急峻な痛みの知覚を誘発する接触型バリ通電刺激法を用い, 事象関連脳電位 (ERPs) を測定した.痛みの主観的測度としては, 痛みのマグニチュード推定を採用した.
被験者は報酬を与えた大学生20名 (男女各10名) であった.刺激は右示指背側部に置いた鍼電極から与えた0.5ms持続する定電圧方形波パルスであった.1試行は20回のパルス刺激からなり, その刺激間間隔 (ISI) が2sのISI固定条件と, 平均2sで1-3sと変化するISI変動条件の2種類を設けた.刺激強度は10, 20, 30, 40Vの4種とし, 試行毎の痛みのマグニチュード推定値と事象関連脳電位を3部位 (Fz, Cz, Pz) から測定・記録した.その結果以下の知見が得られた.
1.痛みのマグニチュード推定値は, 刺激強度の関数として有意に増加した.
2.ERPは刺激後120-140msを頂点とする初期陰性成分 (EN) と, 250ms-350msを頂点とする後期陽性成分 (LPC) が顕著であった.
3.ENはFzで, LPCはCzでそれぞれ優勢であった.
4.ENはISI変動条件でその振幅が大きかった.
5.Cz部位でのLPCの振幅は刺激強度と直線的に対応し, 痛みのマグニチュード推定値の結果と対応した.
以上の結果は, ERPsの両成分がヒトにおける痛みの知覚情報処理過程に関連して発生した脳電位成分であるこを示唆している.また.痛みの他覚的指標としては, Cz部位からのLPCの振幅が適していると結論できる.
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