以上の研究から次のようなことがわかった.
(1) SUS304の切削では切削速度
V=50~100m/min以上,マルエージング鋼では
V=10~50m/min以上,チタンおよびチタン合金では実験した全切削速度域(
V=0.1~500m/min)において切りくずは鋸歯型になる.
(2) 鋸歯型切りくずにおけるせん断ピッチ,すべり量は共に切込み程度の値で,マルエージング鋼,チタン合金,チタンそしてSUS304の順に大きく,SUS304のせん断ピッチ,すべり量は共にマルエージング鋼の約4倍である.
(3) せん断ピツチと切削速度の関係におけるすくい角の影響は一般に小さく,特にSUS304では影響はほとんどない.これに対し,すべり量と切削速度の関係はすくい角の影響を大きく受け,すくい角が小さいほどすべり量は大きく,特にチタンでは切削速度の大きいところでその影響は大きい.
(4) せん断ピッチは切込みの増加と共にほぼ比例的に増大する.このことは理論 (3.4節) ともよく一致する.切込みが高くなるにつれ,せん断ピッチは切削速度の上昇に伴い,SUS 304では減少の傾向が著しく,チタンでは増加傾向を示す.切込みによ'るすべり量の変化もせん断ピッチと同じ傾向の変化を示す.
(5) 鋸歯型切りくずのせん断ひずみは,SUS304のα=6°,
t=0.1mm,
V=100m/min以上で1.5~2.8,チタンでは
V=0.1~500m/minで1~2の間である.また,切込みが大きくなるとせん断ひずみは,SUS 304では減少するが,チタンでは変わらない.
(6) 鋸歯型切りくずはせん断型切りくずと同様に,被削材変形がある限界せん断ひずみに達した時に生ずるが,せん断型切りくずに比べ限界せん断ひずみ値がかなり大きく,また刃先の引張りき裂を主原因とする不連続なせん断型切りくずとは異なる.
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