日本看護研究学会雑誌
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45 巻, 4 号
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  • 小野寺 美希子
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_705-4_724
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:本研究はCOVID-19病棟での職務経験を有する看護師を対象に,仕事経験を通じた学習プロセスを明らかにすることにある。方法:ある病院に所属する看護師17名にインタビュー調査を行い,得られたデータはGTAの手法に基づき分析した。結果:「感染リスクとの対峙」経験は,「感染予防への価値認識」のプロフェッショナリズムの醸成を促していた。「部署間境界を越えた協働」と「ケアリングの模索」経験は相互作用しながら「職業へのコミットメント」と「他者・COVID病棟へのコミットメント」のプロフェッショナリズム醸成を促していた。「感染回避力」「協働する能力」「ケアリング能力」は「職業・職業集団への一体化意識」「利他的信念」「自主的行動と協働への価値認識」のプロフェッショナリズムの影響を受けて高められていた。結論:本研究ではCOVID-19に関する仕事経験を通した看護師の段階的学習プロセスを明らかにした。

  • 渡邊 実香, 高橋 由紀, 大橋 幸美
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_725-4_734
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:COVID-19感染拡大下,医療従事者が捉えた生殖医療機関の診療体制の変化と高齢不妊患者の治療状況および通院時の様子を明らかにする。方法:生殖医療機関に勤務する医療従事者への質問紙調査結果を量的・質的に解析した。結果:対象の90.5%が診療体制に変化があったと回答した。〔感染対策のための夫・家族の立ち入り制限〕をしている割合は67.9%の一方,〔予約数を制限〕割合は12.2%だった。診療体制の変化に【診療・説明会のオンライン化の浸透】が挙がっていた。高齢不妊患者の治療状況や通院時の様子は,「変わらない」と捉える医療従事者の割合が高かったが,自由記述より,【感染への不安と葛藤しながらも治療は継続】している様相が示された。結論:感染対策を講じる一方で,患者への直接的支援機会が制限され,患者の不安が緩和されにくい状況が推察できた。高齢不妊患者への支援策に,ICTなどの活用に期待が寄せられる。

  • 上妻 尚子, 田口 太郎, 樋口 マキヱ
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_737-4_747
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/03
    ジャーナル フリー

    目的:鍼治療は自律神経活動を調整し,更年期の女性が自覚する症状を緩和する効果があるかを検証した。方法:48名の更年期女性を,鍼治療の有無とほてりなどの症状の程度に応じて4群に分類した。実験中は看護師が見守りながら,鍼治療は7か所の経穴に10分間,1回/週の頻度で4回実施し,偽治療は同部位に鍼管のみで行った。24時間測定した自律神経活動を,心拍変動パワースペクトル解析法にて分析し,ほてり・発汗・冷えの症状は,Visual Analog Scale(VAS)で評価した。結果:実験─中等症群の夜間の副交感神経活動は上昇し,交感神経活動は低下した。また,ほてりの症状は4回の治療後に有意に軽減された。一方,中程度の発汗や冷えは,鍼治療の有無にかかわらず4回の治療後に有意に緩和された。結論:鍼治療と看護における「見守り」は,夜間の自律神経活動を調整し,ほてり・発汗・冷えの更年期症状を緩和することが示唆された。

  • ─Hybrid法による理論構築の試み─
    髙橋 智子
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_749-4_760
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:急性期看護における日常生活ケアにかかわる概念間の関係について示し,急性期の日常生活ケアモデルを構築する。方法:先行研究の概念をもとに,Hybrid法による理論構築法を用いモデル構築した。生活を捉える視点を図式化して仮モデルを作成した後,患者の状況・日常生活ケアの実践内容・日常生活ケアがもたらす反応や効果の関係性についてフィールドワーク事例を用いて説明し,結果を統合してモデル構築した。結果:急性期看護における日常生活ケアモデルは,生命活動・生活行動・生活様式の3層構造で示され,看護師はこの重層的視点で〈急性期の患者の状況〉を捉え,いくつかの【日常生活ケアのアート】を組み合わせて実践し,《その人の全体性の回復》を導くという関係性が示された。結論:本モデルは急性期看護における日常生活ケアを重層構造で示し,ケアの効果との関係性を示したことにより日常生活ケアの価値を示すものとなった。

  • 大塩 佳名子, 流郷 千幸
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_761-4_770
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:夫婦を対象にし,夫婦関係満足度が児の泣きに対する育児困難感へ影響を与えるかを明らかにすることである。方法:A県内で生後3〜6か月の児をもつ父親および母親を対象とし,無記名自記式質問紙を配布した。質問紙は基本属性,夫婦関係満足度,児の泣きに対する育児困難感,対児感情(接近感情,回避感情)の3つを調査項目とし,重回帰分析,媒介分析を行った。結果:夫婦ともに回答のあった100人(父親50人,母親50人)から有効回答を得た。父親は夫婦関係満足度が父親の接近感情を媒介し,児の泣きに対する育児困難感に影響を与えていた。母親の児の泣きに対する育児困難感に影響を与えていたのは回避感情が最も強く,次いで接近感情,夫婦関係満足度であった。結論:父親・母親ともに夫婦関係満足度が児の泣きに対する育児困難に影響を与えていたことから,夫婦関係満足度を高めることで児の泣きに対する育児困難を軽減させることが示唆された。

  • ─看護管理者の認識による実態調査から─
    西田 千夏, 合田 友美
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_771-4_781
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:発達障害特性が感じられる看護師への合理的配慮を含めた現任教育に関する実態調査から,その現状と課題を明らかにする。方法:看護師長等の看護管理者へ,無記名自記式質問紙による調査を実施した。調査内容は,発達障害の診断を受けていることを申告,または「発達障害特性があるのではないか」と看護管理者が感じる看護師の特性や教育上の配慮,合理的配慮に関する考え,等である。結果:看護管理者の認識する課題には,コミュニケーションの取りづらさ,本人が特性を自覚する必要性,他の看護スタッフとの関係,および合理的配慮の周知が存在した。結論:合理的配慮を申告しやすいシステム作りと,感情に焦点を当てすぎない面接により本人の自覚を促すことが必要である。発達障害特性について学びを深め,他のスタッフと一緒に解決方法を探り,到達目標の具体化と業務・環境調整の重要性が示唆された。

  • 竹内 千夏, 吉本 知恵
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_783-4_797
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:急性期病院における看護師の認知症高齢者に対する看護実践の実態と関連要因を明らかにする。方法:急性期病院看護師614名に無記名自記式質問紙調査を行い,関連要因を独立変数,SSNP-PCCの各下位尺度を従属変数とする強制投入法による重回帰分析を行った。結果:回収数471名(回収率76.7%)。下位尺度Ⅰ・Ⅱは平均値4.3以下,下位尺度Ⅲ・Ⅳはそれより高かった。困難を感じた時の認知症看護についてのカンファレンスの実施は全ての下位尺度と関連があった。マンパワーの有無,認知症に関する院外研修参加回数,看護学実習における認知症高齢者の受け持ち経験の有無,治療と認知症高齢者を尊重した看護との葛藤に関する困難感に関連を認めた。結論:急性期病院における認知症看護向上のため職場環境の整備,看護基礎教育における認知症高齢者との関わりの経験促進の重要性が示唆された。

  • 高田 望
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_799-4_807
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/03
    ジャーナル フリー

    目的:PNSが看護師の自律性および看護実践能力に与える影響を明らかにすること。方法:PNS実施・未実施施設の各3施設で一般病棟に勤務する経験年数3年以下の看護師を対象に質問紙調査を実施した。質問項目は,基本属性,PNS実施の有無,自律性,看護実践能力だった。PNSしか経験のない看護師(PNS群)192名とPNSの経験がない看護師(非PNS群)121名の自律性および看護実践能力の得点を比較した。結果:自律性では,自律的な臨床判断,働き方の裁量の因子でPNS群が有意に低く,業務の独立性では2群間の差はなかった。自律的な臨床判断ではPNS群のスコアの分散が非PNS群と比べて有意に大きく,得点のばらつきが大きかった。看護実践能力は2群間に差はなかった。結論:PNSが看護師の自律性の育成を阻害する可能性があること,自律性の低い看護師がPNS実施施設を選ぶ可能性があることが示唆された。

  • 部谷 知佐恵, 岡田 摩理, 泊 祐子, 赤羽根 章子, 遠渡 絹代, 市川 百香里, 叶谷 由佳, 濵田 裕子
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_809-4_821
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/03
    ジャーナル フリー

    目的:全国の小児の訪問看護を行う訪問看護ステーション(以下,訪問St.)において診療報酬を算定できないサービスの実態と算定の必要があると考えるサービスについて明らかにする。方法:全国の小児利用者のいる訪問St.に診療報酬を算定できないサービスの実施状況と必要性に関する質問紙調査を行い,455か所の訪問St.の記述統計および自由記述の内容分析を行った。結果:診療報酬を算定できないサービスは78.7%の訪問St.で実施されており,実施による小児のメリットは【状態が変化しやすい小児の体調悪化のリスク回避ができる】【状況の変化に合わせて小児の成長発達が促進できる】【医療的ケア児と家族の生活が安定する】【小児と家族の状況に応じた支援体制が構築できる】があった。結論:多くの訪問St.が,診療報酬の算定ができなくても小児にとってのメリットがあることでサービスを提供しており,算定の必要性を感じていた。

  • ~後期高齢者に対する効果および妥当性の検証~
    姫野 稔子, 孫田 千恵
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_823-4_832
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,開発したフットケアプログラムの効果と妥当性を検証することである。方法:施設スタッフ3名に施設利用の後期高齢者を対象にフットケアプログラムの指導的介入を依頼した。結果:対象は男性5名,女性9名の計14名であり,2名は要支援1,3名は要支援2であった。介入前後の比較では,足部の「冷感」「足がつる」等の循環に関連する項目が,皮膚の状態では胼胝や角質化,皮膚剥離が消失した者がいた。足底部の触圧覚は1か所を除き有意に閾値が低下した(p<.05)。皮膚表面温度は両足とも低下した。開眼片足立ち時間 (p<.05)とFunctional Reach Testは有意に延長した(p<.01)。10m最大速歩行(p<.05)とTime Up & Go Testも有意に短縮し(p<.01),足趾間把持力は両足とも有意に向上した(p<.05)。結論:多職種の介入においても介護予防の第一義的目標である立位・歩行能力が向上し,プログラムの妥当性が示唆された。

  • ─結核専門家パネルでの検証─
    森 礼子, 柳澤 理子
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_833-4_840
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:地域DOTS個別患者支援計画で用いるリスクアセスメント票の標準化版を作成する。方法:東海4県の各保健所の結核患者の服薬中断リスクアセスメント結果の統計分析(対象者470名)を基に,結核専門家パネルでリスクアセスメント票を検討した。結果:各保健所共通の15リスク項目のうち,有意差のあった3項目「副作用の出現あり」「副作用の理解がない」「治療中断歴あり」に2点,その他に1点の重みづけ配点をした。先行文献より「不規則な生活」「外国人」「再発患者」,属性で有意差のあった「潜在性結核」もリスク項目に加えた。評価点区分は6点以上,3〜5点とし,A〜Cランクの分類は面接での裁量点を適宜加算して判断するとした。計19リスク項目で構成されたリスクアセスメント票が作成された。結論:重みづけ配点したリスク項目は服薬中断リスクが高く,DOTSにおいて特に留意した面接とアセスメントが必要である。

  • 泊 祐子, 赤羽根 章子, 岡田 摩理, 部谷 知佐恵, 遠渡 絹代, 市川 百香里, 濵田 裕子, 叶谷 由佳
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_841-4_853
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:小児の利用者のいる訪問看護ステーション(以下,訪問看護St.)において属性と他施設・多職種との連携困難,診療報酬が算定できないサービスの実施状況の地域差を明らかにする。方法:無作為に抽出した指定小児慢性特定疾病訪問看護St.に質問紙調査を行った。結果:回収した455部を,都市部(31.4%),中間部(31.4%),郡部(36.3%)の3群で比較した。都市部と比べて,郡部では訪問距離「片道15km以上」が61.8%と多く,小児利用者数は4.8±7.0人と少なかった。医療的ケア児数には有意差がなかった。他施設・多職種連携困難は,「退院調整会議での連携に困難を感じる」が都市部より郡部が有意に多かった。また,診療報酬が算定できないサービスの実施は「受診時の訪問看護師の同席」が都市部より郡部が有意に多かった。結論:どの地域でも訪問看護St.が機能しやすい仕組づくりの必要性が確認された。

  • 池田 智
    2022 年 45 巻 4 号 p. 4_855-4_868
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:新卒看護師のSOC,職業性ストレス,組織風土,アイデンティティおよび精神健康度を調査し,精神健康度の関連要因を明らかにする。またSOCに関連する汎抵抗資源を明らかにする。方法:105名のSOC-29,アイデンティティ尺度,JCQ-22,OCS-12,GHQ-12を,無記名式の調査用紙を用いて調査した。GHQ-12とSOC-29の各下位尺度を従属変数とした階層的重回帰分析を実施した。結果:精神健康度にはSOCが最も強く関連していた。SOCの因子である把握可能感にはアイデンティティの基礎と組織環境性,処理可能感にはアイデンティティの基礎とアイデンティティの確立,有意味感にはアイデンティティの基礎,アイデンティティの確立が関連していた。結論:新卒看護師のメンタルヘルス対策としてはSOCを高めることが重要で,組織環境性の高い組織風土がSOCの向上に関連することが示唆された。

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