日本看護研究学会雑誌
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40 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 佐々木 美喜, 山本 由香
    2017 年40 巻1 号 p. 1_1-1_13
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,分娩期に産婦が環境に存在する情報をどのように抽出し活用しているかを明らかにすることである。研究デザインは,51件の文献の質的データを用いたメタ統合を用いた質的記述的研究である。結果,産婦による分娩環境の情報の抽出と活用には3つの大カテゴリー【自分の身体に起きていることを通して分娩進行を把握する】【物や空間との対話を通して分娩と向き合う】【人とのかかわりを通して快不快を知る】が見出された。本研究では,産婦が自身の内的感覚を通して得た情報を分娩進行に活用するとともに,周囲の人々からの働きかけや空間・物との接触面で生じる情報が産婦に多様な感覚を生みだして,分娩体験の意味づけに影響を与えていることが示された。分娩期に産婦が環境から抽出する情報は,安全で快適な分娩の実現に向けて重要な意味をもっていたことから,産婦の知覚と行為の循環が十分に働く環境を確保することの重要性が示唆された。
  • - 懐メロを用いた回想法による介入の評価 -
    奥田 淳, 橋本 顕子, 鈴木 佑典, 鳥塚 亜希, 上平 悦子, 軸丸 清子
    2017 年40 巻1 号 p. 1_15-1_23
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    【目的】地域在住高齢者を対象に懐メロを用いた回想法を行い,心理的効果を検討した。
    【方法】対象者は閉じこもり傾向にある高齢者18名とした。懐メロを用いた回想法の介入前後をHDS-R,MMSE,PGC,主観的健康感尺度,GDS-15,基本チェックリストを用い,Wilcoxon符号付順位和検定で分析を行った。
    【結果】HDS-Rや基本チェックリストの「閉じこもり」,PGC,PGCの第2因子「老いに対する態度」,主観的健康感尺度の下位項目「気分」・「経済状態」において,介入後に有意な改善が認められた。
    【結論】閉じこもり傾向にある高齢者に懐メロを用いた回想法を行うことで,認知機能や閉じこもり,幸福感,健康感の気分・経済状態に効果が認められた。回想法は週に1回間隔で実施・検証されている研究が多いが,月1回間隔で行うことでも,心理的効果が得られることが明らかになった。
  • 柴 裕子, 宮良 淳子
    2017 年40 巻1 号 p. 1_25-1_34
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    【目的】当事者がどのような思いで登校していた時期から不登校となったのか,その先どのような思いで不登校を続けていくのか,そのプロセスを明らかにすることを目的とする。
    【方法】不登校から再登校できた当事者6名を研究参加者とし,半構造的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。
    【結果】登校していた時期から不登校となる当事者の思いは,〈幼さから受ける傷〉〈トータル的な苛立ち〉〈身体が行けない〉という,学校での深い傷つきから始まる。当事者である【メジャーでない自分】は,【守られている感覚】と【認められたい感覚】とを揺らぎながら,普通に登校することへの【本線へのこだわり】を持ち続ける。【守られている感覚】が強いと,学校とは別の〈支線で行く〉思いを育てる。一方,【認められたい感覚】が強いと,【もう混じれない】思いをもち,不登校を続けるしかなくなる。
  • 内田 史江, 谷垣 靜子
    2017 年40 巻1 号 p. 1_35-1_43
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー
     本研究は,在宅療養がん患者の折り合いを支えるため,訪問看護師によって行われている看護支援の内容に着目し,よりよい看護支援方法を考察するための研究である。5名の看護師を対象としてフォーカス・グループ・インタビューを実施した。結果,在宅療養がん患者の折り合いを支える看護支援を説明する3個のコアカテゴリーが導き出された。それは,【自分らしい生き方を支える】支援を始点として,【がんとともに生きる生活を支える】支援と【支援環境の調整により在宅生活を支える】支援を相互に関連させるという構造が明らかとなった。在宅療養がん患者の折り合いを支えるには,【自分らしい生き方を支える】ことを根底に看護支援を行うことの重要性が示唆された。
  • 橋本 晴美, 吉田 久美子, 神田 清子
    2017 年40 巻1 号 p. 1_45-1_56
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,がん患者の呼吸困難感の概念特性を明らかにすることである。CINAHLと医中誌を用いた検索とハンドサーチにより選定した35文献を分析対象とし,Walker & Avantの概念分析の手法によって対象文献から概念の属性,先行要件,帰結を抽出した。分析の結果,【多因子間の相互作用により発生する感覚】【日常生活活動に負の影響がある】【スピリチュアリティに負の影響がある】等の9つの属性,【がんという疾患・治療ゆえの特性】【身体における生理的・機能的な変化】等の5つの先行要件,【人間らしさを保つことへの脅威】【負の情緒状態の増強】等の3つの帰結が抽出された。本概念は「多因子間の相互作用により発生する呼吸に関連した不快あるいは苦痛のこと,また,それに伴う制御不能な認知および主観的評価と,身体・心理・社会・スピリチュアリティの側面にみられる反応を含むがん患者の症状体験のこと」と定義された。
  • ― 患者の意思決定の尊重と学習援助型の患者教育の視座から ―
    二井矢 清香
    2017 年40 巻1 号 p. 1_57-1_66
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー
    【目的】1980年代から現在までの患者教育に注目し,患者主体の患者教育がどのように生み出されてきたのかを歴史学的な視点から明らかにした。
    【方法】Rankeの歴史学研究の手法を踏襲した文献研究である。資料を一次資料と二次資料に分類し,①患者の意思決定の尊重,②学習援助型の患者教育という2つの視点から分析した。
    【結果】1980年代から人権意識の高まりに伴い,患者の意思決定の尊重が問われ看護職者による「伝える」や「教える」ことが行われた。また,セルフケアの影響によって「援助」の視点が重視され,学習援助型の患者教育に関心がむけられた。1990~2000年代は,方法論の理論的支柱としてエンパワメントや自己効力感が注目され,患者-看護職者のかかわり方が重視された。
    【結論】1980年代からの看護における患者教育の変遷を概観することで,患者教育は,専門性を高めてきたことが明らかなった。
  • 栗生 愛弓, 山田 和子, 森岡 郁晴
    2017 年40 巻1 号 p. 1_67-1_77
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー
     本調査は訪問看護師が,がんの療養者・家族に提供しているケアとそれに関連する要因を明らかにし,ケアの充実について検討する基礎資料を得ることを目的とした。対象は61か所の訪問看護師339名で,無記名自記式質問紙法で実施し,有効回答は202名(有効回答率59.6%)であった。ケア内容は,松村の「在宅ターミナルにおいて訪問看護師に必要な実践能力」を用い「ケア提供得点」とした。ケア提供得点の中央値は50点で,意向調整因子が最も高く,他職種調整因子が最も低かった。ケア提供得点に関連する要因として,普段行っているケアの満足度,家族ケアの知識,職場内で療養者・家族のケアについて話し合う機会,職位,ケアを提供した療養者・家族からのねぎらいの言葉の5項目であった。充実したケアを提供するためには,満足できるケアを提供すること,家族ケアの知識を習得すること,ねぎらいの言葉を伝えること,話し合う機会を設けることの重要性が示唆された。
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