日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
13 巻, 2 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 丸谷 美紀, 大澤 真奈美, 雨宮 有子, 宮﨑 美砂子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 7-15
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:農村部における生活習慣病予防の保健指導場面で,地域の文化を考慮した個人への援助行為,および地域を含む援助行為を調査し,両者を通じて,健康を志向した地域の文化を育むことを意図した生活習慣病予防の保健指導方法を明らかにする.方法:農村部3町に勤務する保健師5名が行う生活習慣病予防の保健指導場面を参加観察し,成果のあった19事例について次のことを質的帰納的に分析した.(a)保健師が考慮した地域の文化の内容.(b)個人への援助行為と地域を含む援助行為を通じて行われた【健康を志向した地域の文化を育むことを意図した保健指導方法】.結果:地域の文化の内容は,変容していくもの,変容の少ないもの,新たに定着しつつあるものだった.【健康を志向した地域の文化を育むことを意図した保健指導方法】は,個人・地域の両側面から地域の文化を把握する,個人に対し地域の文化への思いを受け止めつつ生活習慣病の要因となる可能性に気づきを促す,地域の文化に抵抗の少ない方法や地域の文化を活用した方法の提案を個人・地域の両側面から行う,というものだった.考察:生活習慣病予防の保健指導において,保健師は次の方法で個人の健康を支援することにより健康を志向した地域の文化を育むことにつながる.変容の可能性と発祥に着目して地域の文化を捉え,生活習慣病予防に望ましい生活と地域の文化との矛盾に対する個人の葛藤を受けとめ,帰属感を保障し,安心感を支える.そのうえで,個人・地域の両側面から,変容の可能性に即した方法および地域の取り組みの活用を提案したり強化する.
  • 成田 香織, 田髙 悦子, 金川 克子, 宮下 陽江, 立浦 紀代子, 天津 栄子, 松平 裕佳, 臺 有桂, 河原 智江, 田口 理恵, ...
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 16-22
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:農村部における認知症予防に向けた介護予防事業への参加者と不参加者の特徴の相違を明らかにし,不参加者における適切な支援を含めた今後の介護予防のあり方を検討することである.方法:対象はA県在住の地域高齢者における認知症予防に向けた介護予防事業対象者(特定高齢者)94名(参加者47名,不参加者47名)である.方法は質問紙調査であり,基本属性,身体的特性(認知機能,生活機能),心理的特性(健康度自己評価),社会的特性(ソーシャルサポート)等を検討した.結果:参加群は平均年齢79.5(SD=5.8)歳,不参加群は82.0(SD=6.2)歳であり,基本属性に有意な差はみられなかった.不参加群は参加群に比して,認知機能の低い者の割合が有意に高く(p=0.03),手段的自立(p=0.02),知的能動性(p<0.001),社会的役割(p=0.07)が有意に低いもしくは低い傾向があった.また不参加群は参加群に比して,手段的サポートが低く(p=0.09),サポートが乏しい傾向があった.なお参加群の事業参加の動機は,孤独感の緩和や人とのつながりが最も多く,次いで,物忘れの重大さの自覚や将来の認知症への懸念などとなっていた.結論:農村部の認知症予防に向けた介護予防事業不参加者は参加者に比較して,生活習慣や対人交流の脆弱性があり,今後は,高齢者一人ひとりの特性やニーズに応じた参加への意欲や動機づけの支援が必要である.
  • 竹生 礼子, 工藤 禎子, 若山 好美, 桑原 ゆみ, 明野 聖子, 佐藤 美由紀, 川添 恵理子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 23-30
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:認知症に関する啓発と地域づくりを担う北海道の認知症キャラバンメイトの活動状況と意識について,市町村の人口規模別に明らかにすることを目的とした.方法:対象者は国の認知症100万人キャラバン事業の研修を受講した北海道内の全登録者1,996人である.自記式無記名の調査票を郵送で配布回収した.調査項目は,基本属性,活動市町村の認知症ケア体制の認識(地域ケア会議,キャラバンメイト組織の有無等),活動状況,活動の意識(満足感・負担感・自己評価・活動継続意向)である.分析は人口を1万人未満,1〜5万人未満,5〜10万人未満,10〜30万未満,30万人以上の5区分にし,区分別に各変数のクロス集計とχ2検定およびデータ特性に合った各分析を行った.結果と考察:有効回答は901人であり,ケアマネジャー39.6%,保健師11.2%であった.キャラバンメイトとしての活動ありが64.7%,啓発のための講師経験ありは39.2%であった.最も活動経験ありの割合が多かったのは5〜10万人であった.「学ぶことが多い」「活動を継続したい」など活動継続に肯定的な意向が多く,これらには人口規模の差はみられなかった.人口規模別にみると,1万人未満は活動負担感ありが多く,5〜10万人は活動満足感が高く,30万人以上は活動の自己評価が低かった.キャラバンメイトの活動継続意向の高さを活かすためには,人口規模に即したキャラバンメイトの組織化や行政からの支援の必要性が示唆された.
  • 平澤 則子, 飯吉 令枝, 鳩野 洋子, 小林 恵子, 齋藤 智子, 野口 裕子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 31-37
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,山間豪雪地域に暮らす高齢者のIADLについて3年後に追跡調査を実施し,IADLの変化とそれに影響する日常的生活行動について検討することを目的とした.対象は,A市B地区在住の要介護度II以上を除く65歳以上の一人暮らしおよび高齢者のみ世帯の対象者のうち,2003年冬季に行われた初回調査で5項目の手段的日常生活動作(IADL)がすべて自立していた90人である.追跡調査は3年後の2006年冬季に質問紙による面接調査で行った.その結果,追跡調査時点でIADLの全項目が自立していた者は,男性の80.8%,女性の76.6%にみられた.男性では「電球交換」「除雪する」「災害への備え」,女性では「食料品の買い物」「洗濯をする」「掃除をする」「入浴する」「布団に関すること」「ごみを捨てる」という日常的生活行動を実施している者で有意に多かった.日常的生活行動に着目することにより,要支援・要介護状態に移行する可能性のある高齢者を早期に把握することができると考える.
  • 頭川 典子, 安田 貴恵子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 38-45
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:育児に悩む母親を対象としたグループ活動について,参加した母親の経験や母親が実感している変化を明らかにすることを目的とした.方法:グループに参加した母親3名に対して半構成的面接法にて「グループへの参加動機」「グループ参加中の経験」「グループ参加後に振り返って実感している自分の変化」などを尋ねた.結果:3人の母親たちは当初「教科書どおりに育てる」などの理想をもって育児をしていた.そして,思いどおりにならないときに子どもに怒りを感じたり,叩いたりしていた.そのことに悩んでいたことがグループへの参加動機であった.母親はメンバーや保健師への信頼関係ができ,安心感が高まるに連れて悩みを話せるようになっていた.そして安心した場で悩みを話すことで気持ちが軽くなる経験をしていた.母親は,理想を追うのではなくありのままの自分を受け入れていけばよいと実感するだけでなく,子どもへの怒りが自制できるようになるという養育態度の変化も感じていた.結論:母親はグループという安全な場に身を置いて育児の悩みを話すことで,育児における気持ちの苦しさを解消していた.また,母親が自分自身を認められるようになるという変化があった.グループを通じて母親の育児への自信を育む支援を行うことが,母親の力を引き出す一助となると考えられた.
  • 土井 有羽子, 上野 昌江, 和泉 京子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 46-53
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域女性高齢者の自宅の住環境をふまえた転倒の実態を明らかにし転倒予防の支援について検討することを目的とした.方法:対象者は老人教養講座を受講している65歳以上の女性207名である.調査方法は各講座開催日に,無記名自記式調査を実施した.調査項目は,基本属性,転倒の状況,自宅の環境,からだの調子,日常生活の動作で構成した.結果:過去1年間の転倒経験者は49名(23.7%)であった.自宅内転倒者は14名(28.5%)で平均年齢は75.9±5.7歳と,転倒群全体の平均年齢より高かった.自宅内転倒者は同居者のいる者が多いこと,骨粗鬆症者が多いこと,受診の必要な負傷が多いこと,特に80歳代の2名(10.0%)は骨折にまで至っていたなどの特徴がみられた.自宅の段差と床面については,「門,玄関口に段差がありつまずきそうになる」「上がり框の高さが高くバランスをくずす」「マット,じゅうたん,台所マットがずれたりしてつまずきやすい」「床に電気のコードが広がっている」などの9項目で転倒群が非転倒群に比べありの者の占める割合が有意に多かった.住宅環境要因で転倒した者は自宅内転倒者の50.0%を占めていた.結論:自宅の段差等が転倒と関連していること,自宅内転倒は後期高齢者に多いことが示され,運動だけでなく自宅の住環境の改善内容をもりこんだ介護予防事業を考えていく必要性が示唆された.特に,後期高齢者の転倒予防を考えていくにあたっては自宅の住環境の改善が必要である.
  • 篠岡 有雅, 大西 美智恵
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 54-60
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:糖尿病予備群の地域住民が,生活習慣改善に向けてとる健康行動の変容プロセスを明らかにすることを目的とした.方法:健康教室に継続して参加している糖尿病予備群10名を対象に,半構成的面接でデータを収集し,木下の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.結果:糖尿病予備群の地域住民が,自分なりの健康行動をとる生活を確立していくプロセスを分析テーマとし,30の概念から『自分の体に無関心』『参加のきっかけ』『気づく機会を得る』『絶え間なく意識を保つ』『緩やかな試行錯誤の行動』『奮起の源』『周囲からの刺激』『コツの感覚を掴む』という8つのカテゴリーが生成された.プロセスでは,『気づく機会を得る』『絶え間なく意識を保つ』『緩やかな試行錯誤の行動』という3つの主要な要素があり,『気づく機会を得る』ことが最も重要な要素であった.気づき,意識し,行動するという3つの要素でサイクルが形成され,気づきが積み重なることでサイクルは循環していた.そして自分なりの『コツの感覚を掴む』ことで行動の変容ができ,その行動が継続されていくことが明らかになった.考察:気づくことはプロセスにおいて重要で,特に参加者同士の対話を用いることは有効であった.またその対話とセルフモニタリングによる定期的な気づく機会は,行動を見直し,継続のサイクル形成での起動の役割をもっていたと考えた.
  • 若杉 里実, 安田 貴恵子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    母子保健事業での新任保健師と住民との関わりに着目し,新任保健師1年目の体験を明らかにすることを目的とする.行政機関に就職し1年が経過した保健師9名を対象とし,半構成的面接によるインタビュー調査を行った.新任保健師1年目の体験は,9つのカテゴリに分類された.新任保健師は,母子保健事業に携わり,【責任の大きさと自分の未熟さへの直面】を体験する.同時に,健診での母親との関わりから,【母親に的確なアドバイスを返せないもどかしさを実感】する.そして,新任保健師は【母親との対話を通して自分が身につけるべき知識や技術に気づく】【母親の思いに寄り添うことへの専心】【援助者としての未熟さを補う努力】という行動を起こす.この努力と行動の積み重ねから,【母親やグループの特徴の判断に基づく柔軟な対応】ができるようになる.さらに,【母子保健事業を通しての視野の広がり】も見受けられる.1年目の終わり頃には【母親の援助ニーズに合わせた関わりができていることを実感】して,【住民とこれからも関われそうな手応え】を感じるようになっていた.
  • 西嶋 真理子, 大野 美賀子, 矢野 知恵, 井出 彩子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:1歳7カ月児の主養育者の育児やパートナーとの協力の状況から家族支援に関するアセスメントの手がかりを得ることである.方法:A市における1歳6カ月児健診対象者の主養育者743名を対象に無記名の自記式質問紙を郵送し,そのうち241名を分析対象者とした.出生順位別に自身の健康管理状況,パートナーとの協力状況,養育態度における潜在的虐待リスクを分析し,比較検定にはχ2検定,Kruskal Wallis検定を用いた.結果:出生順位別にパートナーとの協力状況,養育態度における潜在的虐待リスクに有意差がみられた.第1子はパートナーとの協力関係が高く,出生順位が下がるほどパートナーとの関係が良好な層と保ちにくい層に分かれる傾向がみられた.養育態度は,第1子は「力に頼らない育児態度」と「自己肯定感を育む養育態度」において有意にリスクが低く,第3子以降は,「自己抑制を教える養育態度」のリスクが低い傾向がみられた.パートナーとの関係と「自己肯定感を育む養育態度」には正の相関がみられた.結論:良好な養育態度維持に向けて,第1子の時期から肯定的な養育態度を認めながら,パートナーとの関係も視野に入れて,養育者自身の健康支援や子どもの成長に応じた家族支援の必要性が示唆された.
  • 杉田 由加里
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域の住民ニーズに対する効果的な支援システムを構築・発展させる上で有用な行政保健師の能力・行動特性としてのコンピテンシー・モデルを開発することである.コンピテンシーはMcClellandおよびスペンサーの定義に基づき,知識・スキルといった表面的なコンピテンシーと,特性・自己イメージ・動因といった深層的なコンピテンシーから構成されるものとする.方法・結果:コンピテンシー・モデル試案の作成(研究1)とその試案の活用の有用性の検証(研究2)から構成した.研究1:支援システムを構築・発展させた経験をもつ保健師5名を対象に,有効であった出来事について半構成的面接を実施し,成果につながる能力・行動特性に関して質的帰納的に分析した.その結果,支援システムの構築・発展には5つの段階があり,それらは準備とニーズの気づき,現状分析,方略の考案,実行,評価と修正から構成されていた.各段階の表面的あるいは深層的コンピテンシーとそれらの関係に基づきコンピテンシー・モデル試案を作成した.研究2:支援システムを構築中である保健師3名へ本試案を提示し半構成的面接を実施した,その結果,自身の考え方が活性化し,考え方や行動の有効性を確認でき,自身の課題を設定することができ,本モデルの有用性を検証できた.考察:本モデルは,知識・スキルの発揮には,具体化されていく特性・自己イメージが関連し,動因が次の段階を押し進めながら発展するといった特徴を有していた.
  • 高嶋 伸子, 星 旦二, 中山 照美, 今井 直子, 佐々木 純子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健計画策定・推進に参画した住民の主体性形成過程を参画住民の認識から実証的に明らかにする.方法:A町の保健計画策定・推進に参画した住民6名を対象に半構造化面接を実施し,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:保健計画策定・推進に参画した住民の主体性形成過程は『組織代表の立場重視で参加』『本質的語り合いによりグループ形成され主体性萌芽』『所属組織での推進で試される主体性』『策定・推進できた自信で主体的前進』の4段階で描かれた.結論:保健計画策定・推進に参画した住民の主体性形成の初段階は組織の代表者の群れであるが,会議で忌憚のない討議や哲学的思考によりグループが形成され主体性が芽生えた.さらに住民の主体性は保健計画の推進の段階で,真の主体性が試される.真の主体性は会議における哲学的思考により形成されることが窺われた.
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    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:介護保険軽度認定者におけるサービス未利用者の認定申請状況やサービス利用意向を明らかにする.方法:対象は,A市B地区に居住する65歳以上の高齢者で,要支援1・要支援2・要介護1と認定されている者のうち,介護保険サービスを利用していないすべての者125名とした.データは,A市保健福祉部保健福祉課が保有する介護保険情報によって,対象者の性別や年齢等の属性,認定申請回数等を確認し,保健師が通常業務として実施する対象者への電話の際に,世帯構成等の属性,サービス利用意思,家族や病院職員からの認定申請の勧め等を聞き取った.実施にあたり,所属組織および大学の研究倫理委員会の承認を得た.結果:対象者の介護保険認定申請の回数は,1回が18.9%,2〜3回が49.5%,4〜5回が20.7%,6回以上が10.8%であった.介護保険認定申請時のサービス利用の意向としては,「いずれ必要になったらサービスを利用したい」が70.3%であった.家族から介護保険認定申請を勧められた者は61.3%,病院職員から勧められた者は36.9%であった.家族からの認定申請の勧めと,要介護度や世帯構成等の属性,洗身・排尿・金銭管理等の介助,短期記憶,外出頻度の関連には有意差がみられた.病院職員からの勧めと,性別,年齢,関節疾患の関連には有意差がみられた.考察:いずれサービスが必要になったときのために,念のために介護保険認定申請を繰り返すのは,対象者や家族等が今後の対象者の身体機能低下に伴う介護に不安や危機意識を感じているためと推察される.対象者が早急にサービスを利用する必要性が生じた場合に向けて,サービスの暫定利用に関する周知も必要であると考えられる.
  • 尾﨑 伊都子, 小西 美智子, 片倉 和子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:個別面談とメールによる保健指導後に応援メールを定期的に送付して1年後の効果を把握し,行動変容の定着を支援するフォローアップのあり方を検討した.方法:研究対象はA企業B病院で人間ドックを受けた40〜59歳の男性勤労者11名で,「食事・運動・睡眠・節酒コース」「禁煙コース」の保健指導を行った.応援メールは2〜3カ月ごとに送付し,1年後の生活習慣病に関わる検査データの変化,禁煙継続状況と応援メールに対する返信内容からフォローアップのあり方を検討した.結果・考察:「食事・運動・睡眠・節酒コース」者の8名のうち7名が開始時の異常値をひとつ以上,改善し維持するか1年後までに改善することができていた.しかし,そのうちの5名は改善がある一方で,新たに異常値になったり逆戻りした検査データも混在していた.さらに成果を推進するためには,改善した好ましい生活習慣を維持できるよう支援する必要がある.また,行動変容を継続できない要因として,職場での宴席の増加,多忙,転勤などの環境の変化があった.長期的に健康習慣を維持できるよう支援するためには,個別的なフォローとともに,職場と連携し協働の生活習慣改善にむけた職場単位の健康教育も積極的に行っていく必要がある.「禁煙コース」者では禁煙継続だけでなく体重増加が長く課題になっており,食事や運動を含めて健康をトータルに支援していくことが必要と考えられる.
  • 坪内 美奈, 松下 光子, 山田 洋子, 宮島 ひとみ, 森 仁実, 大川 眞智子, 岩村 龍子, 大井 靖子, 北山 三津子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:一町の保健師の実践上の課題に対して,大学教員が保健師と課題解決に向けて取り組む協働のプロセスにおいて,協働関係を形成するうえでの要素を明らかにし,協働するための方法を追究する.方法:教員と保健師との協働活動の事象を記述し,データとする.協働の関係が発展した段階ごとに,データから,教員が保健師と協働関係を構築することにつながったと解釈した要素を,協働関係を形成するうえでキーとなる要素として記述し,内容分析する.結果:保健師と協働関係を形成するうえでキーとなる8つの要素が明らかになった.【取り組みに対する認識を教員と保健師間で共通認識とすること】【保健師が取り組む活動が住民ニーズに即した活動か検討すること】【それぞれの立場で助力の意思をもって,具体的に協働活動の計画を立案し,実行にうつすこと】【互いの立場で主体的に責任を果たそうとすること】【協働した取り組みや保健師の活動の目標・結果をふり返り,活動計画を修正すること】【互いに利点があること】【保健師が行う援助の意味や保健師の存在価値を認識し,互いに共有すること】【保健師の学習の機会として組織的に取り組めるようにすること】.結論:教員が保健師と協働関係を形成するうえでの要素が明らかになったが,保健師と教員(研究者)との多様な協働の方法において,このキーとなる要素をもってすればうまく協働関係を形成することができるかは,今後も検証が必要である.
  • 畷 素代
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師が育成支援にあたっている思春期ピアサポーターの成長過程の特徴および育成支援者の役割を明らかにする.方法:ピアサポーター養成セミナーを修了した19〜20歳のピアサポーター12名を対象に,ピアサポート活動の経験前後において自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,一般性自己効力感(GSE)尺度16項目,自尊感情(SE)尺度10項目について評定を求めた.分析は,GSE・SE尺度を変数とした項目のクラスタ分析を行い,各クラスタ得点を経験前後で比較した.また,対象者を変数としたクラスタ分析を行い,類似した者同士をグループに分類した,さらに活動記録から,低得点群に属した2名のピアサポーターと育成支援者の対話を抽出し,理想とするピアサポーター像という観点から,各自の発言内容を時系列に整理した.結果:GSE・SE尺度の評定結果から【有能感】【自己期待】【自己肯定】【自己標準化】の4クラスタが抽出され,【自己期待】【自己肯定】において,経験前後でクラスタ得点に有意な差がみられた(p<0.01).また,対象者のクラスタ分析では,高得点群5名,中間群5名,低得点群2名の3グループに分類でき,経験前の【有能感】【自己期待】【自己標準化】において,グループ間に有意な差がみられた(p<0.01).さらに,理想とするピアサポーター像は,低得点群2名と育成支援者にはズレがあり,育成支援者は実践活動を通じて,2名のピアサポーターの理想像に変化をもたらしていた.考察:ピアサポーターの育成から活動支援まで一貫して関わる保健師は,住民との意識のズレを微調整しながら活動を発展させていく住民組織活動のノウハウを,思春期保健領域のピアサポートという活動においても応用できていると推察された.
  • 芳我 ちより, 相原 正男, 山崎 洋子
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:幼児期からの肥満予防は世界的な健康課題となっている.わが国における小児肥満予防の研究の中心は,学童期・思春期であるが,小児期の肥満は幼児期に始まり,学童期の肥満へ高率に移行する.これは,幼児期から肥満予防に向けた取り組みの必要性を示す.本研究はわが国における研究成果を概観することにより,幼児期における肥満予防のための研究課題を得ることを目的とした.方法:研究対象は,「幼児」「肥満」「予防」を検索語として検索データベースより検出された,わが国の研究論文とした.これを分析フォームに基づきデータ化し,項目化した分析の視点に沿って整理した.結果:最近10年間に,幼児期の肥満を対象とした研究論文は少数であった.また,幼児期の肥満のスクリーニング方法,診断基準は多様であった.さらに,研究の場の多くは市町村や保健所であったが,保健師による研究は少数であった.加えて,幼児期の肥満のリスク要因は,生活習慣(食事,運動,睡眠)と親の認識,遺伝であったが,その半数は横断研究であり,因果関係の不明な要因もあった.考察:研究課題として,(1)幼児期における肥満の判定方法・基準を統一した研究成果の蓄積が必要であること,(2)幼児期に着目した肥満予防に向けた介入時期・場を検討するための研究が必要であること,(3)これまでに国内外で明らかにされてきた小児期の肥満のリスク要因に着目し,幼児期の肥満との因果関係を明らかにするために,縦断研究あるいは介入研究が必要であることが示唆された.
  • 村山 洋史
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域包括支援センターの主要な業務の1つであるインフォーマル組織とのネットワーク構築業務に焦点を当て,バーンアウトへの関連要因を検討することとした. 方法:東京都S区の地域包括支援センターに所属する職員88名を対象にし,2009年5月に無記名自記式の質問紙調査を実施した.調査項目は,性別,年齢,職務満足感を含む個人要因,1週間の平均就業時間,ソーシャルサポート,インフォーマル組織とのネットワーク構築業務に関する項目を含む環境要因,およびバーンアウトであった.結果:有効回答は84票(有効回答率95.5%)であった.本対象者内で相対的に高程度なバーンアウト症状を2つ以上もつ者は,全体の約5分の1であった.バーンアウトの各症状を従属変数とした重回帰分析の結果,職務満足感が低いほど,1週間の平均就業時間が長いほど,インフォーマル組織とのネットワーク構築業務に対する難しさを感じているほど,情緒的消耗感得点が高かった.また,職務満足感が低いほど,上司からのサポート得点が低いほど,インフォーマル組織とのネットワーク構築業務に対する難しさを感じているほど,脱人格化得点が高かった.さらに,常勤であるほど,職務満足感が低いほど,インフォーマル組織とのネットワーク構築業務に対するやりがいを感じていないほど,個人的達成感得点が低かった.結論:本研究の知見から,地域包括支援センター職員のインフォーマル組織とのネットワーク構築業務に対する認識に働きかけることはバーンアウト予防の糸口になりうることが示された.
  • 瀧上 恵子, 田髙 悦子, 臺 有桂, 河原 智江, 田口 理恵, 糸井 和佳
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:認知症を有する人ならびに家族が退院時に抱くニーズを把握するとともに,それら退院時ニーズと退院支援専門部署の支援の有無における関連を明らかにすることである.方法:関東圏にある地域医療支援病院を2005年から2009年に退院した退院時年齢40歳以上で,かつ認知症の診断を有する者の全数を対象にカルテを用いて調査票に基づきデータセットを作成した.次いでデータセットからコードを抽出し,その内容より退院時ニーズを集約し,退院支援専門部署の支援の有無における関連を分析した.結果:退院時ニーズは「サービス・制度」「療養場所の見通し」「生活環境」「服薬」「食事・栄養」「介護負担感」「認知障害」「医療処置」「経済的負担」「移動」「排泄」「安全・安楽」「全般的不安」「行動心理徴候」「かかりつけ医」「身体症状」「清潔」「手段的日常生活行為」「コミュニケーション」「生活リズム」「緊急対応」「就労」の22項目に集約された.なお,退院時ニーズと退院支援専門部署の関連では"支援あり群"は"支援なし群"に比して「サービス・制度」「療養場所の見通し」「行動心理徴候」のニーズを有する者の割合が有意に多く,「排泄」の二ーズも多い傾向にあった.考察:今後は認知症を有する人と家族の退院時ニーズの特性を踏まえた,その人らしい生活を営むための地域社会における円滑な退院計画のシステムづくりが必要である.
  • 越智 若菜, 田髙 悦子, 臺 有桂, 河原 智江, 田口 理恵, 糸井 和佳
    原稿種別: 本文
    2011 年 13 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:中年期の家族介護者における仕事と介護の両立に関する課題を明らかにし,今後の家族介護者やその家族,被介護者らに対する支援のあり方を検討することである.方法:対象は,訪問看護ステーション(居宅介護支援事業所兼)に所属する,本研究課題に熟練した経験を有する訪問看護師5名である.方法は,インタビューガイドを用いた半構成的面接法による質的帰納的研究であり,インタビュー内容はすべて逐語録とし,質的帰納的に分析した.本研究は横浜市立大学倫理審査委員会による承認を受けて実施した.結果:研究対象者は平均訪問看護経験年数9.5±12.7年,平均看護師経験年数14.4±12.5歳であった.中年期家族介護者の介護と仕事の両立については,両立に弱みとなるテーマ【仕事と介護と家事により自分のための生活がない】【仕事でも介護でも自分の代わりになる人がいない】【仕事,介護,家族における多重の役割を担っている】【介護と仕事の両立に家族や親戚の理解や支援が得られない】【仕事中にも被介護者に関する緊張や不安がある】【仕事のため十分な介護ができない不全感がある】【介護と仕事で自分の健康管理が後まわしになる】【職場に対する気遣いや負い目がある】ならびに,強みとなるテーマ【仕事をすることで気分転換を図り,社会との接点をもつ】【介護と仕事の両立によりやりがいや自信を見出す】【介護の経験や被介護者から生き方を学ぶことができる】【家族が介護をきっかけに凝集性を強くする】が抽出された.結論:今後の地域における中年期の就労する家族介護者への支援のあり方は,家族介護者が望む限りその両立の観点から,その強みと弱みに着目していくことが重要である.
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