日本看護研究学会雑誌
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26 巻, 5 号
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  • :うつコーピングと抑うつ性の影響
    國方 弘子, 中嶋 和夫
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_19-5_29
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,コーピング理論をQOLの検討に取り入れ,精神障害者 (入院患者158名と在宅患者81名) を対象にうつコーピング,抑うつ性,QOLの因果関係モデルを検証した。 その結果,「positive coping behaviors」 は抑うつ性に対し負に,「negative coping behaviors」 は抑うつ性に対し正に,抑うつ性はQOLに負の関係を示したことから,うつコーピングは抑うつ性に直接影響を与え,QOLに対しては抑うつ性を介して間接的に影響を与えることが明らかになった。 そして,寄与率は,抑うつ性に対し在宅患者が28%,入院患者が18%,QOLに対し在宅患者が36%,入院患者が29%であった。 以上より,精神障害者のQOL向上のためには,彼らのうつコーピング能力を高めるための看護介入の重要性が示唆された。
  • -現象学的アプローチを用いて-
    片岡 三佳, 野島 良子, 豊田 久美子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_31-5_44
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     精神障害の中でも重篤とされる精神分裂病者にとっての生きられた入院体験を明らかにすることを目的に,入院体験のある精神科外来に通院中の精神分裂病者8名を対象に半構成的面接を行った。 録音後逐語録に転記した面接内容を Giorgi の現象学的アプローチを用いて分析した結果,258場面が抽出され,19カテゴリーに分類された。 精神分裂病者の生きられた入院体験は,1) 誰にも理解してもらえない苦しみとしての病い体験,2) 社会的存在の時間と場の喪失体験,3) <させられている>体験と感じる日常生活,4) 日常性のなかに新たな意味を発見する体験,5) 同類意識と他者に理解されていない孤独感の混じる他者との関係,として意味づけることができる。 そして,こうした入院体験全体の根底には深い孤独感が横たわっていると思われる。
  • 長谷部 佳子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_45-5_57
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     この研究の目的は,温罨法の中でも科学的データが少ない 「湯たんぽ」 に関して,その湯温が生理学的計測値や主観的感覚に与える効果,およびこれらの計測値に与える身体的因子の影響を検討することにあった。
    女子学生14名を対象に湯たんぽ作成時の湯温を80℃と55℃の2種類,コントロールを寝床内温度とほぼ同等の30℃としたクロスオーバーデザインを組み,計測を行った。 1被験者への温熱条件は無作為に割り付けて,1日1種類の温度のみとした。
     その結果,湯温の違いは寝床内湿度,足趾皮膚血流量,足底深部温,足底-前額深部温較差および温冷感覚に有意の影響を与え,湯たんぽ作成時湯温が80℃の場合は,55℃よりも被験者の温冷感覚において優れていた。 また,温罨法実施前の計測値は,温熱感受性や体脂肪率の影響を受ける傾向を認めた。
     本研究は,温罨法を行う際の観察内容を明らかにすると同時に,湯温と使用方法に関する規準の見直しを示唆した。
  • 藤野 成美, 忽那 龍雄
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_59-5_72
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,うつ状態を伴う関節リウマチ患者 (以下 RA と略す) の心理的問題を明確にし,外来における効果的な精神的ケアについて示唆を得るものである。 対象はうつ性自己評価尺度 (SDS) により中等度及び重度のうつ状態と判定され調査の同意が得られた5名の女性 (平均年齢41.2歳,平均罹病期間12.4年) である。 調査方法はリウマチ専門外来において半構成的面接を行い,生活状況や RA についての不安やストレスなど対象者の思いを自由に話してもらった。 さらに初回面接と最終面接時にうつ状態の評価として SDS を施行した。 うつ状態を伴う RA 患者の心理的問題は 「RA による疼痛」 「機能障害の悪化に伴う将来への不安」 「治療方針への不安」 「主介護者に対する問題」 の4つが明らかにされた。 対象者の言動や表情の背後にある不安感や辛さを理解し,内に秘めたストレスや不安を言語化して,一つ一つ解決するよう精神的ケアを行った結果,対象者5名のうつ状態は軽減した。
  • -退院1週間前から退院1ヶ月後までの経過-
    千葉 京子, 中村 美鈴, 長江 弘子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_73-5_86
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     大腿骨頸部骨折で手術を受けた高齢者に焦点を当て,退院1週間前から退院1ヶ月後までの 「生活の折り合い」 に向かう心理的過程を明らかにすることを目的とした。 対象者は高齢患者 (65~82歳) 4名,データは半構成的面接により収集し,分析は内容分析の技法を用いた。 その結果,①「生活の折り合い」 の心理的過程には2つの段階があり,第1段階は 「生活の折り合い」 をつけようとする試み,であった。 第2段階は 「生活の折り合い」 をつける取り組み,で対象者は自尊感情が低下し抑うつ性が高まっていた。②先行研究の2主要因に近似した“障害に伴う生活調整”と“自己尊重感を保証する健康への揺らぎ”がみられた。➂大腿骨頸部骨折高齢者の 「生活の折り合い」 に向かう心理的過程の移行期における看護は,自己効力感を高め抑うつ性を低めていくよう,行動的支援を取り入れ肯定的な行動変化に影響を与える援助が重要と考えられた。
  • 降矢 直美, 西垣 克
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_87-5_100
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     看護師の目測による観察の妥当性を検討することを目的に,都立病院に勤務する看護師5名に研究者が作成した吐物を用いて実験を行った。 作成した吐物15個をランダムに150回呈示し,縦横の長さと量の目測を行い呈示した吐物と目測の誤差量とカルテへの記載表現を調べた。 その結果,目測は曖昧な観察であること被験者個々の目測傾向には個人差があることが分かった。 被験者の目測傾向は 「少なく目測する」 「多く目測する」 「少ない,多いが混在する」 3タイプに分類でき,個人差は吐物の面積,量との統合の相違によるものであった。 吐物別の目測誤差では,吐物面積が大きいものより小さい物の方がまた,形が不定形でない物の方が目測の妥当性が高くなる特性がある。 カルテへの記載表現では,被験者3名が 「多量」 「中量」 「少量」 と表現したが量の捉え方は個々によって異なり,情報としての信頼度が低いことが明確になった。
  • 清村 紀子, 西阪 和子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_101-5_121
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,研究成果活用における阻害因子を測定する日本語版 BARRIERS Scale の信頼性・妥当性を検討することを目的に実施した。 BARRIERS Scale は,4因子 (Adopter ・Organization ・Innovation ・Communication) とその下位28項目から構成される。 回答は,0=わからない,を含む5段階のリカート尺度が使用される。 本研究は,2001年6月19日~2002年4月9日までの間に実施し,福岡県看護協会主催の看護研究に関する研修会参加者,ファーストレベル受講者,及び福岡県内の総合病院に勤務する看護職者527名を分析の対象としている。 日本語版 BARRIERS Scale の内部一貫性は,Cronbachα係数0.76~0.83で,充分に高く適切であることが示された。 内容妥当性は,看護系大学の教員2名で検討した結果,既存文献の内容を網羅し,文化的背景やシステムの相違から生じる不具合は認められなかった。 探索的因子分析と確証的因子分析を用いて構成概念妥当性を検証したところ,探索的因子分析の結果,累積寄与率36.048%,適合度検定は有意確率0.998 (χ2=188.068, 自由度=248) で高い適合度を示す5つの因子が抽出された。 5因子モデルは,確証的因子分析により GFI=0.902,AGFI=0.885,RMSEA=0.046,AIC=842.862,CAIC=1164.161でモデルがデータに適合していることが示された。 Funk らのモデルと比較すると,Innovation,Organization と Adopterで下位項目が一致する傾向が認められた。 Communication は,本研究の因子分析では融合する傾向が認められ,Funk らと本研究の因子構造は全く同じではなかった。 本研究における因子分析の。 本研究の結果から,日本語版 BARRIERS Scale の信頼性・妥当性が支持された。
  • -生理反応,苦痛,および諸要因の関連-
    佐々木 吉子, 二宮 彩子, 小泉 仁子, 小林 敏生, 根本 清次, 増田 敦子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_123-5_132
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,同一体位の長時間保持を課された場合の生体反応と,身体および心理的苦痛,およびこれらの相互関連性について明らかにすることであった。 13名の健康な女性を被験者として,120分間の仰臥位保持下での被験者の生理反応と苦痛の経時的変化を同時に測定し,さらにこれら結果と被験者の身体状況,気分状況 (POMS) の変化,および性格傾向 (MPI) との相互関連性について検討した。 その結果,生理反応のうち変化がみられたのは,背部皮膚温と皮膚血流量,および交感神経の緊張状況であった。 また,大半の被験者は,120分以内で強い苦痛を感じ,気分状況の悪化をみた。 さらに,外向性の高い人ほど緊張および不安感,疲労感が増強し,活気が喪失する傾向を認めた。 しかし,自律神経の緊張状況と苦痛の増強の変化パターンは相関しなかった。
  • -誤薬のロール・プレーイングのシナリオを用いて-
    風岡 たま代, 大塚 邦子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_133-5_143
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,医療現場の行為や場面の中に潜む誤薬の医療事故のリスクに関する看護学生の認識について検討することであった。 対象は,3年課程看護短期大学の3年次の学生100人であった。 方法は,誤薬のシナリオに盛り込まれた22個のリスクについて,そのリスクを発見した発見者数とそのリスクが事故の原因としてどの程度重要と考えたかという重要度の認識を検討した。 その結果,「処方箋が薬と一緒でない」,「意志疎通の欠如」,「新人・不十分な知識・技術」 の発見者数は少なかった。 リーダーとスタッフ間の 「説明不足」 と 「確認不足」 はスタッフ同士のそれよりも発見者数が少なかった。 「薬を準備した人が与薬しない」 の重要度は75人に低く認識されていた。 したがって,誤薬事故のリスクに関する学生の認識は,リーダーとスタッフ間の与薬依頼における説明不足と確認不足,臨床現場でも容認されているルール違反に対して低いことがわかった。
  • :TPNの衛生管理と手洗いを中心に
    土井 まつ子, 古野 真実子, 齊藤 麻子, 竹村 ひとみ, 近藤 陽子, 南條 利香, 小泉 のり子
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_145-5_154
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,TPN管理者延べ21名の衛生学的行動の観察とそれらの行動における汚染リスクの検討を行い,汚染リスクを高める TPN管理の問題と,汚染リスクを低減するための対策について検討した。 あわせて手洗い直後に調査対象者延べ18名の手指から菌を分離し,菌数との関係から手洗い方法の問題点についても検討した。 その結果,薬剤調製時には最小リスクの行為が92%で低リスクが8%を占めていたが,輸液ライン交換時には低リスクが24%に増加し,リスクの高い行為の割合が増していた。 手洗い実施率は,TPN 薬剤調製前100%,交換終了後から次の行動に移るまでの間は21%であった。 手洗い後の手掌の培養検査において,手洗い時間が短い例,手指消毒薬が適切に使用されていない例,手指の乾燥が不十分な例,あるいは手に傷がある例では,分離コロニー数が多く,S. epidermidisなどのCNSやP. aeruginosa,Baccilus sppが分離された。
  • 山田 紀代美, 西田 公昭
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_155-5_167
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,携帯電話を用いた電子メールのネットワーク化による介護者間のコミュニケーションが介護者のストレスに与える影響について検討を行うことを目的に,女性介護者12人に対して,携帯メール練習セッション (第1期間),携帯メール交換セッション (第2期間),携帯メール使用不可セッション (第3期間) を計画し,第2期間の直前,第3期間の直前,第3期間終了時に調査を行った。
     結果は以下のとおりであった。
    1. 介護者が発信した携帯メールは178件で,一人当たりの平均送信件数は14.9±8.1件であった。
    2. 介護者の携帯メールの有無と CFSI の変化を比較した結果,気力の減退特性以外の6特性は,実験前よりも携帯メール交信終了直後に低下し,さらに携帯メール使用不可期間終了時において,イライラの状態は有意 (P<0.05) に低下し,身体不調は低下の傾向が伺えた (P<0.1)。
    3. 携帯メールに対する評価は,「メールをもっと続けたいと思った」 が83%であった。
     以上から,携帯メールのネットワーク化は介護者のストレスの軽減に効果があることおよび介護者のサポート源としての可能性が示唆された。
  • -石鹸の泡立てによる石鹸成分の除去効果について-
    深田 美香, 宮脇 美保子, 高橋 弥生, 松田 明子, 南前 恵子, 内田 宏美
    2003 年 26 巻 5 号 p. 5_169-5_178
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は石鹸の泡立てが石鹸成分の除去効果に与える影響を実験的に明らかにすることを目的とした。 研究参加に同意の得られた19歳~28歳までの健康成人60名を対象とした。 0.8gの固形石鹸を削り,実験群はウォッシュクロスに付着後よく泡立てて,一方,対照群は泡立てないで使用した。 清拭部位は利き手前腕内側とし,皮膚表面 pH,皮膚表面温度ともに,清拭前,石鹸清拭直後,拭取1回目,拭取2回目,拭取3回目,拭取4回目,60分後の7回測定した。
     その結果,皮膚pHの変化パターンには差が認められなかった。 拭取り回数を比較した場合,石鹸を泡立てた場合は4回の拭取りで清拭前に戻っていたが,泡立てなかった場合は4回拭取り後も清拭前の pH に戻っていなかった。 石鹸を泡立てて使用することにより拭取り回数を少なくすることができ,皮膚への物理的刺激および石鹸成分のアルカリ刺激を最小限に押さえることが可能になる。
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