日本看護研究学会雑誌
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32 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 吹田 麻耶, 鈴木 純恵
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_19-5_28
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,クローン病者の食生活体験のプロセスを明らかにすることである。グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,半構造化面接を行い,継続比較分析を行った。研究参加者は,緩解期にあり,在宅で生活している成人クローン病者17名である。 
     その結果,クローン病者の食生活体験として,《体験学習による食生活の再構築》プロセスが明らかになり,これは【食事栄養療法への反応】,【再燃を起とした学習サイクル】,【自分に合った食事制限法の獲得】という3つの段階から構成された。この結果から,看護師は,プロセス上の時期とその時々の病者にとっての食事制限の意味に見合った援助を行う必要があることが示唆された。
  • 中村 恵子, 山田 紀代美
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_29-5_38
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,閉じこもり予防の核となる効果的な外出支援の確立に向けて,虚弱高齢者の外出頻度と身体・心理・社会的要因との関連を明らかにすることを目的とした。A県郊外に在住している虚弱高齢者61名を対象に,身体機能の計測と個人面接調査(他記式)を実施した。その結果,一週間の外出頻度は平均5.5±1.9日であり,33人が毎日外出していることがわかった。さらに重回帰分析により,「性別」,「近隣ネットワーク」,「近所への外出能力」,「転倒経験」,「交流頻度」が規定要因として認められ,男性であり,連絡を取りあう近隣の数が多く,近所への外出が可能であり,転倒経験がなく,一週間の交流日数が多い人ほど,一週間の外出日数が多いことが示された。以上より,今後の閉じこもり予防に向けた外出支援には,性差の特性を考慮し,外出するための身体的能力と外出目的となる社会的側面の双方からアプローチをしていく重要性が示唆された。
  • -特徴的な思考・行動パターンによる若年男性肥満労働者の類型化-
    田甫 久美子, 稲垣 美智子
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_39-5_49
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     目的:若年男性労働者の就職以降に体重増加に繋がる8要因とその背景48項目からなる6件法の「体重増加に繋がる思考・行動のパターンを見出す質問紙」を作成することを目的とする。
     方法:事業所常勤の25~35歳の男性197名を対象とした。作成した質問紙は、主成分分析を用いて検討した。結果:対象者の62.8%に就職以降3㎏以上の体重増加を認め、そのうち43.9%に10㎏以上の体重増加を認めた。主要2成分から採用した設問18項目の回答合計を用い6割以上の10㎏以上体重増加者および肥満者の判別と、そのスクリーニングが可能であり、また48項目から3タイプの肥満者の体重増加に繋がる思考・行動パターンが類型化できた。
     結論:若年男性労働者の就職以降の体重管理に用いる保健指導ツールとして「体重増加に繋がる8要因とその背景48項目の質問紙」は有用であることが示された。
  • 升田 由美子, 松浦 和代
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_51-5_62
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は医学部大学生の健康状態と,生活習慣・健康行動との関連性を明らかにすることを目的とした。調査対象はA医科大学の1~4学年の大学生413名であった。調査は無記名自記式質問紙調査法によった。調査内容は一般的背景,身体所見(身長,体重,体脂肪率,血圧値),生活習慣等であった。対象者をBMIと血圧値によって分類し,調査項目との関連を分析した。主な分析にはMann-Whitney U検定,χ2検定及び判別分析を用いた。
     男性はやせ群4.1%,肥満群20.6%であり,女性ではやせ群15.3%,肥満群7.9%であった。高血圧ハイリスク群は男性が50.0%,女性が12.4%であった。生活習慣では,男性の食事内容の問題点が明らかとなった。また男性の56%,女性の76%は自分の健康問題を自覚していた。本調査において,男性の肥満と高血圧,女性のやせの問題が存在すること,これらの対象者に対する健康教育の実施と生活指導の必要性が明らかとなった。
  • 関 美奈子
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_63-5_73
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,代謝循環器系外来看護において,外来患者へ健康の認知行動の程度を問う簡易な質問票を開発することを目的とした。調査は3回行い,3病院の臨床研究倫理審査会の承認を得た。簡易質問票は12項目で構成され,Euro QOLとSF8が基準関連妥当性を測定するために用いられた。第3の調査の対象は,146人で,年齢が61.8±11.9歳(mean±SD)だった。主成分分析(クオーテイマックス法)の結果,7項目3要素を抽出,第1要素は「疾病理解」,第2要素は「身体疲労」,第3要素は「意識的調整」と概念化した。累積寄与率は70.926%,全体のCronbach's alph係数が0.635だった。P<0.001。
     本研究は,患者の回答の負担が少なく,すばやく評価するための簡易質問票を完成した。それは,少数の人員と時間制約の中で多忙な外来看護で用いるのが可能である。
  • -急性期病棟の看護師への面接調査に基づく分析-
    犬飼 智子, 渡邉 久美, 野村 佳代
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_75-5_81
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,脳神経疾患患者の家族と看護師の関係性に影響する要因を明らかにし,家族との関係構築に向けた援助を検討することである。当該病棟に勤務する看護師6名に,家族との関わりに関するグループ・インタビューを実施し,質的帰納的分析を行った。 
     その結果,8のカテゴリーを含むコアカテゴリー『患者を介さない関係の築きにくさ』が明らかになった。看護師は,家族を【藁にもすがる思いの家族】と捉え,【一言の重みの自覚】により言動に慎重になっていた。患者とは意識障害などのため【患者との言語的交流の困難】を生じていた。これは,家族‐看護師関係において【患者を守ろうとする家族の無言の要求】【患者像のつくりにくさ】【家族との病状の受け止めの違い】に影響を与えていた。看護師は家族に【患者のことを伝える】援助を行っていたが,【家族からの評価の得がたさ】のため関係構築の困難感を増幅させていた。
     以上から,患者-家族-看護師の三者のトライアングルの構図が示された。家族との関係構築に向けて【患者のことを伝える】援助が重要と考えられる。
  • 田代 久男, 大竹 まり子, 赤間 明子, 鈴木 育子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_83-5_93
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,特定機能病院の退院支援部署における2002年2月から2007年3月までの5年間における1,525件の看護相談の実態を明らかにし,自宅退院事例と転院・施設入所事例の特徴を比較することで,効果的に退院支援を行うための示唆を得ることを目的とした。
     入院患者への支援が全体の86.0%を占め,支援事例の平均在院日数は70.1日で平均支援日数が28.0日と長く,介護保険制度の利用が最も多かった。また,自宅退院事例は,悪性腫瘍が多く,社会資源の調整や地域関係者とのカンファレンスが転院・施設入所群より有意に多かった。転院・施設入所事例は,脳血管疾患が多く,リハビリテーションなどの継続が必要な事例が多く,他機関との連絡交渉が自宅退院群に比し有意に多かった。以上より,病棟と早期に連携を図り,連携システムを定着させること,在宅療養を視野にいれた退院支援が効果的であることが示唆された。
  • 鈴木 小百合, 古瀬 みどり
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_95-5_103
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,冠動脈インターベンション後冠動脈造影検査を受ける患者を対象に,自己管理に対する自己効力感と,生活習慣,身体的状況及びソーシャルサポートとの関連を明らかにすることを目的とした。調査内容は基本属性,生活習慣,身体的状況として疾患に関連した項目,自覚症状,血液検査値,自己効力感,ソーシャルサポートである。分析の結果,年齢が65歳以上,脂肪の制限を行っている,狭心症,自覚症状がない,トリグリセライドが正常,子供の受領サポートが高い患者の自己効力感が有意に高かった。よって,冠動脈インターベンション術後患者の自己管理に対する自己効力感を高めるためには,個々の状態に合わせ,検査結果の改善を疾病管理の重要な指標として認識できるような支援,症状出現の予防及び症状出現時の対応についての指導,家族のサポートを得るための介入が必要であると考えられる。
  • 塚本 尚子, 結城 瑛子, 舩木 由香, 田中 奈津子, 山口 みのり
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_105-5_112
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,組織風土が看護師のバーンアウトに及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った一連の研究のひとつである。本稿では組織風土という視点から,看護師長のあり方に焦点を当て,スタッフの看護師長のあり方の認識とバーンアウトとの関連性を検証する。質問紙調査を行い540名の看護師から回答を得た。看護師長のあり方尺度は,⑴スタッフへの配慮,⑵看護への取り組み姿勢の2因子で構成されていた。2つの下位尺度得点には,病棟間で有意差があった。またバーンアウトとの関係では,スタッフの経験年数層によって影響に違いがみられた。中堅看護師層では,看護師長のあり方尺度の2つの下位尺度と個人的達成感との間に中程度の相関があり,看護師長のあり方認識は中堅看護師の能力の発展に関連することがわかった。新人看護師層では,看護師長のあり方の認識はもっとも肯定的であり,脱人格化や情緒的消耗感を抑制していた。
  • 清石 幸子, 大竹 まり子, 赤間 明子, 鈴木 育子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳
    2009 年 32 巻 5 号 p. 5_113-5_120
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,全国3年課程看護学校474校の学校長を対象に地域貢献の実態を明らかにすることを目的とし,182校の有効回答を得た。住民が参加できる,又は学生が行う地域貢献活動として「学園祭」が6割を占めていた。その他では,「ボランティア活動」が最も多くあげられた。
     今後の地域貢献活動の予定がないと答えたのは約3割であり,その理由は「現状の活動で十分である」「人材が不足している」を挙げていた。学校長は,地域と連携していくことが重要という考えを挙げていた者が多かったが,「踏み込めない」という考えも挙げていた。開設後年数30年以上の学校は30年未満の学校に比して,教員が「住民対象の看護相談」を有意に多く行っており, 「入学倍率」 「進学率」過去3回の「看護師国家試験合格率」が有意に高かった。30年未満の学校では,30年以上の学校に比し,教育理念,教育目標の文言に「地域」が有意に多く入っていた。
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