プロラクチン (PRL) は哺乳動物における乳汁分泌維持作用を示すのみでなく,母性行動の誘起・維持にも重要な働きを有するホルモンであることが明らかになってきた。 PRL の生理作用は標的組織に存在するプロラクチン受容体 (PRL-R) との結合により発揮される。 今回,雌及び雄ラットを用いて乳仔との接触刺激による親性行動の誘導を試みるとともに,血中 PRL 濃度及び脳内 PRL-R mRNA の発現について解析を行った。
1. 雌及び雄ラットいずれにおいても乳仔との接触日数の増加に伴い,親性行動の発現が増加した。
2. 親性行動の最終的な発現頻度をみると,雌ラットでは仔と共にうずくまる,仔をなめるに加えて,連れ戻し,巣作りを含む4項目全てにおいて完全にその出現を観察した。 しかし雄ラットでは仔と共にうずくまる,仔をなめるという親性行動はほぼその出現を認めたが,連れ戻し,巣作りなどの行動は不完全であった。
3. 乳仔への親性行動が認められた雌及び雄ラットでは,血中 PRL 濃度が上昇し,脳内 PRL-R mRNA の長型 (long-form) の発現が有意に増加した。
以上,乳仔接触刺激により増加した PRL が脳内 PRL-R の長型 (long-form) の発現を誘導し,その結果仔への親性行動を促進するものと考えられた。
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