日本看護研究学会雑誌
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38 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ─ 乳幼児虐待の発生予防を目指して ─
    唐田 順子, 市江 和子, 濵松 加寸子
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_1-5_12
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    目的:産科医療施設(総合病院)の看護職者が「気になる親子」の情報を提供してから他機関との連携が発展するプロセスを明らかにする。
    方法:看護職者25人を対象としたインタビューで得られたデータを,M-GTAの手法で分析した。
    結果:プロセスは,親子の【リスクのレベルを判断したうえでつなぐ】ことで,他機関から情報がフィードバックされ【親子のなりゆきを知る】ことから始まっていた。【親子のなりゆきを知る】ことは,【支援に還元される経験的な学びを得る】,他機関を【頼れる支援機関として認識する】という看護職者の変化を生み,連携へのモチベーションが高まり,【連携が進化する】。顔の見える関係ができ連携の相乗効果が働き【新たな段階の連携が生まれる】ことであった。
    結論:連携を発展させる始まりは,産科医療施設と他機関との相互作用であり,そのためには他機関からの情報のフィードバックが必要不可欠である。
  • 大村 光代, 山下 香枝子, 西川 浩昭
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_13-5_22
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,特別養護老人ホーム(以下特養)での看取りの環境的構造と看取りの看護実践能力および看取りの実績における因果関係を検証することである。対象者は,ユニット型特養200施設と従来型特養300に勤務する看取り経験のある看護職1,000人である。特養の看護責任者と看護スタッフに対して,自記式質問紙郵送法調査を実施し,構造方程式モデリングによる分析を行った。その結果,159施設における298名の有効回答を得て,分析対象とした。そのうち,156名は看護責任者で,142名は看護スタッフであった。仮説とした因果モデルは,看護責任者と看護スタッフどちらのモデルも同等の適合度で収束し,因果関係が検証された。なかでも,看取り後のカンファレンスと看取り研修の開催頻度は,看取りの看護実践能力に強い影響を及ぼしていた。
  • 丸山 泰子, 櫟 直美, 横尾 美智代
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_23-5_32
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    目的:介護老人保健施設(以下,老健施設)の看護職の役割と認識について構成因子を明らかにする。また,やりがい感や職務継続意思との関連を明らかにし,看護職への教育的支援に向け示唆を得る。
    方法:老健施設の看護職に無記名自記式質問紙調査を実施。
    結果:看護職の役割と認識の構成因子として,「在宅復帰支援への取り組み」「在宅ケアチームでの連携と協働」「老健施設に従事する看護者としての心構え」「医療に関する知識と技術」「高齢者のQOL向上に向けた看護実践力」「高齢者の尊厳を守るかかわり」の6因子が抽出され,得点の高いほうがやりがい感や職務継続意志も高い傾向にあった。また,「在宅復帰支援への取り組み」の得点が最も低かった。
    考察:6つの実践力と認識の向上が看護職のやりがい感に関連する可能性と主軸役割である「在宅復帰支援への取り組み」の評価が低いことを踏まえ,老健施設の看護職への教育的支援を検討する必要がある。
  • 申 沙羅, 山田 和子, 森岡 郁晴
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_33-5_40
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
     生後2~3か月児がいる母親の育児困難感とその関連要因を明らかにすることを目的に本研究を行った。対象者はA市に居住し,2011年12月から2012年11月の間に生まれた生後2~3か月の児がいる母親167名(回収率34.9%)であった。調査は無記名自記式質問紙法で行い,育児困難感,母親,子ども,父親などの家族の要因について尋ねる項目を用いた。育児困難感の得点を従属変数とし,2群分けしたときに育児困難感の得点に有意差があった項目を独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。その結果,「エジンバラ産後うつ質問票」(EPDS)が9点以上,「愛着」の得点が高い,家庭の経済状態にゆとりがない,育児方針にくい違いがある,育児について気軽に相談できる人がいないの5項目が育児困難感と関連していた。これらの5項目を指標として,育児困難感を感じている母親への支援を検討できる可能性が示された。
  • 山田 貴子, 藤内 美保
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_41-5_51
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    目的:早期退職した病院勤務の新卒看護師の入職から退職後までの心理的プロセスを明らかにすることである。
    方法:新卒看護師として就職した病院を入職後1年以内に退職した者10名に半構成的面接を実施し,分析方法はM-GTAを用いた。
    結果:35概念と12カテゴリーが抽出された。早期退職した新卒看護師は看護師としてできない【自己への失望】と【仕事のミスをした自己価値の ゆらぎ】により【看護師としての自己のあり方を自問】していた。この時期の新卒看護師は【心身のバランスの崩壊】状態にあり【退職決断の引き金】が【退職の決断】を強くした。退職後は【当時の自己を客観視】と【自己の成長】がみられた。
    結論:早期退職した新卒看護師は自己の能力と職場で求められる能力の差に悩み,看護師としての自己評価の低さが心理状態に強く影響していた。心身ともに追い詰められたことで職場から逃れたい気持ちが強くなり退職に至った。
  • 内田 真紀, 矢島 直樹, 有田 広美
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_53-5_59
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
     病態や倦怠感以外の要因の改善による慢性肝炎患者のQOL維持向上の可能性を探るため,患者が病気のために行う活動休息調整やソーシャルサポートが患者のQOLに影響を及ぼすのか検討した。外来通院中の患者40名に対し,肝疾患に特異的なHR-QOL評価法であるCLDQと慢性疾患患者に対するソーシャルサポート尺度,患者が肝炎のために行っている活動休息調整についての自作質問紙による質問紙調査を行った。活動調整と休息の有無で差が生じたQOLは[腹部症状]と[全身症状][心配]であった。ソーシャルサポートとQOL尺度で相関がみられたのは[日常の生活における情緒的サポート]と[腹部症状]であった。腹部症状に影響する患者属性は,[性別][インターフェロン治療歴の有無],CDDQの[感情機能]であった。患者の活動と休息調整状況および腹部症状を知ることで患者の心理的な支援につながる可能性が示唆された。
  • 木下 美樹, 吉田 俊子, 山田 嘉明, 高橋 和子
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_61-5_72
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
     THAを受けた患者の心理・社会的要因と疾患特異的な身体機能,自己管理行動,QOLの変化の特徴を明らかにし,QOLの関連要因を時期別に検討した。THAを受けた32名の患者の術後1か月,術後3か月,術後1年の日常生活の困りごと,サポート態勢,身体機能(WOMAC),自己管理行動,QOL(SF-36)を把握した。調査期間中,4~7割は困りごとを抱えていたが,8~9割が感染予防以外の自己管理行動の項目を実施できていた。また術後1年で,痛み,こわばり,日常生活困難度で改善し,QOLは身体・社会面で改善,精神面では低下した(p<.05)。
     QOLには日常の困りごと,手助けの必要性,身体機能がすべての時期で,継続看護の希望,手術回数,社会制度の活用,リハビリの困難感,相談相手の存在,同居者の存在,脱臼予防も時期によって関連していた(p<.05)。日常生活の支障や困りごとがQOLとの関連を強めていたため,困りごとに対するサポート支援を行っていくことが重要であると考えられた。
  • 福本 環, 岩脇 陽子, 松岡 知子
    2015 年 38 巻 5 号 p. 5_73-5_81
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    目的:産婦人科診療所に勤務する産婦人科医師および看護職者の性暴力被害者への支援の実態と支援に関する態度を明らかにする。
    方法:京都府内の産婦人科を標榜する診療所103か所に勤務する産婦人科医師103名,看護職者103名を対象に,郵送法による自己記入式無記名質問紙調査を行った。
    結果:産婦人科医師33名,看護職者22名から回答を得た。性暴力被害者に対して,半数以上の産婦人科医師および看護職者が対応したことがあったが,看護職者は医師の補助的な役割にとどまっていた。支援内容11項目のなかに,看護職者が法令の範囲内で主体的に介入できる支援内容が複数あった。性暴力被害者を支援できる看護職者の養成の必要性は認識されているが,実際に学ぶ機会が少ないことが明らかとなった。
    結論:看護職者の役割を重視した看護ケアを具現化していくこと,性暴力被害者支援看護職者養成のための教育の機会を増やす必要性が示された。
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