等主曲率線, 曲率極値線の導入により, 曲面固有の性質を視覚化し, その基本的性質について以下のことがわかった.
(1) 従来の曲率線では, 主曲率の方向しか表せなかったが, 等主曲率線は, 2つの主曲率の値を等高線で表せ, さらに, 等高線の間隔で曲面の3次成分である主曲率の変化が分かり, 曲面の曲がり具合が分かる.
(2) 曲率極値線は, 等主曲率線の尾根・谷線であり, この線に対し曲面は3次成分まで対称となる.従って, 臍点は2つの曲率極値線が接する点となり, 臍点回りの曲率線のパタンは, 曲率極値線の現れ方に依存する.
(3) 曲面の形状は, 曲率線等主曲率線のパタンにより回転面, 法線スィープ面, 楕円面の3つに分類できる.
次に, 美的意匠曲面の評価を行う美的評価線と以上の曲面の基本的性質の関係を解析することにより, 以下のことが明らかになった.
(1) 美的評価線は, 主曲率の値とその変化の具合により曲がり方が決定し, 曲率線のパタンの影響は小さく等主曲率線のパタソに依存する.
(2) 美的評価線は, シルエットパタン, 格子映像線の順に形状に敏感であり, 等ハイライト線は形状により大きく変わらない.また, 曲率極値線が複数現れたりうねりがあると, この部分に美的評価線の乱れが生じる.
以上の曲面の基本的性質は, 美的な評価にとどまらず, 自由曲面の加工, 測定, 解析 (強度, 流体ほか) など曲面の曲率が大きく影響する場合に, 幅広く応用できると考えられる.
今後は, 等主曲率線のパタンが曲面の美的評価線にどのように影響するかを定量的に解析し, デザイナの感覚に基づく曲面の創成法への展開を図る.
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