生理心理学と精神生理学
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37 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 平本 亮介, 金山 範明, 宮谷 真人, 中尾 敬
    2019 年 37 巻 1 号 p. 4-16
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    [早期公開] 公開日: 2020/03/14
    ジャーナル フリー

    ヒトは身体に直接帰属しない道具を操り,様々な目的的行動を遂行する。身体そのものが最も「使いやすい」道具であると考えると,道具を身体そのものであるかのように設計することが道具の扱いやすさを向上させると考えられる。しかし,道具が身体そのもののように感じられるかを客観的に測定する方法は明らかではない。本研究では,身体外部の対象を自己身体の一部であるかのように誤認させる現象である,ラバーハンド錯覚を対象に身体表象の更新が生じる時間窓(0―50秒)に特異的な神経基盤について検証を行った。その結果,左頭頂領域におけるmu律動抑制が,身体表象の更新期間において観察されることが明らかとなった。これは,扱いやすい道具の設計について感性工学的アプローチを行う際に,mu律動を指標とした検証が行える可能性を示唆している。

  • 長野 祐一郎, 永田 悠人, 宮西 祐香子, 長濱 澄, 森田 裕介
    2019 年 37 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    [早期公開] 公開日: 2020/03/14
    ジャーナル フリー

    48人の大学生の皮膚コンダクタンスと主観評価を,従来型の講義,授業内実験,およびディスカッションを含む授業中に測定した。講義中は,皮膚コンダクタンスの概要を解説し,授業内実験では射的ゲームを行い,ディスカッションは,精神生理学的測定の社会的応用について行った。参加者の皮膚コンダクタンスは,講義が進むにつれて徐々に低下したが,ディスカッション中に著しく高くなった。授業に関する学生の主観的評価は,講義を除き概ね肯定的であった。学生の生理的反応と主観評価は,授業内実験でのみ相関し,講義とディスカッションでは失われた。自己の覚醒水準の認識が難しいため,相関が講義中に減少したと考えられた。また,対人状況によって生じる不安により,ディスカッション中の相関が弱められた可能性があった。教育環境において,精神生理学的活動の多人数測定を適用することの可能性と問題について議論を行った。

評論
  • 小川 時洋, 松田 いづみ, 常岡 充子
    2019 年 37 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    [早期公開] 公開日: 2020/03/14
    ジャーナル フリー

    ポリグラフ検査は,生理心理学の応用領域の一つである。「生理心理学の実社会応用」特集として,本稿では生理心理学の知見が,ポリグラフ検査をどのように支えているかを述べる。現在の日本のポリグラフ検査実務は,情報検出技術として隠匿情報検査(CIT)を用いており,世界でも独特の特徴を持っている。ポリグラフ検査は,応用を念頭においていない基礎的なものも含む生理心理学の諸知見に基づいている。一方,CITに関する応用志向の研究でもしばしば実務場面と関連性を持たないことがある。これらの例は,特定のパラダイムを越えた知見の一般化可能性と,技術が用いられる状況に関する知識の重要性を示す。最後に,日本の生理心理学に対する期待と課題についても論じる。

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