脳磁図 (MEG) は, ヒトの脳内で発生した神経活動を非侵襲的に計測することのできる手法である.MEGは, 優れた時間, 空間分解能を有しており, 大脳皮質の活動の時空間的な特性を調べることが可能である.本稿では, 読みの神経機構についてMEGを用いて検討した最近の研究を概観した.まず, 左大脳半球における上側頭部の活動と, 事象関連脳電位N400成分の関係について論じた.ついで, 左・上側頭部の機能について, 読みの二重ルートモデル (文字の音韻変換に語彙的ルートと非語彙的ルートの2つを仮定するモデル) の枠組みから考察を行なった.その結果, 近年のMEGによる研究から, 読みのメカニズムとして二重ルートモデルが妥当であり, 左・上側頭部の活動が, そのうちの非語彙的な処理に関与することが示された.最後に, MEGを用いた読みの研究の今後の方向性について考察した.
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