日本看護研究学会雑誌
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29 巻, 4 号
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  • ―臓器提供関係施設看護師を対象とした実証的研究―
    新田 純子
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_15-4_22
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,Sque (200) が開発した尺度を修正して, 日本における臓器提供に関する看護師の態度尺度と知識尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討した。岩手県内脳死臓器提供施設の看護師716 名( 回収率85%, 有効回答率81%) を対象として, 無記名自記式質問紙法を実施した。研究者が修正作成した態度17 項目について探索的に因子分析した結果, 負の相関(r=-0.34,p<0.019 を示す2 因子12 項目( 不安因子6 項目, 信念因子6 項目) が得られ, これを態度尺度とした。態度尺度の構成概念妥当性・基準関連妥当性は5% の水準で確認され, 信頼性は態度を構成する各因子のChronbach’s α係数0.69 で確認された。知識尺度(8 項目) の構成概念妥当性は5% の水準で確認され, 信頼性は上位下位分析による弁別力が1% の水準で確認された。以上の結果から, 態度尺度12 項目と知識尺度8 項目は, 少項目数で十分な信頼性・妥当性を有し, 臓器提供関係施設看護師内の尺度として有用である。
  • 沖中 由美
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_23-4_31
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は, 身体障害をもつ高齢者がいだく現在の自己意識を身体障害や老いについての過去の意識に遡及しラベリングの視点で明らかにすることである。施設入所高齢者9 名に面接し比較分析を行った。その結果, 身体障害をもつ高齢者は, 過去に『身体が動かなければ何もできない』,『ぼけるのは嫌』と身体障害や老いを負にラベリングしたり,『身体障害があってもできることがある』と正にラベリングしたりしていた。また, 施設入所後に重度の身体障害をもつ人や認知症高齢者を負にラベリングしていた。高齢者が現在の自分を『生きる意味が見出せない』と負に自己ラベリングし, 一方,『生きる意味を探す』と前向きに意識するのは, こうしたラベリングが影響していたためであった。そこで, 老いを前向きに生きるための看護実践として, 語りを通して負の自己ラベリングを解放すること, 高齢者が認知症について理解できるようにすることの必要性が示唆された。
  • -家族関係および心理的側面に焦点を当てて-
    川上 千普美, 松岡 綠, 樗木 晶子, 長家 智子, 赤司 千波, 篠原 純子, 原 頼子
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_33-4_40
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,冠動脈インターベンションを受けた虚血性心疾患患者の自己管理行動の影響要因を明らかにし,特に家族関係および心理的側面に焦点を当てて検討することである。郵送法による自記式質問紙調査を実施し,質問紙は自己管理行動,属性要因,前提要因(不安・抑うつ・ストレス),実現要因(家族環境),強化要因(家族サポート)で構成した。調査対象237名中,145名より回答(回収率61.1%)を得て,131名を分析対象とした。平均年齢68.8±7.7歳で,男性99名であった。重回帰分析の結果,自己管理行動の影響要因として,影響力の強い順に家族サポート,年齢,性別,家族の結びつきが明らかになった。心理的側面を示す不安・抑うつ・ストレスは,有意な変数ではなかった。しかし,自己管理行動に最も影響した家族関係と心理的側面は相互に関連し,間接的に自己管理行動に影響することが推察された。本研究の結果,患者と家族がよい関係性が保てるような環境調整,家族のサポートを得るための介入,家族を含めたセルフケア教育,および患者の社会的役割背景を考慮した教育の必要性が示唆された。
  • 松本 啓子, 高井 研一, 中嶋 和夫
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_41-4_47
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,在宅認知症高齢者を抱える家族介護者のニーズと精神的健康との関係について明らかにすることを目的とした。調査は,事前協力の得られた23施設(団体)で,研究に同意の得られた240名を対象とした。調査項目は,家族介護者及び被介護者の性,年齢,著者らの報告している23項目のニーズ測定尺度,また介護者の精神的健康状態等であった。本研究では前記ニーズを独立変数,精神的健康を従属変数とする多重指標モデルを構築し,そのモデルのデータに対する適合度と変数間の関連性を,構造方程式モデリングを用いて検討した。前記多重指標モデルのデータへの適合度は,χ(df)=123.2(81),CFIは0.920,TLIは0.968,RMSEAは0.047であった。ニーズから精神的健康へ向かうパス係数は0.39で,ニーズの精神的健康に対する説明率は15.2%であった。モデルはデータに適合し,また家族介護者のニーズが精神的健康に関係していることが統計学的に支持された。
  • -勤務中の覚醒水準・作業効率の変化-
    折山 早苗, 宮腰 由紀子, 小林 敏生, 藤井 宝恵
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_49-4_56
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,三交代制勤務従事看護師の深夜勤務時間帯の前・中にとる仮眠によって,覚醒水準,作業効率を検討することである。女子学生5名に,深夜勤務時間帯を午前0~8時と設定し,21 ~ 23時に120分間の仮眠をとる条件(条件A)と午前3~4時に60分間の仮眠条件(条件B)の2条件を課し,覚醒水準,作業効率,仮眠中の脳波を観察した。その結果,仮眠時の主観的評価では,目覚めに関しては条件Aが良く,寝つきや熟睡感に関しては条件Bが良かったという特徴を示した。また,深夜勤務時間帯の前にとる仮眠には覚醒水準の維持効果があり,勤務時間帯にとる仮眠には作業効率を向上させる効果があることが示唆された。
  • 西沢 義子, 冨澤 登志子, 五十嵐 世津子
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_57-4_62
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は大学生のダイエット行動,ボディ・イメージ,性役割観の実態把握およびダイエット行動に影響を及ぼす要因について明らかにすることである。対象はH大学の1 ~ 4年生の男女468名である。調査には質問紙法を用い,ダイエット行動の測定にはEATⅠ因子を,ボディ・イメージの測定には自作のビジュアル・アナログ・スケールを,性役割観の測定にはMHFスケールを用いた。
      女子の理想体型は高身長・低体重の痩せ型に近い標準型,健康的体型は低体重の標準型,男子の理想体型は高身長・高体重の標準型,健康的体型は低体重の標準型であった。女子は男子よりも痩せ志向が強く,ダイエット行動得点も高かった。ダイエット行動には痩せ志向が最も強く関与しており,現在体型の如何に関わらず,ダイエット行動が生起していることを示唆している。また,女性らしさを痩せ体型に求め,ダイエットしていることも窺われる。したがって,自己の体型をポジティブに評価させるための教育プログラムが早急に求められる。
  • 糸嶺 一郎, 鈴木 英子, 叶谷 由佳, 佐藤 千史
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_63-4_70
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      新卒看護師はリアリティ・ショックを経験しやすい。本研究では,新卒看護師のリアリティ・ショックの実態及びその関連要因を明らかにすることを目的とした。
      大学病院及び大学の付属病院に勤務した940名の新卒看護師に調査を行ない,その結果からリアリティ・ショックに関連する複合的要因として,男性,病院の所在地が東京以外,身体的疲弊得点4.17以上,仕事量が大変多い,職場を変わりたい,全く別の仕事に就きたい,アサーティブ得点-22以下,があげられた。
      男性であることがリアリティ・ショックと関連しており,男性は少数のため,相談や自己表現の不足が関与していると考えられた。身体的疲弊感に関しては,新しい環境による疲労ではなくリアリティ・ショックの症状の可能性も視野に入れてサポートする必要がある。また新卒看護師の思いなどを意識的に表出させることやアサーション・トレーニングを取り入れるなどの心身共に援助するシステムの構築が望まれる。
  • 江口 瞳, 寺澤 孝文
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_71-4_80
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,看護学生の職業的アイデンティティの確立に向けてサポートする前提として看護師イメージに着目し,3年課程看護師養成所の入学時生と各学年終了時生を対象に看護師イメージ調査を実施し,さらに学年進行による影響を横断的・縦断的に分析した。先行研究では,学年進行により看護師イメージは低下するという報告と上昇するという報告が見られ,一貫した解釈が難しい。看護師イメージに関する63項目の評定値をもとに因子分析の結果4因子が抽出された。看護師イメージ得点は横断的分析によると,1年次入学時生と1年次終了時生に比較して2年次終了時生の得点が低値を示した。一方,縦断的分析では,1年生と2年生において学年の開始時よりも終了時が低下し,3年生では変化しないことが明らかとなった。入学以前から漠然と形成されていた看護師イメージが,学習の深まりとともに現実の自己像として反映し,得点に影響している可能性が示唆された。
  • -Oxford Hip Score日本語版の信頼性,妥当性-
    上杉 裕子, 藤田 君支, 奥宮 暁子
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_81-4_87
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究では人工股関節全置換術(以下THA)患者を対象とした自己記入式疾患特異的QOL尺度Oxford Hip Score(OHS)日本語版を作成し,その信頼性,妥当性を検証した。調査はTHA後,退院後1 ヶ月以上手術後3年以内の173名(男性20名,女性153名,平均年齢60.7(SD±12.3)歳)に行った。OHS日本語版はCronbachα係数(0.91)により信頼性の内的整合性が認められた。妥当性は作成段階で逆翻訳の手法を用い,看護の専門家,翻訳の専門家,THA患者の意見を参考に改良を加えたことで,内容的妥当性が認められた。また,包括的健康尺度MOS36-Item Short-Form Survey v2(SF-36v2)の8下位尺度との相関をSpearmanの相関係数で確認し,基準関連妥当性の同時的妥当性,構成概念妥当性の収束妥当性,弁別妥当性が認められた。OHS日本語版は日本のTHA患者への看護介入効果検討評価に有用な尺度であることが示唆された。
  • 工藤 うみ, 工藤 せい子, 冨澤 登志子
    2006 年 29 巻 4 号 p. 4_89-4_95
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      この研究の目的は,足浴における洗い・簡易マッサージが生理的・心理的にどのような影響を及ぼすのか基礎的なデータを得ることである。生理的指標として,血圧,脈拍,下肢深部温,胸部深部温,上肢皮膚温を測定した。心理的指標として,状態不安を測定するSTAI-Ⅰ,主観的温度感覚でGaggeらの「温度感覚カテゴリースケール」と,主観的快適感覚でWinslowらの「感覚カテゴリースケール」を用いた。方法は,41℃の温湯を用い,同一被験者に対して「温浴のみの足浴」と「温浴に洗い・簡易マッサージを加えた足浴」を日を変えて行った。その結果,下肢深部温・胸部深部温・上肢皮膚温が経時的に有意に上昇し,足浴における洗い・簡易マッサージは局所加温にも関わらず,胸部深部温,上肢皮膚温をも上昇させ,全身に保温効果をもたらした。また,脈拍,STAI-Ⅰ,主観的快適感覚からリラクゼーション状態をもたらしたことが示された。今回の結果から足浴における洗い・簡易マッサージは身体全体への保温効果,リラクゼーション効果があることがわかった。
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