日本看護研究学会雑誌
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33 巻, 4 号
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  • 玉田 章, 長谷川 智之, 竹山 育恵, 名倉 真砂美
    2010 年33 巻4 号 p. 4_13-4_19
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      術後患者を対象にIncentive Spirometryを用いた呼吸訓練を行い,換気機能回復への影響を検討した。実験群が行う訓練は1日に4セット,1セットの回数を10回とした。実験期間は手術前日から術後10日目までとし,電子スパイロメータで術前,術後1日目,術後5日目,術後10日目に換気機能を測定した。対照群はIncentive Spirometryを用いた呼吸訓練を行わず,実験群と同様に換気機能を測定した。その結果,対照群の術後1日目の肺活量と%肺活量は,術後5日と術後10日目より有意に低下していた。また,術後1日目の肺活量と%肺活量は実験群より対照群の方が有意に低値であった。以上から,Incentive Spirometryを術後に使用することにより,換気機能の回復が期待できることと,最大吸気が充分に維持される呼吸訓練であれば「1セット10回を1日に4回」で効果が期待できることが示唆された。
  • 山本 真実, 門間 晶子, 加藤 基子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_21-4_30
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,自閉症を主とする広汎性発達障害の子どもをもつ母親の子育てのプロセスを明らかにすることである。自閉症を主とする広汎性発達障害の子どもをもつ母親16名に対し半構成的面接を行い,分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。母親の子育てのプロセスは,【どうすればいいのかわからない】【子どもとの向き合い方を探しなおす】【独自のやりとりでつながっていく】【子どもに合った子育てがわかるようになっていく】の4つのカテゴリーで構成されていた。母親は【どうすればいいのかわからない】から【子どもとの向き合い方を探しなおす】を転機として抜け出し,【独自のやりとりでつながっていく】と【子どもに合った子育てがわかるようになっていく】を廻っていく。母親が子どもとの向き合い方を探しなおすためには,子育てにおける出来事を他者と共に意味づけていくことが重要である。
  • 三上 勇気, 水溪 雅子, 永井 邦芳
    2010 年33 巻4 号 p. 4_31-4_40
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,精神科病院で働く看護師の抑うつと怒りの持続の関連とその認知的特性(自動思考,不合理な信念,敵意認知)の影響を明らかにし,抑うつモデルを作成することであった。公立精神科病院2ヶ所,および私立病院5ヶ所の精神科病院に勤務する看護師・准看護師572名に調査を実施した。調査票は無記名で記入後,各自が郵送で返送した。
      CES-D得点を平均値より高群と低群に分け,CES-Dの高低群間で「JIBT-R20」と「怒りの持続」,「敵意認知」の得点を比較し,相関分析と先行文献を基に構造方程式モデリングによる因果モデルを作成した。モデルの適合度指標は,GFI=1.000,AGFI=.996で受容でき,どのパスも0.1%水準で有意だった。不合理な信念を強く持つほど敵意認知を高め,怒りが持続しやすくなり,自動思考や抑うつ気分を高める。さらに怒りの持続しやすさもまた,自動思考を高め,抑うつ気分を高めていることが明らかになった。
  • 山﨑 松美, 稲垣 美智子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_41-4_50
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,2型糖尿病患者が運動療法を継続する仕組みを明らかにした質的因子探索研究である。グラウンデッド・セオリーアプローチを用いて,糖尿病教育あるいは血糖コントロール目的で入院した2型糖尿病患者11名に,6ヶ月の追跡期間を設け,縦断的に4回の面接を行った。結果,2型糖尿病患者の運動療法の継続には,発展していくプロセスを含む仕組みが見出された。それはコアカテゴリーである《運動療法は運動ではない》の修得を必須条件とし,《運動療法への割り切り》と《運動療法の影響を自分の体で納得》が《療養生活の振り返りと解釈》を介して発展し,最終的に《糖尿病をもつ体へのいたわり》となるプロセスを含む仕組みであった。この結果より,運動療法の継続には,まず《運動療法は運動ではない》を修得できる援助が重要であることが示唆された。
  • 合田 加代子, 國方 弘子, 高嶋 伸子, 辻 よしみ, 中添 和代
    2010 年33 巻4 号 p. 4_51-4_57
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,戸建て団地に暮らす高齢者の孤立死予防を目指した地域づくりに取り組むための資料を得ることをねらいに,高齢者の歯の健康状態と積極的自尊感情,老年うつ,外出状態因果モデルを作成し検討した。その結果,モデルの適合度は,χ/df値が1.515,CFIが0.956,RMSEAが0.072であり,モデルはデータに適合すると判断された。パス係数は,歯の健康状態から積極的自尊感情が0.324, 積極的自尊感情から老年うつが-0.428,歯の健康状態から老年うつが-0.278,老年うつから外出状態が-0.267であった。このことから,歯の健康状態は積極的自尊感情に正に影響するとともに,老年うつに負に影響しながら,外出状態に影響を与えることが支持された。
      以上のことから,戸建て団地に暮らす高齢者の孤立死の予防をめざすために,口腔衛生活動の重要性とより良い自尊感情の維持・回復の重要性が示唆された。
  • 高田 明美
    2010 年33 巻4 号 p. 4_59-4_71
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      介護サービスの利用者の激増の中,高齢者介護の質の視点が求められている。本研究の目的は,日常の定型作業となりがちな要介護高齢者の介護において求められる介護とはどういうものなのか,具体的に探ることとした。調査方法は,全国7箇所の老人保健施設で利用者(要介護高齢者)と介護者(職員)に質問紙による調査を行い,記述および聞き取りによる回答内容の質的分析を行った。分析の結果,介護サービスとして期待するものとして,《利用者本人にとって重要なサービス》《介護サービスの安定供給》が見出された。具体的な構成概念として,個別主義・尊厳重視,対話・信頼のある関係,笑顔から受ける職務充足感,生活の質(QOL)維持向上などであった。高齢者介護においては高齢者の生活の質を高め,さらに,生活の質を高めることの可能な介護サービスを提供できる場の形成とスタッフの整備が必要であり,それが成果となることが目標である。
  • -看護管理者・認定看護師・看護師の比較-
    神坂 登世子, 松下 年子, 大浦 ゆう子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_73-4_84
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      CN(Certified Nurse: 認定看護師)の活動実態と活用状況,またそれらに対する看護部長,CN,看護師の認識を明らかにするために,F県のCNを有する施設の看護部長16名,CN34名,看護師3,487名を対象に質問紙調査を実施した。その結果,看護部長の全員がCN導入の有用性を認めており,CN 活動への支援として活動時間と場の確保,CNとその役割のPR,教育活動等を施設内から施設外へ拡大すること等を実施・思案していた。CNの73.5%が主任か師長の職位にあり,79.4%が兼務であり,44.1%が1日の平均CN活動は2時間未満であった。診療報酬の対象である感染管理と皮膚・排泄ケアのCNは,他分野よりも能力発揮ができていた。また,看護師の50.7%がCNを活用しており,84.7%がCNの活動に肯定的であった。これらの結果より,看護組織がCNとその能力を積極的に活用していく方策が複数示唆された。
  • 坂梨 左織, 大池 美也子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_85-4_96
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,手術を受ける口唇口蓋裂児を持つ母親を対象として,口唇口蓋形成術を通した母親の経験を明らかにすることを目的とした。口唇口蓋形成術を受けた口唇口蓋裂児の母親10名を対象として,半構成的インタビューによってデータ収集を行い,グラウンデッド・セオリーを参考に,継続的比較分析法を用いて分析した。その結果,母親の経験は,6つのカテゴリー≪治療過程の軌道に乗る≫,≪生活を継続していくための家族の協力と支援≫,≪母親と子どもとを取り巻く周囲とのかかわり≫,≪病気でも障害でもない口唇口蓋裂≫,≪一つ一つ乗り越えていくための取り組み≫,≪わが子を思う母親としての役割拡大≫があることが明らかになった。口唇口蓋形成術を通した母親の経験にはさまざまな努力や行動があり,このような母親の立場を理解し,母親としての成長に繋がる看護の必要性が示唆された。
  • -全国のエイズ拠点病院における平成19年~20年の状況-
    加瀬田 暢子, 島田 恵, 前田 ひとみ
    2010 年33 巻4 号 p. 4_97-4_106
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究はHIV陽性者の在宅療養支援に対するニーズの実態を把握することを目的とした。エイズブロック拠点病院・エイズ中核拠点病院・エイズ拠点病院,全372施設においてHIV陽性者に最も携わっている看護師各1名を対象に無記名自記式郵送質問紙調査を行った。79施設から回答があった。平成19年あるいは平成20年に在宅療養導入支援を検討したのは28施設であった。平成20年7月に在宅療養支援を検討しているのは18施設・20ケース,平成19年に導入可能だったのは16施設・27ケース,不可能だったのは11施設・15ケースであった。導入可能ケースは支援内容が少ない傾向にあった。関東・甲信越地方では病状や支援内容が複雑でも導入できていた。しかしターミナル期としての支援ニーズをもつ場合の導入が困難であった。HIV陽性者への在宅療養支援は,早期に患者・家族の意思確認を行い,導入に向けての検討を始める必要性がある。
  • -清潔行為自立に向けた上半身挙上角度の違いが循環機能に及ぼす影響-
    村上 礼子, 松田 たみ子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_107-4_113
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究では,健康人な17名を対象に清拭時の体位変換と膝立て等の活動と上半身挙上角度の違いが循環機能に及ぼす影響について検討した。実験は,ベット頭側を無作為に0度,30度,45度,60度,90度に挙上して体位変換と膝立て等の活動を行った。活動前,中,後の循環機能の影響の測定は,血圧(収縮期および拡張期),心拍数,心拍変動解析指標(LF成分,HF成分,LF/HF比),心筋の酸素消費量を用いた。その結果,45度以上での体位変換と膝立て等の活動では,動的と静的運動の両方の影響が加わり心拍数や血圧の上昇につながること,60度以上では交感神経活動の亢進が生じることが明らかになった。さらに,上半身挙上角度の上昇に伴い体位変換等の活動での循環機能への負荷は増大することが推察された。
  • -心理的ストレス指標と生理的ストレス指標から-
    高島 尚美, 大江 真琴, 五木田 和枝, 渡部 節子
    2010 年33 巻4 号 p. 4_115-4_121
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は、看護学生32名の3週間に渡る成人看護学臨地実習における心理的・生理的ストレスの変化や対処能力の影響を縦断的に明らかにすることを目的とした。
      その結果、唾液中コルチゾール濃度比とストレス感情“脅威”“有害”は、実習前日以外の3週間の実習中に有意な正の相関がみられた。ストレス感情“脅威”とストレッサーは、実習前日が最も高くその後有意に低下し、“挑戦”が上昇した。また達成感が高い群は、ストレス感情“脅威”“有害”とコルチゾール濃度比が有意に低く、SOC(Sense of Coherence 首尾一貫感覚)が有意に高かった。SOCは実習前日と比較すると実習終盤の3週目水曜日において有意に上昇し、唾液中コルチゾール濃度比と有意な負の相関がみられた。実習において、特に“脅威”・“有害”と評価している学生への個別的アプローチを含めた対処能力の育成が有効な支援のひとつとなる可能性が示唆された。
  • -除水制限を試みて-
    岩城 敏之, 上野 栄一
    2010 年33 巻4 号 p. 4_123-4_129
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は除水制限の効果について明らかにする事を目的とした。短期検討期間は32名,長期検討期間は22名を対象として,体重増加率(以下%DW)・心胸比・ドライウエイト・アルブミンの各項目データと,透析中のショックや足つり等の透析合併症出現回数の変化と,自己管理意識や自己効力感(以下GSES)を2年間にわたって追跡調査し検討を加えた。その結果,除水制限導入後では短期・長期検討期間の双方で%DWの減少や,アルブミンの上昇が認められた。また,透析合併症の血圧低下やショック等の予防にも効果があった。アンケート結果からは自己管理への意識の高まりを示し,GSESの上昇が明らかとなった。
      これらの結果からは導入後は延長や引き残したくないという意識が高まり,徐々に生活スタイルを変容させたものと推測される。一方で自己管理を徹底し%DWを下げる過程において,失敗と成功を繰り返しながら徐々に達成体験を積み重ねた事で,前向き志向となり自己効力感が上昇したと推測される。
  • 加藤 晶子, 森 將晏
    2010 年33 巻4 号 p. 4_131-4_136
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      看護師が静脈穿刺を目的に駆血帯を装着する方法について、主に駆血圧について検討を行った。6医療施設の看護師74名に採血を想定して各人の駆血帯を同一対象者の上腕に装着してもらった。駆血帯装着部位は静脈穿刺想定部位から平均9.1㎝中枢側で、ほぼ教科書通りであった。しかしながら、駆血圧は60㎜Hgから271㎜Hgまで広い範囲に分散しており、平均は145±56.1㎜Hgと高かった。ほぼ適切と考えられる100㎜Hg以下は20名(27%)と少なく、200㎜Hg以上の高圧で装着する看護師が16名(22%)もいた。駆血圧は1週間あたりの静脈穿刺回数や経験年数にもあまり関係が見られなかった。また巻く強さについての気持ち(少しゆるめに巻いたなど)と駆血圧間には関係がなかった。これらのことは、看護経験の長さや、静脈穿刺の頻度などが適切な駆血圧で駆血帯を装着することには役に立っていないことを示している。この原因としては、駆血帯の構造上意図した強さで装着することが難しいことなどが考えられた。
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