自然仕立園と弧状仕立園における玉露原料の化学成分含量について部位別に検討した。
1) 自然仕立園の玉露原料では,
(1) 下位葉になるほど可溶分,水溶性窒素,アスパラギン酸,グルタミン酸,セリン,テアニン,イソロイシソ,ロイシン含有量は増加し,水溶性窒素/全窒素比は高くなった。
(2) 下位葉になるほど全窒素,タンニン含有量は減少し,タンニン/全窒素比は低下した。
(3) カフェイン含有量は第2葉が最も多く,水溶性窒素/可溶分比は第3葉が最も高い傾向であった。
グルタミン,アルギニソ含有量は第2葉が最も少なく,タンニン/カフェイン比は第3葉が最も低い傾向であった。
(4) 茎では,可溶分,全窒素,タンニン,カフェイン,アスパラギソ酸,グルタミン酸,テアニソ含有量は上部に多く,タンニン/全窒素比は上部で高かった。一方,水溶性窒素,アスパラギン酸,セリン,グルタミン,アラニン含有量は下部に多く,タンニン/カフェイン比,水溶性窒素/全窒素比,水溶性窒素/可溶分比は下部で高かった。
(5) アミノ酸類は葉より茎に多い傾向であった。特にグルタミンは,葉の30倍程度を茎に含有していた。
2) 弧状仕立園の玉露原料では,
(1) 下位葉になるほど可溶分,アスパラギン酸,グルタミン酸,セリン,アルギニン,アラニン,γ-アミノ酪酸,イソロイシン,ロイシン含有量は増加し,水溶性窒素/全窒素比は高くなった。
(2) 下位葉になるほど水溶性窒氣全窒素,カフェイン含有量は減少し,水溶性窒素/可溶分比は低下した。
(3) タンニン含有量は第3葉,アスパラギン,グルタミン含有量は第2葉で最も少なく,タンニン/全窒素比,タンニン/カフェイン比は第2葉で最も低い傾向であった。
テアニン含有量は第3葉で最も多い傾向であった。
(4) 茎では,可溶分,水溶性窒素,全窒素タンニン,カフェイン,アスパラギン酸,グルタミン酸,アスパラギン,セリン,グルタミン,テアニン含有量は上部に多く,タンニソ/全窒素比,水溶性窒素/可溶分比は上部で高かった。
タンニン/カフェイン比,水溶性窒素/全窒素比は下部で高かった。
(5) アミノ酸類は,葉より茎の方が多く,特に茎のグルタミン含有量は葉の30倍程度であった。
3) 弧状仕立園原料は自然仕立園原料に比べて,タンニンは多いが他の調査した全ての成分は少なく,特に茎下部での含有量の差が大きかった。
4) 玉露原料は煎茶原料と大きく異なる成分組成をしており,特にアミノ酸類は,葉位間並びに葉と茎との関係が煎茶原料とは逆の傾向であると推察できた。
最後に,アミノ酸の分析並びに取りまとめにあたり御指導頂いた農林水産省野菜・茶業試験場の阿南豊正氏に深甚なる謝意を表します。
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