日本看護研究学会雑誌
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39 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ─ 多職種チームの構成員およびチームプロセスの検討 ─
    田中 克恵, 加藤 真由美
    2016 年39 巻5 号 p. 5_1-5_14
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    目的:特別養護老人ホームの終末期ケアにおける「よりよいケア」に影響する多職種チームの構成員およびチームプロセスの要因を明らかにする。
    方法:全国の看取りを実施している特別養護老人ホームを対象に,「よりよいケア」および「心残りケア」1事例ずつにおけるチームケアに関する無記名自記式質問紙調査を行い,「よりよいケア」の影響要因の分析に多重ロジスティック回帰分析を用いた。
    結果:看取りに取り組む特別養護老人ホームの終末期ケアにおける「よりよいケア」の影響要因として5項目あった。プラスの要因は事例対象者の年齢,コアメンバーとして配置医師,終末期(看取り)個別計画の作成,職種・職員間の連携・協働の4項目であり,マイナスの要因は実施した処置の浣腸であった。
    結論:とくに職種・職員間の連携・協働および終末期(看取り)個別計画の作成に取り組み,コアメンバーとして配置医師が参加することで,よりよい終末期ケアになる可能性が示唆された。
  • 新井 惠津子, 當目 雅代
    2016 年39 巻5 号 p. 5_15-5_27
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,リンパ浮腫と診断された患者の「リンパ浮腫患者用自己管理スキル尺度(LESMS尺度)」の開発と,信頼性と妥当性の検討を目的とする。
    方法:LESMS尺度の質問項目は,2001年~2011年のリンパ浮腫患者の看護に関する原著論文と書籍より抽出した。そして,内容妥当性が確認された36項目の「LESMS尺度試作版」を用い,質問紙調査を実施した。対象者は研究の同意を得た284名であった。
    結果:探索的因子分析と検証的因子分析の結果,LESMS尺度は『リンパ浮腫の自己管理スキル』を高次因子とした16項目4因子構造モデルで,妥当な適合度が確認された。また,LESMS尺度のCronbach’s α 係数は .858で,内的一貫性が確認された。さらに,LESMS尺度の妥当性を確認した。
    結論:LESMS尺度の信頼性と妥当性は確認され,外来のリンパ浮腫患者の自己管理スキル評価尺度として活用できる。
  • ─ 共感疲労の視点から ─
    柴田 真紀
    2016 年39 巻5 号 p. 5_29-5_41
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    【目的】複数の精神科治療施設に勤務する看護師への半構成的インタビューを通して,精神科臨床において患者の語りを聴く看護師の感情体験なかでも共感疲労のありようについて明らかにし,看護師が患者の語りを聴くかかわりをより積極的に展開するには何が必要かについて考察する。
    【方法】異なる精神科病院に勤務する8名の看護師に半構成的インタビューを行い,質的記述的に分析した。
    【結果及び考察】患者の傷つき体験にまつわる語りに耳を傾けようとする看護師は,罪悪感,不安,恐怖,怒り,疲労感などの苦痛な感情を体験し,共感疲労が生じていた。さらに,語りを抑制しようとする病棟文化が,その出来事を同僚に語ることを妨げていた。看護師の感情体験を安心して語り合える病棟文化を醸成することが,患者との語りを促進するだけでなく,看護師のメンタルヘルスにも重要である。
  • 藤田 君支, 牧本 清子
    2016 年39 巻5 号 p. 5_43-5_50
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は人工股関節全置換術患者が選ぶ生活の重要な領域とその満足度について,術前と術後6週・6か月の変化と性・年齢による特徴を明らかにし,関節疾患尺度との関連を調査する。
    方法:手術予定者に自記式質問紙で重要な5領域とその満足度,関節疾患尺度(WOMAC,AIMS 2)を手術前後で調査した。分析方法は重要な領域と満足度を時期・属性別に比較し,尺度の関連は単相関を行った。
    結果:3回の調査に回答した434名を分析対象とした(有効回答率77.9%)。重要な領域は,術前は「自分の健康」「歩容」が多かったが,術後は「家事」「社交」が増え,属性別では,女性は「家事」,男性は「仕事」,高齢者は「ADLの自立」が多かった。各領域の満足度は術後に改善し,関節疾患尺度とも有意な関連を示した。
    結論:患者が重視する領域の特徴や時期による変化が示され,個人のニーズに応じた看護支援への示唆が得られた。
  • ─ 医師,訪問看護師,ケアマネジャー,ホームヘルパーのアンケート結果より ─
    近藤 由香, 久保川 真由美
    2016 年39 巻5 号 p. 5_51-5_64
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
     研究の目的は,在宅療養中の終末期非がん高齢者にかかわる4専門職種のターミナルケア態度とスピリチュアルケア実施頻度を明らかにすることである。在宅で非がん終末期の高齢者ケアを実施している2都県の在宅療養支援診療所医師,訪問看護師,ケアマネジャー,ホームヘルパーの4専門職に対してアンケート調査を実施した。295名の分析結果,訪問看護師は,ターミナルケア態度(FATCOD-B-J)が高得点であり,因子Ⅰ「ケアの前向きさ」において他の職種間との間に有意差がみられた[医師(p< .01),ケアマネジャー(p< .001),ホームヘルパー(p< .001)]。スピリチュアルケア実施頻度でも半数以上の項目で訪問看護師の得点が高かった。「希望を与える」「死の受容・人生の統合」は,全職種で低値であった。終末期非がん高齢者ケアにおける訪問看護師の役割は大きいこと,非がん高齢者終末期ケアの充実の必要性が示唆された。
  • 小川 朋子, 林 智子, 井村 香積
    2016 年39 巻5 号 p. 5_65-5_74
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,指導看護師が「成長が遅れている」ととらえた看護師の特徴と,行われている教育・支援を明らかにすることを目的として,指導看護師10名に対して半構造化インタビューを行った。その結果から,教育に携わる看護師は【A.学習の積み上げが困難】【B.看護実践に必要なスキルの不足】【C.安全性の欠如】【D.患者・職員との関係形成困難】【E.精神的脆弱さ】【F.看護職員としての自覚と責任ある行動の不足】がみられることを,「成長の遅れ」ととらえていることが明らかとなった。これらの特徴に対し指導看護師は,【①実践での指導】【②学習支援】【③対象理解と対象に合わせた指導】【④社会性の促進】【⑤主体性の促進】を「成長が遅れている看護師」本人に対して行うとともに,【⑥安全性の確保】【⑦環境の改善・調整】という支援で,勤務体制や職場の従来のやり方,自分たちの考え方などを変える取り組みも行っていた。
  • 服部 由佳, 小幡 光子, 磯和 勅子
    2016 年39 巻5 号 p. 5_75-5_83
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
     周手術期実習中の学生のストレッサー,ストレス反応の程度,情動知能のストレス反応への影響を明らかにすることを目的とし,周手術期患者を受け持っている学生205名に自記式質問紙調査を実施した。ストレス反応はVAS,STAI,情動知能はEQSで測定した。情動知能のストレス反応への影響はSTAIを従属変数,EQS,個人要因,状況要因を説明変数とした重回帰分析で解析した。結果,高い頻度で認知していたストレッサーは「記録物の多さ」「朝が早くつらい実習」「教員の評価」でSTAIの平均得点は高かった。情動知能のストレス反応への影響として,実習中種々のストレッサーによりストレス反応が強められているなかでも状況対応および状況コントロールがストレス反応を低減させる可能性が示唆された。
  • 金﨑 美奈子, 齋野 貴史, 堀井 理司
    2016 年39 巻5 号 p. 5_85-5_94
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    【目的】クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob Disease:CJD)患者の家族が経験した困難を明らかにした。
    【方法】CJD患者を看取った経験のある家族を対象に半構成的面接を行い,面接内容はICレコーダで録音した。意味内容の類似性に従ってカテゴリー化した。調査対象病院の倫理委員会の承認を得て,対象者の権利擁護に努めた。
    【結果】CJD患者の家族が経験した困難として【CJDの診断に至るまでの混沌により生じた否定的な思い】【CJD確定後に生じる転院を拒まれるつらさ】【感染源の伝播のおそれがもたらす苦悩】など13カテゴリーが抽出された。
    【考察】CJD家族が経験する困難の一部は,医療者の知識不足や不安などから生じた不適切な感染対策,納得のいかないインフォームド・コンセント,不当な扱いを受けたと感じる人権問題など,医療水準が維持できていないことに起因していた。
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