニア態窒素は,グルタミンのアミノ基Nよりもアミド基Nに高濃度に取り込まれた。一方,テアニンへの取り込みは遅く,またテアニンの両基Nへの取り込みに差は少なかった。次に施肥窒素の吸収,同化後の木部樹液中のアミノ酸はグルタミンが極めて多かった。
    以上の結果から,アンモニア態窒素の施肥を受けた茶樹の根は吸収した窒素をグルタミンに同化し,それを中心としたアミノ酸を木部樹液を通して地上部へ転流することが明らかとなった。
  • 吉田 勝二, 志礼 治
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 18-28
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    砂質土壌と粘質土壌を用い無機態窒素の動態を,施肥量,施肥時期と肥料を変えて2年間にわたり検討した。
    1 NH4-NとNO3-Nの土壌中の含有量を1年間にわたり分析した結果,NH4-Nは4~6月にその含有量が最も高く,秋から冬にかけて低い値を示した。この傾向は砂質土壌において,3~6月の施肥後降雨量が少ないと顕著に現われていた。
    NO3-Nは5~7月と11月に含有量のピークがあり,8~10月と1~4月に谷を持つ経年変化を砂質,粘質土壌で示していた。特にこの周期性は砂質土壌で顕著であった。
    砂質と粘質土壌についてNH4-NとNO3-Nの含有量を比較すると,NH4-Nは施肥後の降雨量の少なかった1982年度は砂質土壌で高い値を示したが,降雨量の多かった1983年度では粘質土壌でやや高い値を示した。NO3-Nは砂質土壌の方が粘質土壌よりも含有量が高かった。この傾向は第1層で顕著であった。
    2施肥量,施肥時期,肥料の種類の差異についてみると,施肥量では増施区が慣行区よりNH4-N,NO3-N含量が両土壌とも高かった。
    また春の施肥量を増すと,NH4-N含量は1982年度で両土壌とも高かった。
    肥料の種類別にみると,1982年度の砂質土壌のNH4-N含量が第1,第2層とも4~5月にかけて慣行区が有機質区より高かったが,6月に入ると有機質区の方が高かった。NO3-N含量は砂質土壌の有機質区が5~6月と11月で高いレベルを維持した。
    3 茶芽の生育と全窒素含有率についてみると,茶芽の生育(出開度)と芽長は,春増施区と有機質区でそれぞれ高い値を示した。
    茶芽の全窒素含有率は,砂質土壌で生育した茶芽の方が粘質土壌の茶芽より大であった。また増施区,春増施区,有機質区ともに慣行区より大であった。
    本試験を実施するにあたり,御協力をいただいた奈良農試茶業分場の職員の皆様に深く謝意を表するものである。また本試験をとりまとめるにあたり,懇切丁寧なる御教示をいただいた農水省茶試栽培部前土肥室長の石垣博士,小菅土肥室長,竹尾製茶部長に深く感謝申し上げるものである。
  • 刑部 勝
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 29-39
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1947~1979年にわたって当場の茶園内に設置された青色蛍光誘蛾灯に飛来した昆虫と茶害虫の種類を調査した。結果を要約して示すと次のとおりである。
    1) 1951~1960年に調査した結果によると,誘殺昆虫数は年平均で約10万頭に達したが,これらの昆虫の約80%は鱗翅目に属するものであった。
    2) この調査で種名が確認された昆虫は186種であった。しかし,その誘殺数は全誘殺数の約1/2に過ぎなかった。
    3) 1947~1979年の調査で31種類の茶害虫が誘殺された。それらの種名はクダマキモドキ,チャバネアオカメムシ,ウスミドリメクラガメ,チャノミドリヒメヨコバイ,アオバハゴロモ,クワゴマダラヒトリ,カブラヤガ,ハスモンヨトウ,チャドクガ,ドクガ,チャノウンモンエダシャク,ナミガタエダシャク,ヨモギエダシャク,トビモンオオエダシャク,チャエダシャク,エグリヅマエダシャク,テングイラガ,イラガ,アカイラガ,ゴマフボクトウ,オオミノガ,チャミノガ,アカシマメイガ,トビイロフタスジシマメイガ,ナカアカシマメイガ,ビロウドハマキ,チャノコカクモンハマキ,チャハマキ,チャノホソガ,ナガチャコガネおよびヒメコガネである。
    この調査は,当時,虫害研究室の職員であった南川仁博,植田熊治(1947~1960年調査),刑部勝,清水靖子(1961~1974年調査)および刈屋明,大泰司誠(1975~1979年調査)の各氏によって行われたものである。ここに明記してこれらの方々の労苦に深甚の謝意を表する。
  • 刑部 勝
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 40-45
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    前報で得られた結果から青色蛍光誘蛾灯飛来茶害虫の1947~1979年の間における誘殺数の年次的消長を調べた。
    1) 誘殺茶害虫31種のうちウスミドリメクラガメ,チャドクガ,チャノウンモンエダシャク,チャエダシャク,エグリヅマエダシャク,テングイラガ,アカイラガ,ゴマフボクトウおよびナカアカシマメイガの誘殺数は1950年代または1960年代の前半から漸減して1970年代ではほとんど誘殺されなかった。
    2) チャノホソガの誘殺数は1950年代から1960年代に向かって急増したが,それ以降は減少傾向にあった。
    3) ヨモギエダシャクとチャノコカクモンハマキの誘殺数は1960年代に一時減少したが1970年代の後半には再び増加した。
    4) チャハマキの誘殺数は1960年代以降漸増した。
    5) 他の誘殺茶害虫18種における誘殺数の長期変動については,調査期間が短かかったり誘殺数が非常に少なかったりしたために,明りょうでなかった。
  • 浜村 徹三
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 46-51
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    全国の茶園から採集したカンザワハダニ雌成虫の水酸化トリシクロヘキシルスズ剤に対する感受性を室内実験によって検定した。
    1. LC50による感受性検定の結果,最も高い抵抗性を示した静岡県島田市のカンザワハダニは,鹿児島県阿久根市のハダニより73倍強く,水酸化トリシクロヘキシルスズ剤はほとんど実用性がないと判断された。
    2. 水酸化トリシクロヘキシルスズ剤4,000倍(62.5ppm)における死亡率によって各地の茶園のカンザワハダニを検定した結果,静岡(牧之原),京都,福岡の各県で抵抗性の発達が顕著であった。その他の多くの県でも部分的に感受性の低下が認められた。
    3. 本剤に抵抗性を示すカンザワハダニ雌成虫に対して有効な薬剤は,ポリナクチン複合体・BPMC,ケルセン,DMTP,プロチオホス,BRPであった。
    終りに,本研究の遂行にあたり,終始有益な御助言をいただぎ,校閲の労をとって下さった当場虫害研究室の刑部勝室長,実験に御協力いただいた元当場研修生の谷下聡彦,大尾豊両氏に,また,サンプルを送付していただいた各府県の茶害虫研究担当者の方々に心から御礼申し上げる。
  • 堀川 知廣
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 52-54
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    By using a small-sized power sprayer (power spray:ARIMITU CS-10K) and a power sprayer drivel battery (battery sprayer:TOSHIBA GARDEN SPRAYER EH-15), the eftect of spray pressure on the contral of Gray blight was studied.
    Two fungicides, chlorothalonil (75% WP, dilu-tion:1/600) and captafol (80% WP, 1/2000) were sprayed 200 litres per 10 a. to tea bushes within a few hour after the artficially inoculation of Pestalotia longiseta SPEGAZZINI. The discharge rates of the power sprayer and the battery sprayer were 4.76l/min and 0.29 1/min, respectively.The spray pressures on an area of 5×5 cm at a distance of 30 cm from nozzle of a sprayer were 159g in the power sprayer and 2g in the battery sprayer.
    In the application of chlorothalonil, the number of diseased leaves was significantly fewer in the power sprayer than in the battery sprayer. On the case of captafol, the power sprayer also showed the effective control on Gray blight.
  • 大泰司 誠, 堀川 知廣
    1985 年 1985 巻 62 号 p. 55-57
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    Simultaneous communication disruption for suppression of the smaller tea tortorix moth, Adoxophyes sp., and the tea tortorix moth Homona magnanima with (Z)-11-tetradecenyl acetate, the common pheromonal component of the two species, was conducted for 2 year (1983-1984) on 5-ha nonisolated commercial tea fields. Rate of evaporation was 2.5 to 13.7 g/day/ha. Inhibition rate of male attraction, which was monitored with pheromone traps, was high ranging 98.2 to 99.3% for Adoxophyes and 99.5 to 99.96% for Homona. Mating of females of Adoxophyes and Homona in the pheromone-treated fields were reduced 32.0-39.2% and 26.5-66.2% from those of control fields, respectively. in the 1 st year, the density of the overwintering larvae of Adoxophyes in the treated field was reduced to 17.8% of that of the control fields and 56.4% in the 2nd year. And those of Homona were 32.9% and 7.4% respectively.
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