老年期は,多くの喪失に直面しながら,自分の生涯を統合的に受容していくことが重要である。しかし老年期は,非常に多くの喪失を伴いうつ病や神経症に罹りやすく個別の心理的ケアが必要である。
本研究は,抑うつを伴う施設入居高齢者の構造的ライフレビューによる心理的プロセスを明らかにしその心理的ケアの有効性を検討することを目的に,認知障害のない抑うつを伴う施設入居高齢者7名に構造的ライフレビューを実施した。
面接当初は,身体的低下や施設入所による孤独感などを訴えていた高齢者が,構造的ライフレビューにより面接者が出来事に対する思いやその出来事の意味について思いめぐらすことができるように関ることで,さまざまな出来事を想起し自らの人生を受容することができた。構造的ライフレビューにより高齢者は,《無力な自分》,《記憶を思い出し感じていること》,《人生のみなおし》,《自我の統合》の心理的プロセスを辿ることが明らかとなり,心理的援助につながった。
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