生理心理学と精神生理学
Online ISSN : 2185-551X
Print ISSN : 0289-2405
ISSN-L : 0289-2405
17 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 宮島 ひろみ, 惠羅 修吉
    1999 年 17 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では, 受動的な聴覚オドボール・パラダイムにおける事象関連電位P3成分の出現に影響を及ぼす要因について検討するため, 2つの実験を実施した.両実験ともに2つの受動的条件 (無視条件と妨害条件) と能動的条件を設定し, それぞれの条件で出現したP3波形の比較を行った.実験1では3000Hz (低頻度刺激) と500Hz (高頻度刺激) のトーン・バーストを, 実験2では高頻度刺激をそのままにして低頻度刺激をクリック音とした.結果として, 実験2の無視条件において明瞭なP3波形の出現が認められた.このP3は, 能動的条件でのP3と類似した頭皮上分布と潜時を示した.実験1・2におけるその他の受動的条件では, P3振幅は顕著に減衰した.本研究の結果より, 低頻度刺激音と高頻度刺激音における何らかの質的差異が受動的なオドボール課題におけるP3の生成に寄与することが示唆された.最後に, 能動的な弁別課題の遂行に困難を有する被験者を対象とした場合における受動的P3の臨床適用について考察した.
  • 治部 哲也, 沖田 庸嵩, 八木 昭宏
    1999 年 17 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    1回目呈示と2回目呈示が同声 (男声-男声あるいは女声-女声) の場合と異声 (男声-女声あるいは女声-男声) の場合で聴覚事象関連脳電位における反復効果を比較した.被験者の課題は疑似単語検出であった.単語・疑似単語ともに同声・異声にかかわらず直後反復にN300が惹起された. N300の発達量は異声よりも同声で大きかった・また, 直後反復・遅延反復ともにN400を観察した.N400減衰に同声・異声の違いはなかった.これらN300とN400における2種類の反復効果は, それぞれ音響レベルと意味レベルにおける刺激の処理と関連づけて論議された.さらに, 疑似単語の直後反復でみられた右前頭部優勢の陰性電位は, アラートネスシステムの賦活を反映すると考えられる.
  • 中尾 美月, 宮谷 真人
    1999 年 17 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この実験では, 事象関連電位 (ERP) のN400における文脈効果と期待効果を分離して評価した.12名の大学生および大学院生を被験者とし, 標的検出課題を行わせた.被験者には, 継時呈示される単語系列の中から標的単語を検出することを求めた.標的は, 特定のプライム単語 (例えば「ニンジン」) の直後に呈示された特定の単語 (例えば「ヤキュウ」) であった.3条件のプローブ (プライムに続く単語), すなわち, プライムと意味的関連性があるプローブ, 期待された標的と意味的関連性があるプローブ, およびプライムや標的と非関連なプローブに対するERPを比較した.300-700ms潜時帯では, プライム関連プローブおよび標的関連プローブに対するERPは, 非関連プローブよりも陽性であった.これらの陽性シフトは, プライム関連プローブおよび標的関連プローブにおけるN400の減衰によるものと思われる.この結果は, N400が, 単語表象をワーキングメモリ内にある先行の文脈表象に統合する過程を反映していることを示唆している.
  • 澤田 幸展
    1999 年 17 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本評論においては, 先ず冒頭で,指尖容積脈波法とかかわるいくつかの基本的事柄が再検討された.ずなわち, 指における血管の構造およびαアドレナリン作動性交感神経活動, 記録法および外乱要因, そして, 伝統的測度 (すなわち, 血液容積および血液容積脈) とかかわるデータ処理法・についてである.第2に, 通常の生理的状態における指部位に対し, ランバート・ベールの法則を適用することの妥当性が確かめられ, 新たな測度である規準化脈波容積 (NPV) が, 伝統的な測度にまさるもっ一つのものとして, この法則から導出された.第3に, 主として血液容積脈に関する従来の知見が, 受動的対能動的対処課題実施時の自律神経調節機序が異なる点を考慮に入れながら, 再評価された.将来の研究において明らかにされるべき, いくつかの未解決な事柄が, 議論される.
feedback
Top