高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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33 巻, 4 号
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原著
  • 渡邊 淳子, 緒方 利安, 濵田 緒美, 井上 亨, 塩田 悦仁
    2013 年 33 巻 4 号 p. 388-394
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2015/01/05
    ジャーナル フリー
    頚動脈狭窄症に対する血行再建術のひとつである頚動脈内膜剥離術 (CEA) を施行される頚動脈狭窄症例に対し, 手術前と術後 7 日にMontreal Cognitive Assessment(MoCA) とMini-Mental State Examination(MMSE) を実施し, 術前後の違いについて項目ごと, 手術側ごとに検討した。対象はADL が自立している, 失語, 失行, 失認を認めない 22 例であった。結果, 術後20 例で認知機能を評価し得, MMSE では術前後に有意な変化がなかったが, MoCA では有意な点数の向上を認めた。下位項目の検討では MoCA の遅延再生が有意に改善していた。左側に手術を施行された群で MoCA の総得点に有意な改善があり, 下位項目の検討では視空間・実行系と遅延再生が有意に改善していた。MoCA は, CEA 前後の軽微な高次脳機能の変化を捉えうる可能性があり, 特に CEA 手術側が左側の症例では, 遂行機能や言語記憶といった高次脳機能が改善する可能性があると考えられた。
  • 森岡 悦子, 金井 孝典, 高橋 秀典
    2013 年 33 巻 4 号 p. 395-404
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2015/01/05
    ジャーナル フリー
    純粋失読例の経時的な症状分析から改善経路を検討した。症例は, 35 歳の右利き女性で, 左側頭後頭葉内側面の紡錘状回, 舌状回, および脳梁膨大部に損傷を認めた。入院当初, 自分の書いた文字も暫く後にはまったく読めず, 漢字と仮名に重篤な純粋失読の症状を呈した。言語治療開始から6 ヵ月後には, なぞり読みにより, 仮名1 文字, 仮名単語, 少画数の漢字1 文字の音読と読解が可能となった。開始から 15 ヵ月後には, 運動覚を用いずに, 心像性の高い漢字の1 文字や漢字2 文字単語の読解が可能となったが, 音読は困難であった。症状の経過から, 最初に運動覚性記憶を利用する音韻系経路が改善し, 次に漢字の心像性を手がかりとする視覚性の意味系経路が改善したことが示され, 本例の純粋失読の改善には, 異なる2 種類の経路が関わったと考えられた。また心像性を手がかりとする意味系経路は, 右半球の潜在的な読字能力が関与した可能性が示唆された。
  • 丸山 純人, 室井 健三, 飯沼 一浩
    2013 年 33 巻 4 号 p. 405-413
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2015/01/05
    ジャーナル フリー
    fMRI による言語優位半球同定法として単語生成課題を心内発話で行う方法があるが, 心内発話では課題遂行中の被検者の情報が得られず, また, 運動前野の賦活が認められるため, 側性指標 (LI) の算出に影響を与える可能性がある。本研究では task として語想起発話, control として無意味語発話を行う新しい fMRI 撮像法を考案し, 課題遂行中の被検者の情報を得つつ, 運動野の賦活を画像上相殺し, LI を算出できるか検討した。本手法では従来の心内発話法に比べ賦活範囲は狭くなったが, ブローカ野, および補足運動野に賦活が認められ, 運動前野や一次運動野の賦活は賦活マップ上では認められなかった。また心内発話法で算出した LI と有意な差はなかった。本手法を用いれば fMRI 撮像中の被検者の課題遂行の情報を把握することができるため, より信頼性の高い言語優位半球同定法として利用できる見通しが得られた。
  • 津田 哲也, 吉畑 博代, 平山 孝子 , 藤本 憲正, 中村 光
    2013 年 33 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2015/01/05
    ジャーナル フリー
    提示する項目間の質的に異なる意味的関連性が聴覚的理解課題に及ぼす影響について検証した。対象は35 名の失語症者と統制群としての健常者10 名で, 目標項目と同時提示する5 つの選択肢について, 目標語に対しての「状況関連性」と「カテゴリー関連性」の2 種の意味的関連性を操作した「音声単語と絵のマッチング課題」を作成し実施した。課題は全27 問で, 各問の選択肢は目標項目に対し, 状況およびカテゴリー関連性のある1 項目, 状況またはカテゴリー関連性のある各1 項目, いずれの関連性もない 2 項目から成る。結果, 失語群は統制群より有意に成績が低かった。エラーの分析では, 軽度失語群では状況関連性のあるエラーのみがみられ, 中等度失語群ではカテゴリー関連性だけのエラーも出現し, 重度失語群では状況・カテゴリーとも関連のないエラーが出現した。失語症者の理解課題の成績には, カテゴリー関連性だけでなく, 状況関連性も影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 李 多晛, 澤田 陽一, 中村 光, 徳地 亮, 藤本 憲正
    2013 年 33 巻 4 号 p. 421-427
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2015/01/05
    ジャーナル フリー
    普通名詞,固有名詞,動詞の3 種の言語流暢性課題を若年群と高齢群に実施し,品詞と加齢の影響を調べた。対象は健常の若年者(18 歳~ 23 歳)と高齢者(65 歳~ 79 歳),それぞれ35 名である。被検者には,60 秒間に以下の範疇に属する単語をできるだけ多く表出するよう求めた。(1)普通名詞:「動物」「野菜」,(2)固有名詞:「会社の名前」「有名人の名前」,(3)動詞:「人がすること」。その結果,高齢群は若年群に比べて,正反応数が有意に少なく,誤反応数が有意に多かった。動詞は普通名詞に比べて,正反応数が有意に少なかった。また,普通名詞,固有名詞に比べ動詞では,加齢による正反応数の減少と誤反応数の増加が有意であった。動詞において加齢による成績低下が強くみられたのは,高齢者における遂行機能の低下を反映したものだと考えた。
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