生理心理学と精神生理学
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28 巻, 3 号
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原著
  • 崎本 裕也, 服部 稔, 坂田 省吾
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 28 巻 3 号 p. 187-197
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    本研究では海馬θ波と非線形課題の関係を2 つの実験から検討した。実験1では非線形課題の一つである負パターン課題と線形課題の一つである単純弁別課題中の海馬θ波を記録した。実験2では正パターン課題と単純弁別課題中の海馬θ波を記録した。実験1と2の結果から,負パターン課題の複合刺激において海馬θパワが増加した。しかし,正パターン課題と単純弁別課題中にはこのような海馬θパワの増加は見られなかった。これらのことから,海馬θ波が負パターン課題の複合刺激に関係していることが明らかとなった。
  • 吉村 貴子, 苧阪 満里子, 前島 伸一郎, 大沢 愛子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 28 巻 3 号 p. 199-208
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    もの忘れをはじめ,言語,遂行機能, 問題解決などの様々な認知機能障害を呈する疾患のひとつに認知症がある(DSM-IV)。リーディングスパンテスト(RST, Daneman & Carpenter, 1980)はワーキングメモリ(Working Memory: WM)を測定する検査のひとつであり,前頭葉機能を反映すると考えられている。
    本研究はSPECTによる局所脳血流(regional cerebral blood flow (rCBF))をRSTの成績に基づいて分析することにより,RSTの成績差からみた,もの忘れを訴える患者の脳循環動態の相違や,RSTの認知症診断における有用性について考察することを目的とした。
    対象は,もの忘れを主訴として来院した在宅高齢者33 名であった。検査は,高齢者版RST(苧阪,2002),MMSE,SPECTを実施した。
    RSTの成績を高得点群と低得点群に分けて,領域別rCBF について統計分析を行った結果,RST高得点群と低得点群のrCBFの間に有意差を認める脳領域があった。しかし,MMSEの成績によりMMSE高得点群とMMSE低得点群に分けて各rCBFを分析すると,いずれの脳領域のrCBFにおいても有意差を認めなかった。さらに,認知症タイプ間にも各脳領域のrCBFに有意差を認めなった。
    以上より,RSTの成績差に影響を与えると考えられる脳領域や,RSTの臨床的意義について考察をした。
短報
  • 高村 真広, 宮谷 真人
    2010 年 28 巻 3 号 p. 209-218
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,視覚イメージ処理の妨害が具象語および抽象語が惹起する事象関連脳電位に及ぼす影響を調べ,単語処理における視覚イメージ処理の有無と時間経過を検討した。健常成人を対象に名詞の心像性を評定する課題を実施し,視覚ノイズを観察する群(6名)と灰色の静止画面を観察する統制群(6名)を設けて,音声単語が惹起する電位を検討した。結果,視察上で,具象語条件と抽象語条件の電位は前期と後期の時間窓で乖離し,具象語条件で抽象語条件よりも陰性にシフトする効果がみられた。前期の陰性シフト効果は統制群で有意であったが,視覚ノイズ観察群では有意な陰性シフトが生じなかった。この結果は,具象語と抽象語が惹起する脳電位の差は,視覚イメージ処理を含んだ,具象語と抽象語の質的な処理の違いを反映し,特に前期区間における陰性電位は具象語処理における視覚イメージ処理を反映することを示唆する。
テクニカルノート
  • 小川 奈美子, 井澤 修平, 野村  忍, 町田 和彦
    2010 年 28 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    唾液バイオマーカーの利用は増加しているが,唾液を採取する器具の違いがホルモン濃度に与える影響は十分に検討されていない。本研究ではストローによる採取(Passive Drool),コットンロールによる採取,ポリマーロールによる採取について,コルチゾール,デヒドロエピアンドロステロン(DHEA),硫酸基結合型DHEA(DHEA-S)の各濃度への影響を調査した。また,検体の室温保存が各ホルモン濃度へ与える影響を検討するために,唾液検体を採取直後に冷凍保存する条件,4日後,9日後に冷凍保存する条件を設け,条件間の濃度の比較もおこなった。参加者は成人男性7 名,女性13 名であった。DHEAでは0日,4日と比べて9日目で濃度が高くなり,DHEA-Sはストローによる採取よりもコットンロールによる採取で濃度が高くなった。唾液を検体として内分泌を測定する場合,これらの影響を考慮しながら研究計画を立てる必要がある。
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