生理心理学と精神生理学
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40 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
評論
  • 福田 一彦
    2022 年 40 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    日本の心理学分野の睡眠研究における個々の研究者を概観し,さらに,心理学分野における睡眠研究の内容や手法の変遷について概観した。具体的には,PubMedとAPA PsycArticlesを対象としたキーワード検索の結果から,世界における睡眠研究の内容の変遷について明らかにするとともに,日本生理心理学会における睡眠研究の内容や手法の変遷について検討した。また,日本生理心理学会の会員数や発表数の変遷を概観し,今後,新しい会員を獲得することについてより積極的な方法をとる必要について議論した。また,これら過去の動向に基づき,今後の日本における心理学分野の睡眠研究の方向性についても議論した。

  • 福田 恭介
    2022 年 40 巻 1 号 p. 22-38
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

    本論文ではこれまで40年余りにわたるまばたき研究を振り返った。そこでは,3名の研究者が学会で集まり,そこからまばたき研究会を立ち上げ,「まばたきの心理学」という本を出版した。まばたき研究会では多くの研究者が,自らの研究を発表し,そこから多くのまばたき研究者が輩出されていった。まばたき研究には,まばたきの数量化が求められる。まばたき率,まばたき間間隔,まばたき潜時,まばたき時間分布の4つについて紹介した。最近では,まばたきとドーパミンとの関連について取り扱う研究が増えてきている。将来のまばたき研究についての方向性について議論された。

  • 宮内 哲
    2022 年 40 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/08/27
    ジャーナル フリー

    生理心理学における三つの発見,1) Steriadeによるslow oscillation, 2) Raichleによるdefault mode network, 3) Bergerによる脳波について解説した。そのどれもが最初はその信憑性に疑問を持たれたが,生理心理学分野でのパラダイム・シフトを引き起こした。

  • 坂田 省吾
    2022 年 40 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    本稿では,動物の生理心理学的研究のうち,著者が特に興味を持っている以下の4つのトピックについて概観する。1つ目は動物の時間研究,2つ目は脳と行動に関する脳内自己刺激の研究,3つ目は細胞のはたらきを光で制御する新しい技術である光遺伝学,4つ目は複数の動物の関係を扱う社会神経科学である。最後に,動物の生理心理学の今後の研究の方向性について雑感を述べる。

  • 小川 時洋, 髙橋 玲央, 常岡 充子, 渋谷 友祐
    2022 年 40 巻 1 号 p. 51-67
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

    過去10年間に,隠匿情報検 (Concealed information test, CIT) と呼ばれる情報検出技術について,幾つかの重要な進歩が見られた。本稿では,2010年以降に見られた自律系CITに関する概念的・理論的・技術的進展について概観する。CITの理論的説明については,従来の定位反応説を発展させたものとして反応分離アプローチが提唱された。CITの妥当性に関しては,伝統的な皮膚伝導度反応測度以外の複数指標について確証された。また,幾つかの研究は,生理的信号の測定・分析の改良に焦点を当てており,日本人研究者が重要な貢献をした。さらに,質問系列内の生理的変動に関する知見をまとめ,その理論的・実践的意義について論じた。最後に,CIT研究における現状の課題と今後の方向性について論じた。日本はCITの研究と実践において独自の地位を占めており,学術的交流の場としての日本生理心理学会はますます重要になると期待される。

  • 榊原 雅人
    2022 年 40 巻 1 号 p. 68-92
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/10/29
    ジャーナル フリー

    生理心理学や関連領域において心拍変動は自律神経活動を検討する目的でひろく利用されている。本稿は心拍変動の分析を用いた心理生理学的状態の評価と心拍変動の増大に関わる臨床的応用(心拍変動バイオフィードバック)について解説した。はじめに,心拍変動の高周波成分(呼吸性洞性不整脈)は統制された条件のもとで信頼性の高い迷走神経活動の指標となり,これを利用してさまざまな行動的課題(すなわち,ストレスやリラクセーション)に対する心理生理学的反応性を評価できることを示した。一方,迷走神経制御の特徴から呼吸性洞性不整脈は迷走神経活動の指標というよりはむしろ心肺系の休息機能を反映する内因性指標であると考えられ,これを利用して日常場面に関わる心理生理的状態を評価できることを示した。次に,心拍変動の増大に関わる臨床的応用の文脈から,心拍変動バイオフィードバック研究の起源,臨床的な有用性,作用機序について解説した。心臓血管系の調節に重要な役割を果たしている圧受容体反射には共鳴特性があり,共鳴周波数(おおむね0.1 Hz)の呼吸コントロールは著しい心拍変動を生み出す。このような共鳴のメカニズムを通して心拍変動バイオフィードバックは圧受容体反射に関わる自律系のホメオスタシス機能を高め,ストレス症状の緩和や情動制御の効果をもたらしている。総じて,心拍変動の分析は心理生理学的状態を評価する有用なツールとなり,心拍変動の増大は心身の健康やウェルビーイングにとって重要な要因であると考えられる。

  • 小野田 慶一
    2022 年 40 巻 1 号 p. 93-113
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/08/27
    ジャーナル フリー

    意識は長らく哲学や心理学において扱われてきたが,近年漸く神経科学の正当な研究対象として扱われるようになってきた。そこでは意識を科学的に扱うための実験的アプローチや情報理論に基づく数理的研究が進展してきた背景がある。本稿では神経科学における意識研究がどのように意識の問題に取り組んできたかを概観する。さらに意識と脳の複雑性の連関を踏まえた上で,統合情報理論に基づき意識の神経基盤を探求した自身の研究を紹介する

テクニカルノート
  • 長野 祐一郎, 櫻井 優太, 鈴木 里砂
    2022 年 40 巻 1 号 p. 114-124
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/03/11
    [早期公開] 公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー
    電子付録

    近年Arduino型マイクロコンピュータを用いた生理指標測定が普及しつつある。このテクニカルノートでは,精神生理学的研究においてメジャーな3つの指標,すなわち心電図,筋電図,皮膚コンダクタンスに関し,ブレッドボード上に回路を作成する方法を解説した。また,それらの指標について,Arduino開発環境でプログラムを作成し,測定する方法について解説した。発展的な事例として,Bluetooth通信やWi-Fi通信に対応したマイクロコンピュータを用いることで,測定を無線化する方法についても解説した。自作の回路を用いた生理指標測定は,測定システムを低価格化するだけでなく,指標に対する理解を深めることができる,実験計画を柔軟にするなどの様々なメリットがある。このような手法が,精神生理学的測定に新たな可能性をもたらすことが期待される。

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