本研究の目的は, 有酸素的適応者の心理的負荷に対する心臓自律神経系の反応を調べることである.男子大学生の長距離ランナー10名 (FIT) と日常的に運動をしていない男子大学生10名 (UNFIT) が, 心理的負荷としてストループ課題を5分間行った.心拍変動のスペクトル分析によって, 安静時と課題時の交感神経と副交感神経の指標を算出し, FITとUNFITで比較を行った.安静時において, FITはUNFITに比べて, 心拍が低く, 副交感神経の活動が高かった.しかし, FITはUNFITよりも課題に対して交感神経の活動が昂進し, 副交感神経の活動が減少した.これらの結果は, 心理的負荷に対する心臓自律神経の反応は, むしろ有酸素的適応者の方が大きいことを示唆している.これらの結果について, 初期値の法則 (Wilder, 1957) に基づいて解釈を行い, その意味を考察した.
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