隠匿情報検査では,HRは項目提示後5 s以内に一時的に低下(初期低下)してから上昇し,再び大きく低下(後期低下)することが知られているが,初期低下による裁決項目と非裁決項目の識別性は,研究間で結果が一致していない。そこで,23名分の模擬窃盗課題時の心拍数データを,セット内で標準化したデータをそのまま利用する方法と項目提示前3秒間の平均値から項目提示後の値を引いて変化量を求める方法の2通りで処理し,項目提示後3 s以内と5 s以内の平均値,3 s以内の最低値,項目提示後3 sから7 s後までの最大値,項目提示後6 sから15 s間の平均値をそれぞれ求めた。解析結果を比較した結果,変化量を用いた解析を行えば,3 s以内の最低値以外は,いずれも裁決項目と非裁決項目を識別できることが分かった。ただし,これらの解析方法相互の識別力に有意差はなかった。考察では,初期低下の利用可能性と限界について論じた。