本研究は模擬的な虚偽検出事態とストレス事態における呼吸系変容を比較するために行われた.男性16名, 女性14名の被験者が, 実験前安静 (PR), 暗算 (MA), ビデオゲーム (VG), 虚偽検出 (DD) および実験後安静 (PO) を経験した.呼吸中枢制御モデルにおけるドライブ測度 (平均吸気流速) は, MAとVGにおいて有意に増加し, タイミング測度 (吸気時間/呼吸時間) はストレス刺激に対して一貫性のある変化を示さないことを確認した.これとは対照的に, ドライブ測度は, 有罪知識質問法 (GKT) を用いて行われた模擬的虚偽検出の裁決質問において, 有意な増加は示さないことが明らかにされた.裁決質問に対する呼気量と分時換気量の有意な減少は, 非裁決質問のそれを有意に上回った.以上の結果は, ストレス刺激に対する呼吸変容は促進性のものであるのに対し, 虚偽にともなう呼吸変容は抑制性のものであることを示唆している.
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