日本看護研究学会雑誌
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45 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 岡 美智代, 石川 純子, 上星 浩子, 松本 光寛, 高橋 さつき, 伊藤 美鈴
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_145-2_158
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/12
    ジャーナル フリー

    テーマティック分析は,質的研究方法の中でも多く使われているが,わが国ではほとんど紹介されていない。本稿の目的は,欧米で多く使われているBraunとClarkeによる再帰的テーマティック分析を中心に,その概要やデータの分析プロセスなどについて紹介することである。Braun & Clarkeは,テーマティック分析を3つのタイプに分けており,両研究者によるものは再帰的テーマティック分析と名付けている。そして,再帰的テーマティック分析とはデータ全体に含まれる意味のパターン(テーマ)を体系的に特定し,整理し,洞察するための方法であり,あらゆるリサーチクエスチョンに対処できる方法とされている。再帰的テーマティック分析による分析プロセスは,6フェーズで構成されており,チェックリストも示されている。今後は,再帰的テーマティック分析が変更されることも予測されるが,本法が質的事象の解明において有用であることには変わりないといえよう。

  • 法橋 尚宏, 太田 浩子, 林 綺婷, 和辻 雄仁
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_159-2_175
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/12
    ジャーナル フリー

    エスノグラフィックリサーチは,“エスノグラフィックインタビューと参加観察を主とするフィールドワーク(現地調査)によって,イーミックとエティックな視点から対象の生活世界で起きている現象や文化を記述する方法論”である。これは方法のトライアンギュレーションであり,フォーマルインタビュー,インフォーマルインタビュー,参加観察,質問紙調査,既存の書籍・文献・ウェブサイト資料の収集,写真撮影,映像撮影などを行う。データ収集と分析を繰り返しながら,問いや仮説を精緻化する。信用可能性,確認可能性,脈絡に応じた意味,反復的パターン形成,飽和,転用可能性などを質的評価基準として,信憑性を保証する。すべてのデータは定性化してフィールドノーツに記述し,コーディングを行い,コードの類似性と相違性の観点からカテゴリー化した後,テーマにそってストーリー化して報告書にまとめる。

  • 今井 多樹子, 川畑 貴寛
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_177-2_199
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/12
    ジャーナル フリー

    本稿はText mining(TM)の概要,TMを援用した看護研究(学術論文)の動向,TMを援用した看護研究の主な分析方法を述べた。医学中央雑誌Webにより,キーワード「テキストマイニング」による主題検索を行った結果,学術論文57件を分析対象とした。TMを援用した論文は,大学に所属する研究者による【看護教育】に関する調査研究が多い傾向にあった。データ収集源は,質問紙(自由記述)が最も多かったが,サンプル数からTMが得意とする大量のデータ処理とはいえない傾向にあった。最も援用されたTMソフトウェアは,KH Coderであった。TMを援用した主な分析方法は,言及頻度分析,言葉同士の関係,多変量解析(主成分分析,クラスター分析)であり,TMの中心的な分析手法であった。特に,多変量解析は,構成概念化の一助として行われていた。【看護教育】【看護管理】関連の研究は,TMとの親和性が高いことが考えられた。

  • 荒木田 美香子, 豊増 佳子, 仲野 宏子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_201-2_212
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/12
    ジャーナル フリー

    目的:本論文はコンピュータ支援質的データ分析ソフトウエア(CAQDAS)の使用状況と,使用経験のある研究者の経験を読者に提供することを目的とした。方法:CAQDASを使用した質的研究を医中誌WebとJ-STAGEから抽出し,発行年や研究分野を分析した。さらに,CAQDASの使用年数が異なる2名の研究者が体験談を報告した。結果:2010〜2021年に発行された質的研究からCAQDASを使用した論文を95件抽出した。医学・保健学,教育学,看護学の各15の研究論文がCAQDASを使用しており,「Nvivo」が最も多く使用されていた。2名の研究者は,分析プロセスを記録して保存する機能により解析作業が向上すること,効率的な再分析が可能になり結果の信頼性が向上したと報告した。結論:CAQDASは様々な研究分野で使用されており,質的研究の分析作業の効率と信頼性の向上が期待される。

  • 坂井 真愛, 伊東 美佐江, 山本 加奈子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_215-2_229
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/08
    ジャーナル フリー

    目的:療養場所の移行を迫られた高齢がん患者の家族が,家で自分が看る意味を見出していくプロセスを明らかにする。方法:同意の得られた13名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。結果:本プロセスは,家族の【なんとなくの看るづもり】が,医師からの【療養場所の移行宣告】を受け,〈家で自分が看る思いの巡らせ〉に変化し,【サポート家族の後押し】と〈プロスタッフの周り固め〉により,【看るぞスイッチオン】に至った。【看るぞスイッチオン】した家族は,〈頑張りすぎないペースを見出(す)〉していき,〈サポート家族の後ろ盾〉や〈プロスタッフの伴走〉により,最終的に〈難儀の中の幸せ感〉に至った。すべての変化には〈家族の絆〉が基盤にあった。結論:看護師は,家で自分が看る思いを巡らせる家族の葛藤を理解し,専門職者間で共有し絶え間ない安心感を提供していくことが必要である。

  • 後藤 喜広, 伊藤 桂子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_231-2_244
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/06
    ジャーナル フリー

    目的:総合病院で働く男性看護師が看護師からのセクシュアル・ハラスメント(以下,SH)被害を受けたのち,働き方を構築するプロセスを明らかにする。方法:SH被害経験のある男性看護師14名に対して半構造化面接を行った。得られたデータを逐語録に起こし修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手順で分析を行った。結果:分析の結果,21の概念が抽出された。男性看護師は自身の経験から,性被害・加害の両義的な当事者性がわかると,強者であらねばならない女性看護師を理解するに至り,職場でSHが発生する意味を捉えられるようになっていった。結論:男性看護師は加害者との社会的相互作用によって対処行動が培われたり,職場内の力関係を把握したりするようになっていった。SHを経験した男性看護師が働き方を構築するプロセスとは,女性優位の職場環境において権力構造を理解し自己の成長へと昇華する防衛機制であった。

  • 後藤 喜広
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_245-2_259
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー

    目的:総合病院に勤務する男性看護師が経験するセクシュアル・ハラスメント(以下SHと略す)の内容の類型,およびSHに対する対処行動について類型,分析し,その特徴を明らかにする。方法:A団体に所属する総合病院で働く男性看護師9名を対象に,半構造化面接で得られたデータを質的に分析した。結果:男性看護師が経験するSHの内容は【看護業務が発生に起因する】【男性性が意識されて発動する】【身体が軽々に扱われる】【経過のなかで加害者が複数化する】の4つのカテゴリー,SHに対する対処行動は,【個人のみで行う対処行動】【他者が介在する対処行動】の2つのカテゴリーに分類された。結論:看護師の業務の特殊性および権力構造を背景としたSHが発生していたことから,看護の職場環境においては,性別および被害者,加害者という一義的な立場ではなく,双方的,多面的な立場の理解が得られるような倫理教育の必要性が示唆された。

  • 川村 晃右, 松本 賢哉, 森岡 郁晴
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_261-2_269
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,女子看護系大学生のBroad Autism Phenotype(BAP)の状況とコミュニケーション・スキル,看護実践能力との関連を明らかにすることである。方法:看護系大学4年生の女子199名に質問紙調査を行った(有効回答率78.0%)。内容は属性,BAPQ-J,ENDCOREs,看護実践力尺度とした。BAPQ-Jの得点を用いて階層クラスター分析を行い,群の判別にはROC曲線を用いた。群別に各尺度の得点を比較した。結果:対象者は,正常型,境界型,BAP傾向の高い型に,さらにBAP傾向の高い型は,打ち解けなさの低い型と高い型に区分された。BAP傾向が高い型はENDCOREsが,打ち解けなさの高い型は看護実践力尺度が有意に低かった。結論:BAP傾向が高い学生はコミュニケーション・スキルが低く,打ち解けなさの高い学生は看護実践能力の修得も困難であるため支援が重要となる。

  • 濱谷 雅子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_271-2_281
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/17
    ジャーナル フリー

    目的:足病変のケアのために訪問した看護師が,ケアに意欲的でない療養者とどのように関わり,支援しているのかを明らかにした。方法:訪問看護経験5年以上の看護師9名のインタビューデータを,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。結果:訪問看護師は,療養者の活力を高めることからスタートし,療養者らしい生活を脅かさないよう注意しながら,ケアのメリットを体験させる,具体的なセルフケアの提案,変化の契機をつくる・いかすというアプローチで,療養者を支援している。看護師は,療養者本人への直接的なアプローチだけでなく,療養者を取り巻く支援者が療養者に対して関心をもてる環境を整えることで,療養者の自身への関心を高めようとしている。結論:環境に変化を加えてみるというアプローチは,療養者をその生活ごと理解し,多機関・多職種と協働してケアを提供している訪問看護師だからこそできる支援であると考える。

  • 中野 沙織, 岩佐 幸恵, 岸田 佐智
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_283-2_296
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/08
    ジャーナル フリー

    目的:ベテラン看護師が獲得した働き続ける上での「心の強さ」の構造を明らかにする。方法:勤続年数20年以上の看護師9名に半構造化面接を行い,データを木下のM-GTAで分析した。結果:「心の強さ」には,周りに追いつくための努力ができる力,失敗を繰り返さないように努力ができる力,ポジティブな思考ができる力,自分の気持ちを調整する力,自分に合った方法で心身の健康管理ができる力,良い人間関係を構築する力,看護師としての責任を果たそうとする力,より良い看護を目指し自分ができる看護を探求する力,自分に合う働き方を選択する力があった。彼らは就業前より周りに追いつくための努力ができる力を獲得しており,その力は他の全ての「心の強さ」の獲得に影響し,職業を継続する中で維持・強化されていた。結論:看護師の職業継続には,周りに追いつくための努力ができる力を維持・強化する支援的な職場環境が重要であると示唆された。

  • ─リスク項目の内容妥当性の検討─
    森 礼子, 柳澤 理子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_297-2_309
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/17
    ジャーナル フリー

    目的:結核地域DOTSフィリピン出生結核患者用リスクアセスメント票を開発する。方法:フィリピン出生結核患者用リスクアセスメント票の原案を作成し,323か所の保健所保健師に調査紙を郵送した。その結果を参考に結核専門家4名で原案について検討した。結果:調査結果は保健師126名が対応したフィリピン出生結核患者166名(有効回答数137名)に関する回答であった。服薬完遂者127名(92.7%),中断者10名(7.3%)で,原案32リスク項目をχ2検定し,有意差があったのは5項目だった。専門家会議では,保健師が原案のリスク項目でアセスメントした結果を参考に各リスク項目の評価検討を行った結果,原案に1項目が追加された。結論:専門家会議によって8分類33項目で構成するフィリピン出生結核患者用リスクアセスメント票の内容妥当性が検証された。

  • 佐藤 美紀子, 百田 武司
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_311-2_325
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/06
    ジャーナル フリー

    目的:脳卒中後のアパシーに関する研究の動向,実態,予防・改善が期待できる介入方法を明らかにした。方法:PubMed,医学中央雑誌から抽出した75文献を分類,要約,記述した。結果:内容は「レビュー」9件,「発症メカニズム」14件,「治療」14件,「評価スケール」7件,「実態」12件,「関連要因」15件,「メタアナリシス」2件,「介入研究」2件に分類された。近年,質の高い研究が行われつつあったが,実態と介入方法に関する科学的根拠は十分に構築されていなかった。アパシー発症率は4割弱,発症には「脳卒中発症回数」「うつ」「認知機能障害」が関連した。脳病変部位,脳卒中病型,年齢,脳卒中発症後の時間,臨床的アウトカムの重症度との関連については知見が一致していなかった。予防・改善が期待できる介入方法として,脳卒中再発予防,認知行動療法,問題解決プロセスの促進,行動活性化が見出された。結論:実態解明,介入方法の確立が求められる。

  • 宮良 淳子, 柴 裕子, 市江 和子
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_327-2_338
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー

    目的:不登校の子どもがフリースクールを経て再登校を決めていく心理的プロセスを明らかにする。方法:不登校経験者6名を対象に半構成的面接を実施し,M-GTAで分析した。結果:不登校の子どもは【家庭に居場所が存在】するなかで【今のままではいけない】と感じ,自信を取り戻すと不登校の状況から【フリースクールへ踏みだす覚悟】を決めていた。通いはじめると【フリースクールに居場所がない】と思い,【学校に通う同級生と自分との違い】を感じ【気になる周囲の視線】があったが【家族関係の変化】が生じていた。【小さなステップをのぼる実感】をもち,【再登校や進学への後押し】を得て【自分にとっての不登校の意味】を模索しながら【再登校を決める】ことをしていた。結論:子どもが少しずつ経験を重ね自信をつけていく状況を認め,人間的成長・発達の機会となるよう支援が重要と考えられる。

  • ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─
    山中 政子, 鈴木 久美
    2022 年 45 巻 2 号 p. 2_339-2_348
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/17
    ジャーナル フリー

    目的:がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査を行い,がん拠点病院 と一般病院の差異を明らかにする。方法:外来看護師に対するインターネットによるアンケート調査。結果:回答者の所属はがん拠点病院145名,一般病院236名。オピオイド鎮痛薬初回導入の頻度(p<.001),処方医師からの服薬指導依頼の頻度(p<.001),横断的活動を行う看護師の数(p<.001)はがん拠点病院と一般病院で有意差があった。がん疼痛のある外来患者への看護ケアは全ての項目で有意差があった。結論:オピオイド鎮痛薬を初回導入された外来患者への服薬指導やがん疼痛看護ケアは,がん拠点病院が一般病院より実施している可能性が示された。外来でのがん疼痛看護ケアにおいては,がん疼痛看護ケアにおける困り事を相談できる支援と教育体制の整備,多職種連携の整備が課題と考える。

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