地理学評論 Series A
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97 巻, 4 号
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論説
  • 岩月 健吾
    2024 年97 巻4 号 p. 223-251
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2025/07/18
    ジャーナル フリー

    かつて日本各地でみられた季節の自然遊び「クモ相撲」は,第二次世界大戦後の経済成長の中で,社会・自然環境の変化を背景に,多くの地域で衰退・消滅してしまった.しかし,関東,近畿,四国,九州の一部地域では,クモ相撲が行事として現在も存続している.本研究では,鹿児島県姶良市旧加治木町地域のクモ相撲行事を事例に,参加者が持つ民俗知の構造を明らかにした.また,クモの持続的利用と民俗知の関係を考察した.参加者が持つ知識は,クモの採集,飼育,試合,返還の4段階の活動から形成されており,クモの入手・利用について,多様な知識が機能していた.参加者の視野は,クモの生存を支えるほかの動植物にまで広がっていた.各段階における知識は独立したものではなく,相互に影響を与え変化する弁証法的な構造を有していると考えられた.環境が変化する中,現地では,クモと共に生きる術が生産され続けており,この点はクモ相撲行事の意義として指摘できる.

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