日本看護研究学会雑誌
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46 巻, 5 号
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  • 福重 真美, 松本 智晴, 前田 ひとみ
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_719-5_729
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,マスク着用とマスクの種類が,音圧レベルと摩擦音の聞き取りに及ぼす影響を明らかにすることである。方法:20歳前後の男女を対象に,マスクなし,不織布マスク,N95マスクによる影響を比較した。音声は,音声解析ソフトPraatを用いて音圧レベル(dB)を解析した。聞き取りは,摩擦音に着目し,15種類のVCV語について異聴件数と異聴傾向を分析した。結果:マスクの着用により,高周波数域の音圧レベルが有意に減衰した(p<.05)。異聴件数は,N95マスクが最も多かった。マスクの着用により,子音の異聴が有意に増加し(p<.01),有声音の無声化や同一調音間での異聴が起こる傾向が示された。結論:マスクによる影響は,子音が分布する高周波数域で大きく,音圧レベルを減衰させて異聴を引き起こすことが示された。音圧レベルや異聴への影響は,不織布マスクよりN95マスクの方が大きかった。

  • 山田 恭子, 辻 久美子, 内海 みよ子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_733-5_742
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    目的:看護師の職業的アイデンティティと組織風土との関連を明らかにし,職業的アイデンティティ形成に必要な組織風土について検討する。方法:A県内100床以上の病院で勤務する看護師449名を対象に無記名の自記式質問調査票を用いて調査した。看護師の職業的アイデンティティ尺度と基本属性,組織風土,ソーシャルサポートとの関連について重回帰分析を行った。結果:「建設的な雰囲気」「看護師への不当な評価」,同僚のサポート,看護師経験10年以上,職業選択動機で職業的アイデンティティとの関連が認められた。また10年以上の看護師は,上司,先輩のサポート,「師長のリーダーシップ」「建設的な雰囲気」「研究的雰囲気」が有意に低かった。結論:職業的アイデンティティ形成には,建設的な雰囲気の組織風土の醸成が必要だと示唆された。特に10年以上の看護師に対して実践の承認を含めたソーシャルサポートが必要と考えられた。

  • ピアサポーターの面接調査から
    舞弓 京子, 福浦 善友
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_743-5_754
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    目的:精神科での退院に関する意思決定支援の課題を明らかにし,精神科看護師の意思決定支援について考察する。方法:対象は精神科退院経験のあるピアサポーター20名。面接調査をし,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。結果:患者は,退院を表明するが【受け止めてもらえない退院表明】や【不十分な意思表明】のために【入院継続を選択】していた。一方,退院が進まなくても【退院に向け行動】する者もおり,入院中〖混沌とした退院への意思決定〗を体験していた。退院後は【生活になじめない期間】があり,【孤独が増大】し,【コントロール感の低下】に陥るといった悪循環が生じ,〖自立の危機〗に直面していた。結論:精神科では,患者の退院への意思はあいまいに扱われ,安心を求め入院を選択することや,退院後は危機的状況が続くという課題があった。看護師は,患者の意思を見失うことなく,退院後の危機克服に向けて支援することが求められる。

  • 第1報:首尾一貫感覚に及ぼす性格特性とストレス対処方略の影響
    山本 幸子, 田中 マキ子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_755-5_765
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:看護専門学校生の首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)に影響を与えるストレス,統制の所在(Locus of control:LOC),特性不安の関係性を明らかにし,縦断的変化からSOCを発達させる要因としての対処方略を見出す。方法:看護専門学校1年次生298名と2年次生271名を対象に,SOC,LOC,特性不安,3次元モデルに基づく対処方略尺度(TAC-24)に関するアンケート調査による2年間のコホート研究を行った。結果:看護専門学校生のSOCは,ストレス,LOC,特性不安に影響を受け,3年次生ではLOCと特性不安からの影響が強くなった。SOCの発達は,肯定的解釈,計画立案,放棄・諦め,責任転嫁の対処方略が影響した。結論:SOCの発達は,自分自身の生活全体を理解,予測できる経験,様々な問題に対し柔軟に対応できる経験,自分自身にとって価値ややりがいを感じる経験が必要である。

  • 川口 賀津子, 鳩野 洋子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_767-5_776
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    目的:看護師経験5年以上の女性ジェネラリスト看護師におけるキャリア・プラトーの類型化とその特徴を明らかにする。方法:看護師経験5年以上の女性ジェネラリスト看護師1,637名に無記名自記式質問紙調査を実施した。キャリア・プラトー化尺度得点を,ユークリッド距離・Ward法にて階層的クラスター分析後,Kruskal-Wallis検定とBonferroniの修正,χ2検定と残差分析を行った。結果:732名(有効回答率44.7%)分を分析した結果,「ダブルプラトー型」「階層プラトー型」「ノン・プラトー型」「内容プラトー型」に分類され,年齢・看護師経験年数・勤務病院の在籍年数・子どもの有無・学習意欲・職場の人間関係で有意差を認めた。結論:看護師個々の背景やキャリア・プラトーの類型と特徴を考慮し,プラトー化の早期発見と個人に合わせたキャリア発達への早期介入の重要性が示唆された。

  • 熊倉 良太, 稲垣 美智子, 多﨑 恵子, 松井 希代子, 堀口 智美
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_777-5_789
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,高齢血液透析患者における身体および運動の認知に着目し,運動実施に至るプロセスを明らかにすることである。方法:本研究は質的因子探索研究であり,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。結果:研究参加者は医療機関に外来通院し,血液透析を導入後1年以上の高齢血液透析患者15名であった。分析の結果,高齢血液透析患者の運動実施におけるプロセスを身体および運動認知カテゴリーを含んだ6つのカテゴリーによって描くことができた。高齢血液透析患者の運動実施に至るプロセスは2つあり,身体認知カテゴリーから始まり,【自分の足で透析生活をする決意】とつながり,【挑戦的な手探りでの運動実施】に至っていた。2つの運動認知カテゴリーは運動実施にブレーキをかけるように影響していた。結論:血液透析患者の運動支援では,身体および運動認知に着目し,積極的な運動指導を行う必要性が示唆された。

  • 飯倉 涼, 恩幣 宏美
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_791-5_798
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:新人看護職員が看護基礎教育で経験したことがない看護実践に対する困難をどのように乗り越えているかを明らかにする。方法:2年目看護職員12名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。結果:新人看護職員は,先輩看護職員の実践を手本に模倣することで看護業務をこなせるようになったと自覚していた。その後,先輩看護職員から業務を優先する傾向を指摘されることで患者の思いを考えた看護実践を行い,患者や家族の肯定的反応から手応えを得ていた。結論:看護基礎教育で経験したことがない看護実践に対する困難を乗り越えるための教育的支援として先輩看護職員は,入職後の新人看護職員が看護業務を模倣できるように質の高い見本を示すこと,業務を優先している場合,その傾向に気付けるように,指導することが必要であると推察された。

  • 信頼性・妥当性の検証
    髙橋 衣, 久保 善子, 遠藤 里子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_799-5_811
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/13
    ジャーナル フリー

    目的:「子どもに携わる看護師の子どもの権利擁護実践能力尺度」(髙橋・瀧田,2019)の改訂を目的としている。方法:先行尺度に修正・追加した全39の質問項目について,全国から無作為層化し抽出した小児関連病院から,子どもに携わる看護師経験3年以上の看護師1,000名を対象に協力を求め,818名に無記名自記式質問紙調査票で調査を実施した。結果:337名(41%)から回答があり,最終的に有効回答294名(87.2%)を分析の対象とした。【家族への支援】【子どもへの支援】【子どもへの説明と意思の確認】【医療スタッフとの調整】の4因子22項目が抽出された。累積寄与率は59.36%であった。基準関連妥当性は,大出の既存尺度と4因子との相関がみられ,内容妥当性が示された。確証的因子分析を行い,適合度の高い尺度となったことを確認した。結論:妥当性と信頼性を確保し,実用性のある尺度を作成することができた。

  • 福田 知恵, 重松 由佳子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_813-5_823
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    目的:身体活動がもたらす多様な効果は明確であるが,本邦でも運動習慣者の割合は低く,取り組みの成果は出ていない。本研究では運動の動機づけに着目し,一般的な就業者を対象に運動の動機づけに影響を与える要因を明らかにすることを目的とした。方法:2018年度に35〜74歳の生活習慣病予防健診受診者を対象に,運動の自己決定動機づけ(尺度)に関する無記名自記式アンケート調査を行った。結果:回答者は1,822名,うち有効回答は1,321名(72.5%)であった。自己決定動機づけ(尺度)の下位概念は運動習慣の有無と有意に関連があった。基本属性については,下位概念の内発的調整は喫煙・飲酒習慣と,同一視的調整は年代・喫煙習慣と,取り入れ的調整は糖尿病現病歴と,無調整は性別・喫煙習慣とそれぞれ有意に関連があった。結論:運動の自己決定動機づけ尺度の下位概念と対象者の個別性に応じた保健指導介入の必要性が示唆された。

  • 防災意識と防災リテラシー,災害自己効力感および防災行動との関連性
    濵野 初恵
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_825-5_837
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    目的:血液透析患者における災害自己効力感と防災リテラシー,防災意識および防災行動との関連性および災害自己効力感に影響する要因について明らかにする。方法:20〜70歳代の血液透析患者1,500名を対象に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,回答に不備のない245名を分析対象とした。調査内容は,基本属性,防災意識,防災リテラシー,災害自己効力感,防災行動について尋ねた。結果:血液透析患者の防災行動を促進する有意な規定要因は,「自己対応能力」,「そなえ」,「脅威の理解」,「被災状況に対する想像力」であった。また,災害自己効力感に影響する要因には,防災リテラシーおよび防災意識が影響することが示された(R2=.715)。結論:血液透析患者の災害自己効力感を高め,防災行動へと結び付けていくには,防災リテラシーおよび防災意識向上への対策が重要であると示唆された。

  • 山田 春奈, 古賀 明美, 川久保 愛, 武富 由美子
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_839-5_847
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    目的:プレホスピタルケア(以下,PC)に従事する看護師のSOC(首尾一貫感覚)と多職種連携の実践能力との関連を明らかにする。方法:全国58のドクターヘリ基地施設でPCに従事する看護師を対象に,個人属性,SOC,多職種連携の実践能力を無記名自記式質問紙で調査した。結果:36施設の132名を分析対象とした(有効回答率46.3%)。SOC総得点56.8(SD=10.8)点,把握可能感21.8(SD=5.1)点,処理可能感16.3(SD=4.0)点,有意味感18.7(SD=4.0)点であった。多職種連携の実践能力114.4(SD=12.2)点であった。SOC総得点(r=.38,p<.01),把握可能感(r=.39,p<.01),有意味感(r=.35,p<.01)と,多職種連携の実践能力の間には弱い正の相関があった。結論:多職種連携の実践能力の高さが把握可能感と有意味感を高める可能性が示唆された。

  • 西田 紀子, 植木 慎悟, 藤田 優一
    2024 年 46 巻 5 号 p. 5_849-5_860
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:小児アレルギーエデュケーター(PAE)として活動している看護師が認識する重症食物アレルギー(FA)児の心理社会的問題とその支援を明らかにする。方法:PAEとして活動している看護師11名に半構造化インタビューを実施し,質的記述的に分析した。結果:PAEが認識する心理社会的問題は,【自己管理の移行の遅延】【FA児が主体でないアレルギー管理】【食に関する経験の不足】【食以外の日常生活の制限】【食物への否定的な反応】【社会性の発達の遅延】【自己概念形成への負の影響】であった。PAEが実施した支援は,【検査・治療への主体的な参加を促す支援】【自己肯定感を高める支援】【アレルギーのある生活に対応するための支援】【食の楽しさを育む支援】【子ども同士の交流を促す支援】【保育園・幼稚園への働きかけ】であった。結論:重症FA児の幼児後期からの心理社会的側面の問題を理解し支援する必要がある。

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