日本看護研究学会雑誌
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34 巻, 5 号
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  • ─ 助産師のキャリア発達に向けた看護継続教育の提供 ─
    中山 登志子, 舟島 なをみ
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_1-5_10
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,助産師の学習ニードアセスメントツールを開発することである。質的帰納的に解明した助産師の学習ニードを基盤に質問項目の作成と尺度化を行い,内容的妥当性の検討を経て30質問項目からなる尺度を作成した。これを用いて,助産師1,185名を対象に調査を実施した。質問紙回収数は672(回収率56.7%)であり,有効回答618を分析した。結果は,信頼性係数クロンバックα が.942,再テスト法における尺度総得点の相関係数が .736(p < .001)であり,尺度が内的整合性および安定性を確保していることを示した。また,助産師経験年数が20年以上25年未満の者が5年未満の者よりも(t =-3.033,p = .003),仕事上の目標をもっている者がもっていない者よりも(t =3.863,p = .001),尺度総得点が有意に高く,尺度が既知グループ技法による構成概念妥当性を確保していることを示した。
  • 金正 貴美, 當目 雅代, 野口 英子, 竹内 千夏
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_11-5_19
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,嗜好品のニーズを制限されている患者が我慢を繰り返すプロセスを明らかにすることである。嗜好品とは,身体に害を与えるため制限されることの多いたばこ・アルコール・塩分とした。虚血性心疾患・ネフローゼ・アルコール性肝硬変・喘息の患者15名に,半構成的面接を実施し,木下の『修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ』を用いて比較分析を行った。その結果,患者は【嗜好品を制限するための我慢】や【病気の悪化や入院などの環境による一時の我慢】を繰り返し,【嗜好品がやめられないことに気づく】ことで,【嗜好品をやめたい思いが生まれる】といったプロセスが抽出された。嗜好品を制限する我慢を繰り返し,生活のなかで嗜好品に依存していることに気づきながらも,病状の悪化で死を意識し,嗜好品をやめたいという生きる希望が生じる経験であることが明らかになった。
  • 萩原 英子, 二渡 玉江
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_21-5_30
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     乳がん患者が,乳房の異常の気づきからどのように乳がんであることを認知し,治療に至るのかを明らかにすることを目的に,乳がん患者10名に対して半構成的面接調査を実施し,『修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ』を用いて分析した。がんの認知プロセスは,次の2つの局面から構成された。【がんである可能性を否定しながらも意識し続ける】局面では,がんではないと願うことによりがんである可能性を否定しながらも,自分はきっとがんであると予測していた。【がんである事実と向き合い,意味づける】局面では,告知を契機に,がんであるという予測が確信に転換することにより,がんと向き合い,がん罹患や生き方についての意味を修正していた。患者の葛藤や困惑を理解し,患者の思いの表出をうながすこと,正しい情報を提供し,状況の理解をうながすこと,自らの体験を語ることで整理し,新たな価値観の形成を支援することの必要性が示唆された。
  • ─ 禁煙支援のための課題を考える ─
    新田 真由美, 板山 稔, 天谷 真奈美
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_31-5_40
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     精神疾患をもつ患者の喫煙率は健常者より多いにもかかわらず,積極的な禁煙指導は少ない現状がある。本研究は,統合失調症をもつ患者の禁煙認識や禁煙阻害因子に着目し,よりよい禁煙支援方法を考察するための研究である。研究期間は平成20年5月7日から平成20年5月31日。研究対象者は病院の外来およびデイケアに通院する喫煙中の統合失調症患者16名であった。半構造化面接を行い,分析にはKJ法の手法を用いた。結果,統合失調症患者の禁煙認識と禁煙阻害因子を説明する10のグループが導き出された。統合失調症患者の禁煙認識は,「喫煙者として社会のなかで窮屈さを感じている」などであった。また,禁煙阻害因子は,「日常生活を送るなかで,タバコが日々の営みの支えや,潤い,楽しみ,さらには達成感を与える役割を果たしている」などであった。禁煙を支援する際には,QOLを高める介入や社会からのはたらきかけ,禁煙の目的の設定などが重要であると考えられた。
  • 菅沼 真由美, 佐藤 みつ子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_41-5_49
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,認知症高齢者の家族介護者(以下介護者と略す)の支援への示唆を得るために,介護者の介護評価と対処方法の特性について検討した。介護施設に通所している認知症の症状のある高齢者と同居している主介護者401名に質問紙調査を行い,回収率は60.3%(242名)であった。その結果,認知症の症状に対応できる介護者は肯定的評価が高く(p=.000),否定的評価が低く(p=.001),さまざまな対処方法を活用していた(p=.000)。認知症の症状に対応できない介護者は,認知症の症状がわからない(p=.000),相談相手がいない(p=.032)介護者に多かった。介護評価と対処方法の関連は,肯定的評価と対処方法はやや強い正の相関(p<.01),否定的評価と対処方法は弱い負の相関(p<.01)が認められた。このことから,肯定的評価を高め否定的評価を軽減するためには,認知症の症状に対応できること,多様な対処方法がとれるように支援する必要性が示唆された。
  • 熊坂 隆行, 片岡 三佳, 升 秀夫
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_51-5_57
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者のQOLの向上を目指して,緩和ケア病棟において動物介在活動を実施し,参加した入院患者の体験から,入院中に動物とのふれあうことの意味を見出し,その意味をとらえた看護援助を検討した。横断的・記述的方法を用いて,動物介在活動終了後に半構成的面接を行った。動物介在活動に参加し,動物とのかかわりや関係性,そこに参加している人々とのかかわりをとおして【動物の存在から得た安心感】【生きている動物自体から得る癒し】【苦痛からの解放】【ゆとりの創出】【生きていることの確認】を体験していた。さらに,これらを通して自己存在が強化され,与えられた生を主体的に生きる体験となっているように考えられた。
     緩和ケア病棟における動物介在活動は,心身の苦痛などから緊張感や孤立・孤独感を抱えている患者を解放し,自己存在を強化し,QOLを向上するためには効果がある介入であることが示唆された。
  • 中馬 成子, 土居 洋子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_59-5_69
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     2型糖尿病患者のインスリン療法に対する心理的行動的反応を明らかにするために,インスリン療法を1年以上継続している20名を研究の対象とした。インタビュー内容から逐語録を作成し,データ化したうえで,継続比較分析することにより5つのカテゴリーを抽出した。インスリン療法の告知時は,【インスリン療法に対し否定的感情】をもっていた。その後,【インスリン療法の知識による認識の変化】がもたらされ,【インスリン療法の開始を決意】し,インスリン自己注射を実施し体験する過程を経て,【インスリン自己注射に対する安心感を獲得】しており,【インスリン療法を維持する意志と行動】という肯定的な態度へと変遷していた。治療開始時の心理的行動的問題を焦点化したうえで,早期から正しい知識と安心感が得られる情報を提供し,肯定的な認識と態度がもてる援助が重要である。
  • ─ 成人下部消化管造影画像を用いての検討 ─
    春田 佳代, 山幡 朗子, 篠田 かおる, 伊藤 眞由美, 春日井 邦夫, 鈴村 初子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_71-5_75
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     浣腸による直腸損傷事例は,年間数例報告されている。一要因として,カテーテル挿入の長さが考えられるが,基礎看護技術の書籍に記載されている長さはさまざまである。そこで,下部消化管造影の画像を用いて,浣腸時の体位である左側臥位での成人の生体による肛門縁から直腸前壁までの長さを調査し,安全なカテーテル挿入の長さを検討した。
     その結果,性別による肛門管直上部から直腸前壁までの長さに有意な差は認められないため,性別によりカテーテル挿入の長さを変える必要性はないと考えられた。また,年齢が高くなるにつれて,肛門管直上部から直腸前壁の長さが長くなる傾向がみられたが,年齢層別の最小値と最大値に大きな差がみられた。したがって,左側臥位でカテーテル挿入時に直腸前壁に損傷を与えない安全な長さは,測定最小値の2.9cmに解剖学的肛門管2.5cmを加えた5.4cm以下であり,基礎看護技術の書籍では5.0cm以下とすることが安全である,と考えられた。
  • ─ 腹膜透析を実施している患者をとおして ─
    山口 曜子, 有吉 玲子, 堀口 陽子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_77-5_85
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     透析療法を迫られる糖尿病性腎症の患者の援助の方向性を見出すことを目指して,腹膜透析(PD)を選択した患者からその受容過程を明らかにすることを目的とした。PDを経験している7人に半構成面接を実施した。その結果,導入期は【現在の腎機能の認識不足と加療中の安堵感】があり,尿毒症から【急変による透析療法の必要性とその認識】がなされていた。導入直前期 は,PDを勧める説明を受け【透析の説明とその選択の緊急性の理解】ができ【腹膜透析選択の影響要因】を受けながら【腹膜透析の自己決定】を行っていた。導入後は,日常生活に戻り【腹膜透析によるQOLの低下】を実感しながら【腹膜透析によるQOL維持の努力】を行い【腹膜透析の経験による満足感】を得,【腹膜透析の合併症の心配】と【血液透析移行への不安】も抱えていた。これらの患者の受容過程を知ることで,PD選択における援助の方向性の示唆が得られたと考える。
  • 近藤 由香, 小板橋 喜久代, 金子 有紀子, 小林 しのぶ
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_87-5_93
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,漸進的筋弛緩法(PMR)の簡易版を作成すること,がん患者にPMRの簡易版を実施し有効性を評価すること,である。先行研究を参考に7筋群の簡易版PMRを作成し,がん患者6名に実施した。6名の対象者に2回ずつ全12回測定したうち,唾液中分泌型免疫グロブリンAは実施後7回増加,唾液中コルチゾールは実施後6回低下がみられ,収縮期血圧値は実施後8回低下が,脈拍数は実施後7回上昇がみられた。1年間PMRを継続できた2名の半構成的面接の内容分析の結果からは【心身の心地よさを感じる】【不快な症状が緩和する】【PMRプログラムに対する肯定的な気持ちをもつ】【自分の生活のなかで役立つ】【PMR継続への意欲をもつ】が抽出された。以上より,簡易版PMRはがん患者の心身を整える効果をもたらすことが示唆された。
  • ─ Dilthey解釈学の伝統を継ぐドイツ語圏の哲学者の文献検討とその英語・日本語訳の比較から ─
    中木 高夫, 谷津 裕子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_95-5_103
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,《体験》(ドイツ語の《Erlebnis》の日本語訳)を自己の哲学の鍵概念としているドイツ語圏の哲学者たちが用いる《体験》という語の哲学的意味を明らかにし,日本の質的看護研究において使用する「体験」と「経験」を考察することである。
     Dilthey,Husserl,Heidegger,Shütz,Gadamerの文献を検討した結果,質的看護研究が追究しようとする《体験》の多くは,Diltheyがいうところの〈心的生〉であり,かつ研究の対象となる患者・家族や看護師が,自らの体験を反省的な眼差しによってとらえなおした〈有意味な体験〉であると考えられた。さらに,そうした研究は,その理論的基盤をDiltheyからHusserl,Heidegger,Shütz,Gadamerに引き継がれてきた生の哲学や解釈学に置いていることが示唆された。
  • 佐藤 幸子, 佐藤 志保, 山口 咲奈枝, 古瀬 みどり
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_105-5_114
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     児童養護施設職員が被虐待児とのかかわりを進展させるプロセスを明らかにする目的で,施設職員11名を対象に半構成的面接を実施し,『修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ』で分析した。その結果,《かかわりを進展させる原動力》カテゴリーには〈子どもの行動の解釈〉,〈職員の職業観〉,そして〈他の職員の影響〉のサブカテゴリーが含まれ,《かかわり進展》カテゴリーの〈子どもとの困難なかかわり〉から〈子どもを個別に理解する〉,そして〈方針をもった子どもへのかかわり〉への推移に影響していた。また,〈子どもを個別に理解する〉や〈方針をもった子どもへのかかわり〉が《かかわりへの自信》カテゴリーの〈かかわりへのとまどい〉から〈子どもが応えてくれる確信〉への推移に影響していた。以上の結果より,職員が子どもへのかかわりにとまどいのある場合には《かかわりを進展させる原動力》への働きかけが必要であることが示唆された。
  • 加藤 真由美
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_115-5_122
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,転倒につながる主観的事象をアセスメントできるレベルに表現できることを目的に,認知機能が低下している施設高齢者の生活環境における転倒に関する主観的事象の言語化を試みた。対象者は女性高齢者2名であった。研究方法は,行動と環境の相互作用があることを考慮し行動分析法を活用した観察と聞き取り,および照度や高さなどの客観的データも収集した。結果,A氏からは〈歩行の方向は前向き以外となっていないか〉〈歩行時,身体の重心が支持基底面からはずれていないか〉などが,B氏からは〈不安があるため出歩いていないか〉〈歩行経路の照度は移動に十分な明るさか〉などが言語化された。B氏においては0~1Lx程度の照度のホールで,食事用の机を「材木」と錯覚した。これらのことから,言語化の際には運動学の専門的知識,ならびに個人の生活過程や価値観を含める必要があることがわかった。
  • ─ さらなる発展に向けて ─
    野島 良子
    2011 年 34 巻 5 号 p. 5_123-5_129
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
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