乳癌はわが国女性の死亡率の中では第5位(5.9/100.000..1976年)を占めるにすきず,欧米諸国のそれに比べて低い。しかしながら,1950年以降子宮癌による死亡率が漸減しているのに比べ,乳癌によるそれは漸増している。
Torrie(1971)が乳房切断術を“the emotional operation”と呼んでいるように,さまざまな外科的手術のなかでも,それは患者本人にとって最もむごい手術のひとつであろうと思われる。乳房切断術を受ける女性は,(1)病気の本態に起因する死への恐怖,(2)「かたわ者」になった思いに直面して苦悩することが知られているが(Harrel 1972, Roberts 1975),2つの文献総覧(Polivy 1975, Asken 1975)も共にそれを確認している。Quint(1973)やギャラップ調査は乳房切断術を受けた女性は,術後「女らしさ」の喪失感に悩むという事実を指摘している。これは乳房が単なる乳汁分泌器官にとどまらず,母親らしさや女らしさのシンボル(Renneker and Kutler 1952, Bard and Sutherland 1955),美,スタイル,ファッションのシンボル(Dietz 1973)としての意味を有しているからであろうと思われる。
本研究においてわれわれは,乳房切断術を受けた女性の身体像の変容について知るための基礎研究として,健康な若い女性が乳房に対して抱いているイメージを,Osgood's Semdntic Differential Techniqueによって測定した。
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