本論文では, 座標測定機を使って機械部品を測定, 評価する場合における形体計測の位置付けを行い, 形体計測における問題点を整理した.また, 形体計測における各形体の測定の不確かさの導出方法の定式化を行い, 以下の結論が得られた.
(1) 形体計測には最小二乗法による計算が適していることを示した.
(2) 形体モデルを測定点だけから決定することが難しいことを示し, モデルは簡単なほうが, 形体間演算や測定の不確かさ解析に利用しやすいことを示した.
(3) 一点測定の不確かさの意味付けを行い, その導出方法を定式化した.
(4) 測定点から形体を計算する場合の形体パラメータの信頼性評価の方法を紹介した.
(5) 形体間演算における測定の不確かさの計算方法を紹介した。
以上の検討より, 形体計測の基本的な概念が構成できたと考えている.このような基本構成から今後の検討課題としては, 以下のことが挙げられる.
(1) 一点測定の不確かさを現実の機械部品および座標測定機に即して推定する方法を確立し, 実際の推定値を求める.
(2) 形体モデルについて, 実際の機械部品および加工方法から決定する方法を検討する。
(3) 求められた測定結果および測定の不確かさを機械部品の機能および公差とどのように結び付けるかを検討し, 既存の設計, 加工, 測定の一連の生産システムとの整合性を検討する.
(4) このような計算手法を逆向きにたどることで, 測定点の位置や数を最適化する測定戦略の決定方法を検討する.
以上のように, 検討課題はたくさん残っているが, 本論文によってこれらの検討方法の基礎的な考え方を与えることができた.
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