生理心理学と精神生理学
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22 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 井澤 修平, 長野 祐一郎, 依田 麻子, 児玉 昌久, 野村 忍
    2004 年 22 巻 3 号 p. 215-224
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究は, 敵意性と心臓血管系反応性の関連について検討する事が目的であった.被験者は男子大学生20名で, 彼らは日本版Buss-Perry攻撃性質問紙 (BAQ) に記入を行った.BAQは「短気」・「敵意」・「言語的攻撃」・「身体的攻撃」の4因子からなる質問紙である.安静状態の後, 4つのブロック, 通常暗算課題 (NMA), 挑発暗算課題 (PMA), 挑発安静 (PRP), 回復期 (RP) が行われた.挑発条件では, 実験者が被験者に対して嫌がらせを行った.結果, PMAとPRPにおいて血圧・心拍・怒り気分が有意に上昇していた.敵意性要素とCVRの相関分析によって, 「短気」はPRPにおける収縮期血圧の上昇と, 「身体的攻撃」はPRPとRPにおける圧受容体反射感度の抑制と関=連していた.これらの結果は, 過去に他の文化圏でCVRと敵意性について調査した研究報告と一致するものである.この結果について敵意性と冠動脈疾患の関連性の文脈で論議がされた.
  • 赤嶺 亜紀, 木田 光郎
    2004 年 22 巻 3 号 p. 225-236
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Go/NoGo課題とStop/NoStop課題の認知処理の違いを明らかにするために, 被験者 (N=50) には, 5つのカテゴリからなる画像刺激が提示された.Go/NoGo課題条件では, 被験者は人物刺激に対してのみボタン押しをするよう求められた.Stop/NoStop課題条件では, 被験者は自動車刺激に対してのみ反応を抑制し, 人物刺激を含めて, 他の刺激全てに反応しなければならなかった.2種の課題において記録された事象関連脳電位には, 大きな二峰性の陽性波 (P3) が生じた : 300ms近傍の下位成分と400ms以降, 広範に分布する下位成分が認められた.初期および後期P3の頭皮上分布や潜時は, P-SRおよびP-CR (Falkensteinetal., 1994) と類似していた.初期P3は刺激評価を, 後期P3はその後に続く運動一反応処理を反映すると推察された.NoStop刺激に対するFzの初期および後期P3の振幅と反応時間との間に有意な相関が認められた.しかし, Go刺激に関しては, これらの相関は有意でなかった.これらの結果は, Go/NoGo課題にくらべStop/NoStop課題においては運動-反応処理が重要な役割をもつことを示唆している.
  • 長野 祐一郎
    2004 年 22 巻 3 号 p. 237-246
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    鏡映描写 (MD) 課題は, 主として全末梢抵抗 (TPR) の増加によって, 血圧 (BP) を増大させる事が知られている.本研究では, 競争状況がMD課題中の心臓血管反応に与える影響について検討した.男子大学生 (32名) が, 8分間の練習の後, 4分間のMD課題を行った.被験者の半数は単独群に, 残りの半数は競争群に割り当てられた.心拍数, 圧反射感度, BPおよび血行力学的パラメーターが計測された.MD課題中, 競争群は単独群に比べ, 高いBPの変化を示した.血行力学的なパラメーターは, 競争群におけるBPの上昇が心拍出量の増大によるのに対し, 単独群におけるBP上昇の決定因がTPRの増大である事を示した.MDのようなTPRを増大させやすい課題においてさえ, 競走は心臓反応の増大を誘発した.競争が心臓血管反応に対し与える特殊な効果, および, その背景となる社会評価の影響について論じられた.
  • 松村 健太, 澤田 幸展
    2004 年 22 巻 3 号 p. 247-255
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    5分間の暗算課題 (連続引き算) 時の血行力学的反応パターンが, 2つのグループにおいて調べられた.それぞれのグループは12人の男子学生から構成されており, 一方は, 部分的コントロール可能 (PC) 条件, もう一方は, コントロール不可能 (UC) 条件に対応していた.PC条件では, 解答毎にフィードバックが与えられ, 一定の時間内に課題を終えるよう急がされた.そして, 要求された速度に満たない場合には, 20s毎に嫌悪刺激が与えられた.対照的に, UC条件では, フィードバックが与えられず, 特定の時間内に課題を終えるよう急がされることはなかった.ただし, 対にされたPC条件の被験者と同一のタイミングで嫌悪刺激が与えられた.予想された通り, PC条件の被験者は心臓優位反応パターン (血圧上昇が, 主に心拍出量の増加によるもの) を示した.ところが, 予想とは異なり, UC条件の被験者も同一の反応パターン傾向を示した.これらの結果から, コントロール可能性が血行力学的反応パターンに与える影響について考察した.
  • Hiroshi ABE, Yasushi ISHIDA, Tsuneo IWASAKI
    2004 年 22 巻 3 号 p. 257-266
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Separate lesions of the hippocampus and the perirhinal cortex in rats led to distinctly different patterns of behavioral impairments in spontaneous object and place recognition tasks, in which preference to a novel object and location respectively, was tested. In both tasks, rats were tested for two delay conditions : 15 and 25 min. The lesion of the hippocampus had no effect on preference between novel and familiar objects in the object recognition task, but it impaired discrimination between objects set in novel and familiar locations in both delay conditions in the place recognition task. In contrast, the lesion of the perirhinal cortex only impaired preference in the 25-min delay condition in the object recognition task. These results suggest that the hippocampus and the perirhinal cortex are functionally differentiated from each other in recognition memory for objects and places. (Japanese Journal of Physiological Psychology and Psychophysiology, 22 (3) : 257-266, 2004.)
  • 鈴木 玲子, 中山 誠
    2004 年 22 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Guilty Knowledge Test (以下GKT) ではSRRと呼吸変化は異なる反応生起機序に基づくと指摘されている.特に、SRRが実験事態においても観察されるのに対し, 呼吸停止は犯罪捜査場面におけるGKTでのみ生起するとされている.そこで, 本研究では最低1回の呼吸停止が得られた犯罪捜査におけるGKT38事例の検査記録に基づき, SRRの最大振幅と呼吸停止の出現率について質問内容および質問呈示方法の違いの作用について検討をおこなった.本研究の結果, SRRには裁決事項 (質問) の内容や視覚呈示の作用は認められず, 一方, 呼吸停止では「数」「間接事象」に比較して「場所」「直接事象」「犯人行為」の質問で生起率が増加することが認められた.また, 口頭呈示に比較して視覚呈示において生起率が増加することが認められた.
  • 入戸野 宏
    2004 年 22 巻 3 号 p. 275-290
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    反復測定を含む実験計画で得られたデータに分散分析を実施することは, 心理生理学の研究で広く行われている.しかし, 研究者が適切な統計手法を選ぶことは往々にして難しい.本稿は, 心理生理学データに反復測定の分散分析を行うときの, 統計学的に妥当で, 容易に実施できる手続きについて述べたものである.取り上げたのは, 単変量・多変量分散分析の比較, 誤差項の選択, 単純効果と交互作用対比の検定, 多重比較, 効果量といった話題である.典型的な統計検定の流れを数値例を用いて解説する.
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