日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
30 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • -皮膚コンダクタンスおよび気分形容詞チェックリストによる評価-
    小笠原 映子, 椎原 康史, 小板橋 喜久代, 中嶌 広美, 永松 一真, 秋好 力, 鶴田 晴美, 安藤 満代
    2007 年30 巻4 号 p. 4_17-4_26
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     柑橘系精油であるスイートオレンジのアロママッサージによるリラクセーションおよびリフレッシュメント効果を検討するため,35名の女子学生で,10分間の前腕へのオイルマッサージ施行時に,皮膚コンダクタンス(SC),日本語版気分形容詞チェックリスト(JUMACL)の下位尺度である緊張覚醒(TA)およびエネルギー覚醒(EA)を測定し,精油を加えたアロマ群(15名)と精油を加えないコントロール群(20名)で比較した。
     その結果,両群ともに,SCおよびTAはマッサージにより低下し,リラクセーション効果が確認された。一方,EAはアロマ群でマッサージ後の低下が少なく,柑橘系精油のリフレッシュメント効果を示すものと思われた。
     さらに,明確に定義されないまま用いられているリフレッシュメント効果という概念について考察し,リラクセーション効果,リフレッシュメント効果とTA,EAの関係について,概念的な整理を試みた。
  • 森鍵 祐子, 叶谷 由佳, 大竹 まり子, 赤間 明子, 鈴木 育子, 小林 淳子, 田代 久男, 佐藤 千史
    2007 年30 巻4 号 p. 4_27-4_35
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,院外の機関・職種との連携や社会資源を活用する退院支援(院外連携)が必要であると予測される患者や家族を早期に把握するための早期退院支援スクリーニング票を特定機能病院に導入し,スクリーニングの妥当性を検討することを目的とした。スクリーニング票は6項目からなり,1項目でも該当すれば院外連携の必要ありと判定した。入院患者227名を対象とし,入院時と退院時に質問紙調査を行った。
     その結果,1)スクリーニング票の敏感度は68.6%,特異度85.0%であり,院外連携を必要とする対象者の把握漏れは少なかった。2)院外連携の必要の有無と院外連携の実施の有無の間には有意な関連があった。また,院外連携を実施した群は未実施群に比べ,スクリーニング項目に該当する割合が有意に高く,スクリーニング票は院外連携が必要な患者を予測できることが示された。以上から,スクリーニングの妥当性について一定の評価ができた。
  • 金子 典代, 内海 眞, 市川 誠一
    2007 年30 巻4 号 p. 4_37-4_43
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,東海地域にて実施した臨時HIV抗体検査を受検したゲイ・バイセクシュアル男性における保健所のHIV検査の受検,認知度や利便性の評価,検査受検の動機,感染予防行動との関連を生涯の検査経験別に明らかにすることであった。東海地域に居住する272名を分析対象とした。分析の結果,保健所や地方自治体が実施するHIV抗体検査の受検率や利便性の評価が低いことが明らかとなった。保健所の検査を利用しにくい理由として,「受検できる時間が限られている」を挙げたものが最も多かった。検査会の受検動機として,検査経験のないものは経験があるものと比べて「恋人や友達と受けることにした」「情報に触れて心配になった」を挙げるものが多かった。アナルセックス時のコンドームの常用率は60%以下であった。今後はゲイ・バイセクシュアル男性が受検しやすい検査環境を整備と予防行動の促進に向けた活動を行う必要がある。
  • -もっとできる自分を知ってほしい-
    沖中 由美
    2007 年30 巻4 号 p. 4_45-4_52
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,ケア提供者に対する施設入所高齢者の隠された主張を見出し,施設入所高齢者が隠された主張をもつことにより自らの老いをどのように意識するのかを明らかにした。施設入所高齢者11名に半構成的面接を行い,ケア提供者に対する主張や自らの老いについていだく意識内容を抽出しカテゴリー化した。その結果,『自分の健康は自分で守りたい』『このままではもっと悪くなる』『自分の力を信じてほしい』で構成される【もっとできる自分を知ってほしい】が見出された。隠された主張をもつ施設入所高齢者のなかには,自らの老いを負に意識づけるようになる人もいた。そこでケア提供者は,施設入所高齢者のQOLを向上させ自己実現を目指すため,言語化できない主張を引き出すことが求められる。ケア提供者は,施設入所高齢者との関係性を構築しながら,施設入所高齢者の健康状態を継続的に査定し,ケアの方向性を相互に確認していく必要性が示された。
  • 古村 美津代
    2007 年30 巻4 号 p. 4_53-4_59
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     老年期は,多くの喪失に直面しながら,自分の生涯を統合的に受容していくことが重要である。しかし老年期は,非常に多くの喪失を伴いうつ病や神経症に罹りやすく個別の心理的ケアが必要である。
     本研究は,抑うつを伴う施設入居高齢者の構造的ライフレビューによる心理的プロセスを明らかにしその心理的ケアの有効性を検討することを目的に,認知障害のない抑うつを伴う施設入居高齢者7名に構造的ライフレビューを実施した。
     面接当初は,身体的低下や施設入所による孤独感などを訴えていた高齢者が,構造的ライフレビューにより面接者が出来事に対する思いやその出来事の意味について思いめぐらすことができるように関ることで,さまざまな出来事を想起し自らの人生を受容することができた。構造的ライフレビューにより高齢者は,《無力な自分》,《記憶を思い出し感じていること》,《人生のみなおし》,《自我の統合》の心理的プロセスを辿ることが明らかとなり,心理的援助につながった。
  • -N県N町の老人クラブの調査結果-
    古川 秀敏, 国武 和子
    2007 年30 巻4 号 p. 4_61-4_66
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     高齢者の抑うつの関連要因を明らかにすることを目的に,N県N町の老人クラブの高齢者290名(男性:142名,女性:148名,平均年齢:74.9±5.2歳)を調査した。Geriatric Depression Scale短縮版(以下,GDS)の得点は,2.4±2.3点(15点満点)であり,有意に女性の方が高い値であった(男性2.1±2.1点,女性2.8±2.5点)。GDS得点を従属変数とし男女別にパス図を検討した結果,男性では喪失感,ソーシャル・サポートの関連が,女性では,社会参加,ソーシャル・サポート,主観的健康感の関連が示された。本調査結果は,抑うつの緩和にはソーシャル・サポートが有効であることを示唆しており,高齢者が質の高い生活を送るためには地域社会からの細やかな援助が重要であると考えられる。
  • 谷垣 靜子, 乗越 千枝, 仁科 祐子
    2007 年30 巻4 号 p. 4_67-4_73
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,在宅高齢者の基本健診,がん検診の受診行動に与える影響要因を明らかにすることである。対象は,中国地方の中規模都市Aに在住する要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1,010人である。調査は自記式で,データは横断面である。質問項目は,検(健)診の受診状況,検(健)診に対する認知,疾病数,家族歴,高齢者の基本属性,日常生活状況とした。分析方法は,受診行動を従属変数,検(健)診に対する認知とその他の属性を独立変数とする回帰分析である。その結果,「検(健)診への有効性の認知」,「がん罹患の可能性の認知」,疾病数が多い,家族歴,外出(公民館・趣味)などが,受診する傾向と関連がみられた。また,「検(健)診が面倒」,職場健診ありは,受診しない傾向と関連がみられた。これらの結果から,受診行動に影響を与える認知への働きかけを行うことで,健康行動が促される可能性が示唆された。
  • 深田 順子, 鎌倉 やよい, 日比野 友子, 伊東 美穂, 羽田野 杏子
    2007 年30 巻4 号 p. 4_75-4_83
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     背部温罨法の温度の相違による効果を,皮膚表面温及び循環器に与える影響から検討することが目的である。対象は研究参加に同意が得られた健康な女性20名で,実験条件は,55℃の熱布を貼用する55℃法,40℃に75℃の熱布を重ねて貼用する40℃+75℃法,40℃に65℃の熱布を重ねて貼用する40℃+65℃法とし,10分間左側臥位で背部温罨法を実施した。
     熱布の温度の持続性は,40℃+75℃法,40℃+65℃法,55℃法の順であった。全方法で,皮膚表面温は,安静時と比べて肩甲骨下では貼用中から除去15分後まで,右足背では除去16~30分間に有意に上昇した。収縮期血圧は,55℃法では3名が安静時より20㎜Hg以上低下した。拡張期血圧は,全方法で貼用中から除去30分後まで有意に低下した。
     40℃+65℃法は,40℃+75℃法と比較して保温効果はかわらず,循環器系への影響が少なく臨床での利用が推奨された。
  • 山田 紀代美, 西田 公昭
    2007 年30 巻4 号 p. 4_85-4_91
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,介護スタッフが認知症高齢者に対して用いるコミュニケーションスキルの特徴とそれらに関連する要因の検討を行うことである。対象は,介護老人福祉施設および同系列の通所サービスの介護スタッフ47人で,調査内容は,介護スタッフの性,年齢等の属性,コミュニケーションスキルに対する使用認識,疲労感等である。結果は,介護スタッフが使用するコミュニケーションスキルは,受容的会話の配慮では,「親しみを込めた話し方をする」,発話の配慮では「大きな声で話す」「ゆっくり話す」が,根気強さでは「相手の話に関心を持って相槌をうつ」がよく用いられていた。
     介護スタッフのコミュニケーションスキルに関連する要因として,介護職歴が長いスタッフは,受容的会話,発話の配慮,根気強さの全ての要素を用いており,また仕事への満足度が高いスタッフほど,発話の配慮を行っていた。
  • -クリティカルパス使用効果について-
    叶谷 由佳
    2007 年30 巻4 号 p. 4_93-4_104
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,褥瘡に対する訪問看護の標準化のためにパスを作成し,その効果について検討した。対象となった看護職者はパス群29人,通常群32人,利用者数はパス群のべ90人,通常群のべ102人であった。パス通常群間で看護職者が看護を提供した利用者のブレーデンスケール,DESIGN,褥瘡の表面積に明確な差はなく,看護職者の褥瘡看護の知識にも差はなかった。しかし,意識の1項目で介入前にパス群が有意に通常群に比し,意識が低かったのが,介入後には有意に向上しており,看護職者の褥瘡に対する訪問看護の標準化に効果がある可能性が考えられた。また,パスのバリアンス分析より,1週目の栄養の細項目である体重測定やアウトカムの栄養評価の細項目,検査の細項目の表現方法について検討が必要であること,利用者のADLを促進させるための家族への支援方法や医師との信頼関係の構築についての技能を向上させる教育が必要であることが考えられた。
  • 原 祥子, 小野 光美, 沼本 教子
    2007 年30 巻4 号 p. 4_105-4_111
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,高齢者とケアスタッフによるライフストーリー面談において,どのような相互作用が生じ,変化していくのかを面談過程に即して明らかにすることである。分析事例は介護老人保健施設の入所者A氏と介護士Bさんによる3回のライフストーリー面談で,やりとりの特徴とA氏の話題展開に着目して内容分析を行った。
     第1回面談ではBさんの疑問形の多用とA氏の他人事様の応答,第2回面談では互いの言葉の繰り返し,第3回面談ではBさんの相づちとA氏の丁寧口調がやりとりの特徴として抽出された。面談の進行とともに新しい話題の挿入と話題の改訂がみられ,第3回面談ではA氏の感情を表現する語りが展開されていた。互いの言葉の反復や相づちを媒介にした相互作用へと進展するとともに,ライフストーリーの内容は広さと深さを増していくことが示された。また,繰り返し語られる同一話題を聴き手がその都度受けとめることの重要性が示唆された。
feedback
Top