日本看護研究学会雑誌
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44 巻, 2 号
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  • 外出自粛要請下における高齢者の健康行動と生活の困りごと
    市戸 優人, 大内 潤子, 林 裕子, 福良 薫, 松原 三智子, 宮田 久美子, 山本 道代
    2021 年44 巻2 号 p. 2_185-2_192
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/07/09
    ジャーナル フリー
    目的:地域在住の生活が自立している高齢者が,感染防止対策として講じられた外出自粛要請下において,健康を保持するために取り組んだ健康行動や生活上の困りごとを明らかにすることである。方法:65歳以上の高齢者201名を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,自由記載を質的帰納的に分析した。結果:健康行動では,【身体活動】,【健康管理行動】,【認知機能トレーニング】,【趣味活動】,【ストレス解消や気分転換】,【感染対策の実施】の6カテゴリーが生成された。生活上の困りごとでは,【趣味・娯楽活動が実施できない】,【身体活動量の減少】,【日常生活が制限されている】,【社会活動が実施できない】,【衛生材料が入手できない】,【受診や見舞いができない】の6カテゴリーが生成された。結論:高齢者は身体活動や感染対策などの健康行動に取り組む一方で,公共施設の閉鎖などにより社会活動に参加できないことに困っていることが明らかになった。
  • KJ法を活用した看護管理者の面接内容の構造化から
    今井 多樹子, 岡田 麻里, 高瀬 美由紀
    2021 年44 巻2 号 p. 2_195-2_209
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/13
    ジャーナル フリー

    目的:新人看護師が複数患者を同時に受け持つ体制下で直面する多重課題対応不全を生み出す主要因子を看護管理者の視点で抽出した。方法:管理者7名に半構造化面接を行い,KJ法で構造化した。結果:新人は【チームの中で段階的に育つ存在】ではあるが,【基礎教育と臨床現場のギャップ】が放つ過酷な看護実践の現実は,新人の【主体性が欠如した表面的学習】【対人関係力の弱さ】【自分本位さ】という実践以前の個人的な課題を露呈させていた。特に,【主体性が欠如した表面的学習】は【医学的知識と看護実践がつながらない状況】を招き,実践レベルでの【報告にも個別指導を要する難儀な状況】【柔軟に対応できる軸がない状況】を惹起し,複数患者の看護と多重課題対応の弊害となった。これには新人自身の【対人関係力の弱さ】【自分本位さ】が複雑に絡み,新人教育において【先輩による教育・指導の限界】にまで発展していた。結論:新人の学び方を精錬させることが不可欠と考えられた。

  • 急性期看護における日常生活ケアの理論化に向けて
    髙橋 智子
    2021 年44 巻2 号 p. 2_211-2_222
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー
    目的:急性期看護における日常生活ケアにかかわる概念を明確にする。方法:理論の相・フィールドワーク(FW)の相・統合の相から成るHybrid法を用いて日常生活ケアにかかわる概念を検討した。理論の相では文献から看護における生活の視点を明確にして作業的定義を行った。FWの相では看護師が急性期患者へ実践する日常生活ケア場面の参加観察とインタビューから実践における概念の用いられ方を明確にし,統合の相で結果を統合した。結果:理論の相を通して,看護における生活の視点は生命活動・生活行動・暮らしの3つに概念化された。FWの相を通して急性期の患者の状況5つ,急性期看護における日常生活ケアの実践内容8つ,日常生活ケアの反応や効果5つの概念が見出され,統合の相で急性期看護における日常生活ケアが定義された。結論:理論的な検討およびFWの検討を統合し,急性期看護にかかわる日常生活ケアの概念が示された。
  • 本谷 久美子, 荒木田 美香子
    2021 年44 巻2 号 p. 2_223-2_236
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー
    目的:看護学教師の看護学実習における病態教授活動のプロセスを明らかにする。方法:看護系大学における成人看護学の実習指導に携わる教師12名に半構造的面接を行い,M-GTAで分析を行った。結果:実習前に解剖生理や病態の学習を促し,学生が受け持つ対象の看護問題を予測し《病態にねらいを定める》ことで【病態を教授するための準備を万全にする】。病態を掘り下げて説明し,《患者の症状に焦点をあてる》ことで思考を拡げ看護を考えやすくする。また,学生の理解が不十分な場合は病態の範囲を絞り込み《指導を仕切り直す》ことで【病態理解の深化をめざし看護への着想を促す】。さらに,看護計画の根拠に病態が記されているかを確認し【看護実践を病態で裏付ける】。結論:病態教授活動のプロセスは病態の理解が看護に結びつくための学習支援の過程であり,看護専門科目でも繰り返し病態を教授する教育体制が必要である。
  • 加齢による影響,心理的変化,ニーズに焦点をあてた分析
    山本 孝治
    2021 年44 巻2 号 p. 2_237-2_249
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/05/11
    ジャーナル フリー
    目的:老年期クローン病患者の療養生活の実際として,加齢による影響,心理的変化,ニーズについて明らかにすることを目的とした。方法:65歳以上の老年期クローン病患者8名を対象とし,半構成的面接から得られたデータを質的に分析した。結果:加齢による影響では6つのカテゴリー,心理的変化は8つのカテゴリー,ニーズでは6つカテゴリーが抽出された。本研究の対象者は平均年齢が68.8歳であった。加齢により身体および認知機能が低下してきたことに自覚はあったが,生活や療養への大きな支障はみられなかった。しかしこの先,さらなる機能低下を起こし,生活や療養に影響することを予期し,ADLを維持させる対策を取っていた。結論:寛解期では表立った支援は必要としていなかったが,地域の専門病院や社会保障制度の情報取得に対するニーズがあった。患者が加齢による影響を踏まえ,療養を継続できるための支援の必要性が示唆された。
  • 山本 麻起子, 松本 智晴, 前田 ひとみ
    2021 年44 巻2 号 p. 2_251-2_261
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー
    目的:看護専門学校教員の量的な論文に対する「論文講読方略尺度」と「論文講読効力尺度」を作成し,信頼性・妥当性を検討した。方法:協力の承諾が得られた48施設の看護専門学校教員350名を対象に,郵送法による 自記式質問紙調査を実施した。尺度原案項目は,面接調査と文献をもとに作成した。結果:回収した174名(回収率 49.7%)の内、欠損値のない147名(有効回答率 84.4%)を分析対象とした。因子分析の結果,「論文講読方略尺度」は,【理解方略】,【協同的方略】,【整理方略】の3因子9項目で構成された。「論文講読効力尺度」は,【文献検索・論文理解への自信】,【論文講読維持・発展への自信】の2因子12項目で構成された。各々の尺度の内的整合性,安定性,構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認できた。結論:看護専門学校教員の論文講読方略と論文講読効力を測定する尺度を作成し,信頼性・妥当性が確認できた。
  • 髙山 賢路, 佐々木 真紀子
    2021 年44 巻2 号 p. 2_263-2_273
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/13
    ジャーナル フリー

    目的:看護職のプラトーの影響要因及びキャリア開発への影響を明らかにする。方法:全国400床以上の一般病院194施設776名に調査をした。質問項目は,個人的・組織的背景,階層プラトー化,内容プラトー化,看護職者の職業キャリア成熟測定尺度を使用した。これらの関連性を検討するために重回帰分析を行った。結果:階層プラトー化を有意に促進する項目は年齢であり,昇進願望や昇進機会の満足感は抑制する項目であった。内容プラトー化では促進する項目はなかった。抑制する項目は上司との人間関係の満足感,昇進機会の満足感,キャリア相談部門などであった。またプラトーの得点が低いほど,職業キャリア成熟測定尺度の各下位尺度の得点が有意に高かった。結論:組織的には年齢の影響を考慮し,昇進機会を公平にすることや,各看護師がキャリアの方向性を見出せるような職場環境を整備することが重要であると考えられた。

  • 福嶋 洋子, 小山 眞理子, 村田 由香
    2021 年44 巻2 号 p. 2_275-2_284
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー
    目的:看護学生が行う慢性期の患者の退院指導において,実習指導者が捉えた学生の困難と困難に対する指導の工夫を明らかにする。方法:300床以上の8施設の総合病院に勤務する実習指導者11名を対象に,インタビューガイドを用いて半構造化面接を行い,面接内容を質的記述的に分析した。結果:指導者が捉えた学生の困難は,退院後の患者の生活をイメージすること,患者の個別性を捉えた指導,患者とのコミュニケーションであった。指導者は退院後の生活のイメージを促す発問,学生が情報収集や他職種の意見を参考にできる場づくり等の工夫を行っていた。個別性を捉えた指導ができるように指導場面の実際の提示等の工夫をしていた。結論:生活者の視点を重視した慢性疾患患者に対する退院指導への実習指導として,早期に地域・在宅で生活する療養者に触れる体験を持つこと,他職種の意見を参考にする場づくり等が重要である。
  • 馬場 好恵, 本田 可奈子, 中西 京子
    2021 年44 巻2 号 p. 2_285-2_297
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー
    目的:看護基礎教育における臨地実習において,実習指導者が持つコンピテンシーを明らかにすることである。方法:実習指導者4名の実習指導場面の参加観察及び半構成的面接を行い,質的記述的に分析した。結果:臨地実習における実習指導者のコンピテンシーとして【学生を本当の実践の場の一員として導く】【周囲を巻き込みながら臨地に学生中心のネットワークをつくる】【看護師のロールモデルとして行動できる】【学生の経験を学びに変える】の4つが明らかとなった。結論:実習指導者がコンピテンシーの根源的特徴として,優れた実践家としての価値観や対人関係能力を持っていることが明らかとなった。4つのコンピテンシーの獲得には,経験値の高い熟練性と,of-the jobでの系統だった研修会等の受講は必要不可欠である。
  • 菅野 眞綾, 臼井 咲耶, 星 美鈴, 吉田 香, 叶谷 由佳
    2021 年44 巻2 号 p. 2_299-2_308
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー
    目的:我が国における一般病床に入院する高齢者の身体拘束を予防,軽減するための看護を明らかにすることを目的とした。方法:医学中央雑誌web版を用いてスコーピングレビューを実施した。結果:326文献が検出され,設定した適格基準に基づき,18文献が対象となった。先行研究の知見を統合した結果,【患者が安心して入院生活を送るための関わり】【安全への配慮】【身体拘束解除時期の適時検討】【普段の生活に沿ったケアの検討】【認知症ケア体制の構築】【心身の状態に配慮した意思決定支援】の6のカテゴリーが生成された。結論:看護師による基本的ケアの徹底と管理者による教育,文化の構築が一般病床に入院する高齢者に対する身体拘束を予防,軽減する看護のために必要であることが示唆された。
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