高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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27 巻, 1 号
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第30回総会 会長講演
  • 田川 皓一
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
      失語症者における画像診断の目的は,基礎疾患を診断し,責任病巣や発現機序を明確にして病態の理解や予後の推定に役立てることにある。脳梗塞による失語症者を対象として,前頭葉損傷と失語症,伝導性失語の責任病巣,ならびに境界型梗塞と失語症について検討を加えた。左の前頭葉損傷では種々の失語症が出現する。純粋語唖の責任病巣は中心前回であり,ブローカ領野に限局した病巣では超皮質性感覚性失語を呈する。この両領域が障害され運動性失語となる。ブローカ領野の周辺領域や前頭葉内側部の障害では超皮質性運動性失語が出現する。伝導性失語症の典型例では左の縁上回を中心とする領域に病巣が存在した。なお,このタイプの失語症は中心後回の病巣でも出現しうる。表層型の境界域梗塞では超皮質性失語が出現しうる。また,主幹動脈の閉塞による深部型の境界域梗塞では重度の失語症を呈すことがあり,この場合大脳半球にも重度の脳血流代謝の障害をみる。
原著
  • 井上 知子, 井堀 奈美, 荒木 重夫, 佐鹿 博信, 河村 満
    2007 年 27 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
      右被殻出血後に発話の反復現象と,助詞,文末,語尾の省略を呈した50 歳代,右利き女性を報告した。本症例は,語の反復と音節の反復が同程度に認められたため,同語反復症と症候性吃音の両者を合併していると考えた。モーラ指折り法を用いた発話訓練を行ったところ,同語反復症および省略現象は軽減したが,症候性吃音は一時的な軽減にとどまった。
      本症例の発話の反復現象は,前頭葉を含む右半球の広範な血流低下により,発話運動の抑制機能不全が生じたことや,左右半球間の発話運動に関する協調が崩れたことに起因する可能性が考えられる。また,本症例の示した省略現象には,注意やpacing の著明な障害が関与している可能性が推察された。さらに,発話障害に関する無関心さが,本症例における発話の反復現象や省略現象を助長させている可能性が示唆された。
短報
  • 高橋 真知子, 林部 英雄, 吐師 道子
    2007 年 27 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
      「文構成テスト」は自然な会話場面での話し言葉の特徴を備えた自発話を被検者から引き出し,量的質的に評価することをねらいとして開発された。本検査では,意味的関連度を考慮して組み合わせた 2 つの語を文字で提示し,発話を引き出す刺激 (33 組 66 語,いずれも高親密度語) としている。施行法は簡単で,これらの対の語を使って自由に文を作り,話すよう被検者に求めるのである。今回は健常者120 名に施行し,本検査の妥当性を検証した。また,健常群の反応をもとに,談話文法的特徴の強い日本語 (中島1987) を評価し採点する際の基準の明確化を図った。
      結果,健常群の得点分布(平均 30.4 点,SD = 1.5) は正規分布の左側部分に近似した。産生された文には各被検者の個性を反映した多彩な語彙や文型が用いられていた。自発話の採点基準の明確化は,「文脈から意味が推測でき」かつ「一定数の健常者でみられる」省略·不定表現を正答に加えることで可能だった。
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