目的:介護保険軽度認定者におけるサービス未利用者の認定申請状況やサービス利用意向を明らかにする.方法:対象は,A市B地区に居住する65歳以上の高齢者で,要支援1・要支援2・要介護1と認定されている者のうち,介護保険サービスを利用していないすべての者125名とした.データは,A市保健福祉部保健福祉課が保有する介護保険情報によって,対象者の性別や年齢等の属性,認定申請回数等を確認し,保健師が通常業務として実施する対象者への電話の際に,世帯構成等の属性,サービス利用意思,家族や病院職員からの認定申請の勧め等を聞き取った.実施にあたり,所属組織および大学の研究倫理委員会の承認を得た.結果:対象者の介護保険認定申請の回数は,1回が18.9%,2〜3回が49.5%,4〜5回が20.7%,6回以上が10.8%であった.介護保険認定申請時のサービス利用の意向としては,「いずれ必要になったらサービスを利用したい」が70.3%であった.家族から介護保険認定申請を勧められた者は61.3%,病院職員から勧められた者は36.9%であった.家族からの認定申請の勧めと,要介護度や世帯構成等の属性,洗身・排尿・金銭管理等の介助,短期記憶,外出頻度の関連には有意差がみられた.病院職員からの勧めと,性別,年齢,関節疾患の関連には有意差がみられた.考察:いずれサービスが必要になったときのために,念のために介護保険認定申請を繰り返すのは,対象者や家族等が今後の対象者の身体機能低下に伴う介護に不安や危機意識を感じているためと推察される.対象者が早急にサービスを利用する必要性が生じた場合に向けて,サービスの暫定利用に関する周知も必要であると考えられる.
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