視覚的イメージを想起している時には, 外部刺激の情報処理は視覚的イメージ想起という作業によって影響を受けると考えられる.本研究では, 音刺激によって誘発された事象関連電位 (ERP) の振幅を計測することにより, 視覚的イメージ想起が音刺激に対する注意の配分を減少させるかどうか検討することを目的とした.大学生・大学院生13名が実験に参加した.全被験者は3条件に参加し, 平均刺激間間隔6秒でランダムに呈示される音刺激 (1000Hz) に対してボタソ押しで反応するように教示された.視覚的イメージ条件では日常的な光景の視覚イメージ想起が要求された.呈示映像注意条件では, 呈示された映像に注視するように求められた.聴覚刺激注意条件では音にのみ注意することとした.音刺激に誘発されたERPは, Fz, Cz, Pz, Oz, T
5, T
6から記録された, P300成分のピーク振幅が3条件について分析された.視覚的イメージ条件の反応時間は他の2条件より長く, 呈示映像注意条件の反応時間は聴覚刺激注意条件より長かった.視覚的イメージ条件のP300成分の振幅は他の2条件よりも低かった.これらの結果は, 視覚的イメージ想起時には, 音刺激への注意配分が, 呈示映像に注意していたときや, 音刺激に注意していたときよりも減少していたことを示唆した.
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