日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
33 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 廣瀬 春次, 生田 奈美可
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_45-1_56
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,認知症の身内を持つ家族介護者の予期悲嘆体験を明らかにすることである。研究参加者は,在宅の認知症患者の主たる家族介護者12名である。方法は,半構成面接を行い,質的帰納的に分析した。その結果,身内が認知症になることによる家族の予期悲嘆体験として3つの位相を辿ることが示された。最初は【患者の大切な特性の喪失】【介護者の大切なものの喪失】から構成される非死喪失が生じ,その情動反応として【うけとめることができない】【怒らずにはいられない】【やりきれない思い】【自分に責任がある】【不安と寂しさ】等の予期悲嘆が強まり,最終的に【認知症を受け入れる】【愛情と関心を持ち続ける】【認知症患者に合わせる】【喪失の中から意味を見出す】等の適応へと進む。また,上記の3つの位相を促進又は阻害する要因として【関係性】と【社会的支援の認知】の2つが示された。本研究では,予期悲嘆を非死喪失への適応プロセスとしてとらえ,適応を促す家族援助について考察した。
  • 中垣 明美
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_57-1_68
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,生涯発達の観点から女性看護師の成人期における危機となる「体験」の内容や時期の解明である。病院に勤務する20歳代から50歳代の看護師19名を対象に半構成面接を行った。体験を抽出してカテゴリー化し,さらに《個人》《家族》《仕事》の領域に分類した。分析の結果,看護職の発達に影響を与える体験は,《仕事》の領域が半数で,《個人》や《家族》の領域においても仕事と関連したものが多く語られた。体験の時期は《仕事》領域の体験では内容により予測可能な体験が多く,《家族》領域の子育てや介護との葛藤などは,どの年代でも体験されていた。また体験は有職者に共通する子育てや介護との両立などの内容と,看護職に特徴的な准看護師と看護師の責任や仕事内容の違いや,大学卒の増加など看護基礎教育課程の違いなどの内容があった。有職女性の共通の体験と看護現場の複雑な状況による体験が,女性看護師の生涯発達に影響していた。
  • 草場 知子
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_69-1_79
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,早期関節リウマチ(以下,早期RA)患者の発症以降の心理過程と療養行動を明らかにすることを目的として,早期RA患者9名(男性1名,女性8名)を対象に半構成的面接による質的帰納的研究を行った。その結果,早期RA患者の心理には【見聞きした経験はあるが無関心】【得体の知れない症状への不安】【不安を伴う痛みの辛さ】【日常生活の不自由さと役割葛藤】【思いもよらぬRAにショック】【同病者と自己の将来像が重なる恐怖】【RAであることを否認】【自分に合う医師・治療と出会えた喜び】【痛みと不自由さからの解放】【療養への前向きな気持ち】【先行きに対する不安】【将来への希望】の12のカテゴリーが見出された。早期RA患者は,発症後,複雑な心理過程を経て,徐々に病気を受容し,独自の療養行動をとっていくことが明らかとなった。このことから,早期RA患者が辿る心理過程に応じた患者教育などの看護介入が必要であることが示唆された。
  • 中村 由子
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_81-1_92
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,配置転換による中堅看護師の「一皮むけた経験」のプロセスを明らかにすることである。配置転換後1年以上3年未満で,新しい職場に適応し,「一皮むけた」と自他(管理者)ともに認める中堅看護師5名に面接し,KJ法を用いて分析した。その結果,配置転換による中堅看護師の「一皮むけた経験」は,【再出発にむけての気持ちの整理】,【配置転換から生じたネガティブな思いを乗り越えようとする姿勢】,【役割認識】,【成長の実感】,【自分らしいキャリア発達の座標軸の発見】,【看護職継続の意思】の6段階と【モチベーションの向上に必要な心の拠り所】の1要因からなるプロセスであることが明らかになった。配置転換による中堅看護師の「一皮むけた経験」は,配置転換という節目への向かい方,配置転換によって得た知を新たな実践に結びつける力,中堅看護師としての職業アイデンティティの発達の過程を意味していた。
  • -看護者と養護教諭の比較から-
    三上 佳澄, 對馬 明美, 西沢 義子
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_93-1_101
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,看護者が患者の姿勢からどのような感情を認知しているのかを養護教諭と比較し,明らかにすることを目的とした。対象者は看護者195名,養護教諭40名である。基本,不安,落胆,緊張,興味,怒り,喜びの7つの感情を表している姿勢を刺激図版として用いた。対象者には刺激図版を提示し,その患者がどのような感情状態であるかを気分調査票を用いて評価した。不安や落胆の感情を表現していると考えられる姿勢は,抑うつ感や不安感の得点が看護者,養護教諭ともに高く,これらの感情を適切に認知していると考えられる。看護者は経験年数によって認知する感情に違いがあり,経験年数が少ないほど得点が低い傾向にあった。看護者,養護教諭ともに1つの姿勢でも複数の感情認知得点が高く,特定の感情だけを認知していないことが示唆された。姿勢から認知する感情は看護者と養護教諭,経験年数により差異があることが考えられる。
  • 野村 佳代, 渡辺 久美, 寺嶋 朋恵
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_103-1_109
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      要介護高齢者の入院で患者と家族の関係が希薄化しやすく,臨床特有の看護師と家族の関係構築が必要となる。そこで,要介護高齢者が多く入院する病院での家族への関与の過程と影響要因を明らかにし,対策の検討を目的とした質的な分析を実施した。
      その結果,病院における看護師の家族への関与の過程は,家族からの否定的な言動から【振り回す家族への陰性感情】を抱くが,【看護アピールの必要性の再認識】によって【家族への方略的かかわり】を実践し,【患者・看護への家族の関心に対する手ごたえ】を導く過程であった。この過程には,看護師側の心理的要因や病院の機能上の問題も影響し,『入院中の要介護高齢者の家族との相互理解に向けた看護師の関与の過程』であった。このことから,入院によって疎遠になりがちな要介護高齢者と家族には,看護アピールを出発点とした看護師の方略的かかわりが,臨床における家族-看護師の関係構築となることを示した。
  • 姫野 稔子, 小野 ミツ
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_111-1_120
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      介護予防に向けたフットケアの効果を検証するため,在宅高齢者11人を対象に足浴,ヤスリがけ,マッサージ,足部の運動を実施し,ケア前後における活動性や転倒自己効力感,足部の形態・機能,立位・歩行機能の変化を検討した。ケア介入後,活動性は向上,転倒不安感は低下し,末梢循環や筋疲労に起因する足部の変調が改善した。足底部の角質化や胼胝は消失・改善した。立位保持に重要な足底部の触圧覚も有意に向上した。末梢血液量には有意な変化はなかったものの皮膚表面温度は有意に上昇していた。開眼片足立ちは有意な変化ではないが保持時間は長くなっており,Functional Reachは有意に長くなった。10m最大速歩行が有意に速くなり,TUGは速くなる傾向がみられた。また,下肢筋力に関する足趾間把持力も左足が有意に強くなった。今回実施したフットケアは,足部の問題解決のみならず介護予防の一義的目標である立位・歩行機能を維持・向上できることが示唆された。
  • 赤木 京子, 藤田 君支, 佐藤 和子
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_121-1_131
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究では,人工股関節全置換術(以下,股関節術)を受けた患者の手術前後の生活体験を明らかにする。さらに,手術後の生活実態を明らかにするために,退院後の生活状況の実際を把握し,活動量について定量的に評価することを目的とする。初回股関節術後1年の患者17名に半構造化面接,観察調査,活動量の実測調査を行った。患者の生活体験には,術前【激しい痛みに制約される生活】,退院当初【苦痛からの解放と人工関節の不安】,術後1年【人工関節と折り合いをつけた生活と対処】があり,年齢と社会的役割で比較し,《後期高齢者》,《前期高齢者・壮年期の主婦》,《壮年期の有職者》の3群が示された。活動量の中央値を比較すると,壮年期の有職者は,5.71METs・h / dayで,後期高齢者の1.68METs・h / dayより大きかった。手術前後の生活体験,生活状況,活動量の実測値から,患者の個別性を考慮した看護の重要性が示唆された。
  • 村上 美華, 前田 ひとみ
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_133-1_139
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,新人看護師の職業性ストレスを測定する尺度を開発することである。まず,2006年1月と2007年1月に就職後10 ヶ月目の新人看護師を対象に尺度原案を作成するための調査を行った。文章完成法により得られた記述を内容分析し,23項目5件法の質問紙を作成した。次に,3県の施設に勤務する新人看護師383名を対象に,就職後6~7ヶ月目である2007年9月~ 10月に質問紙調査を行い,尺度項目の選定とCES-D及びSEとの相関から信頼性と妥当性を検討した。因子分析の結果, 16項目3因子が精選され,『職場環境』『看護実践』『自己成長』と命名した。尺度全体のCronbach’s α係数は0.860であり,抑うつ自己評価尺度とは正の相関,自尊感情尺度とは負の相関が認められた。以上の結果から,本尺度の信頼性と妥当性は概ね確保されており,実用可能な尺度であると判断できる。
  • 原 祥子, 小野 光美, 大畑 政子, 岩郷 しのぶ, 沼本 教子
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1_141-1_149
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,介護老人保健施設の看護・介護職を対象として,看取りへのかかわりと揺らぎの実態を明らかにすることである。看取りを行っている45施設に勤務する看護職501名と介護職1,274名に質問紙調査を実施し,485名の有効回答を分析した。結果,看取りに対して積極的であると答えた看護職53%,介護職39%で,看護職の方が積極的な姿勢を示していた。看取りの際の入浴ケアや家族に対するケアは,看護職の方が積極的にかかわっている傾向にあった。入所者や家族の揺らぎを感じた経験のある看護職は37%で,介護職よりも多かった。自分自身が揺らぎを感じたことがあると答えたのは看護職40%,介護職32%で,多職種カンファレンスを行うこと等で揺らぎに対処していた。介護老人保健施設における看護職は多職種との連携・協働の強みを生かし,カンファレンスでの検討や相談によってスタッフの揺らぎに対処していくことの重要性が示唆された。
feedback
Top