土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
73 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第34巻(特集)
  • 中山 達貴, 中村 俊之, 宇野 伸宏, Schmöcker Jan-Dirk
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1093-I_1104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,速度超過による交通事故発生が多い名阪国道を対象にプローブデータを用いた潜在的な事故危険性の把握手法を構築するものである.本研究では特に商用車の走行軌跡データから速度推移に基づき,潜在的な事故危険性を伴う走行をクラスター分析により分類し,潜在的事故危険性を誘発している区間の抽出に二項ロジスティック回帰分析を適用した.分析の結果,当該路線における潜在的事故危険性の高い走行は安全な走行と比較して,速度推移に差異が生じる地点が実際の事故多発区間よりも上流側に存在してことが明らかになった.本研究で得られた知見を踏まえ,今後の交通安全対策の実施が期待される.
  • 福田 大輔, 水口 正教, 瀬尾 亨, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1105-I_1118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    道路の旅行時間信頼性評価研究の多くは,観測データ数の確保が容易な単一道路区間を対象としたものであった.他方,広域道路ネットワークにおいて旅行時間変動の長期観測を可能とするプローブ情報が近年利用可能になりつつあり,従来の区間・経路レベルでの評価から,一般的な時間空間領域(e.g. エリア・コリドーレベル)での評価への展開が期待される.本研究では,交通状態を表す諸量の一般的定義に基づいて,任意の時間空間領域で車両の走行軌跡データを集計して得られる総走行距離・総旅行時間の統計値を用い,エリアレベルで旅行時間信頼性指標を算出する方法を提案した.国内の広域プローブデータへの適用を行い,地域的・経年的差異や,交通規制の有無が信頼性に及ぼす影響を分析し,提案手法の一定程度の妥当性・有用性を確認した.
  • 原 祐輔
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1119-I_1128
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    通行権・利用権取引制度などの交通サービスのオークションシステムや予約システムにおいて,サービス供給者が利用者の顕在化していない移動需要を把握することは重要である.しかし,オークションや予約システムなどにおいて,利用者に自身の移動需要を表明してもらう方法(表明メカニズム)の違いが,最終的に表明される利用者の移動需要に大きな影響を与える可能性が存在する.そこで,本研究では,実験的アプローチに基づき,表明メカニズムの違いが利用者の選好表明に与える影響と,メカニズムデザインの出力結果(利用者割当,社会的厚生,サービス価格)に与える影響を分析する.これらの結果をもとに,選好誘出メカニズムの導入が,選好表明数や表明された支払い意思額に正の影響を与え,メカニズムデザインの出力を改善することを実証的に示す.
  • 奥嶋 政嗣, 多久和 岬, 近藤 光男
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1129-I_1137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    地方都市での自動車通勤からの転換意向形成の促進を目指し,健康意識および環境意識に対応した適切な情報提示の組み合わせに着目する.このため,徳島市の通勤者を対象とした意向調査に基づいて,健康および環境に関わる情報提示による自動車通勤からの転換意向形成の効果を把握するとともに,転換意向形成に関わる要因を特定することを目的とする.この結果,転換意向のない自動車通勤者に対しても,適切な情報提示により転換意向が形成される可能性が示された.情報提示を含まない単純要請による転換意向形成には,積極的運動意識だけでなく,環境問題への関心が影響することがわかった.情報提示による転換意向形成効果に関しては,疾患リスク,身体活動量および地球環境問題についての情報を組み合わせた提示の効果が高いことがわかった.
  • 和田 健太郎, 瀬尾 亨, 中西 航, 佐津川 功季, 柳原 正実
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1139-I_1158
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    本稿では,道路上の交通流ダイナミクスを記述する標準的な枠組みであるKinematic Wave (KW)理論の近年の発展について解説を行う.具体的にはまず,KWモデルの従来の解析法を概説しその限界を述べた上で,交通流の変分理論(VT)を解説する.また,様々な座標系(Euler座標系,Lagrange座標系)で記述される交通流モデルがVTの枠組みにより相互に関係づけられることをみる.続く章では,上記の単一道路区間(リンク)でのモデルをネットワークに拡張するための理論について記述する.ここでは,多車線道路や交差点を対象に,複数のリンクの境界面における交通流を決めるための条件や手法を解説する.
  • 早川 敬一郎, 羽藤 英二
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1159-I_1172
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    過飽和ネットワークを対象とする交通制御には,無秩序に進展する待ち行列の挙動とドライバーの経路選択行動を考慮した動的な制御手法が必要である.本研究では,まず制御の時間遅れ性に着目し,過飽和ネットワークを対象とする交通制御が満たすべき性質を整理する.次に,道路ネットワーク中の閉ループ構造に着目し,閉ループ中を延伸する待ち行列に起因するグリッドロック現象の発生条件を示す.これらの条件を考慮して,モデル予測に基づいて総旅行時間を最小化する交通制御アルゴリズムを提案し,ドライバーの経路選択行動について二通りのシナリオを考えた数値実験によって提案手法の有効性と課題を示す.
  • 谷口 綾子, 佐々木 洋典, 藤本 宣, 中原 慎二
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1173-I_1182
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,交通行動と健康状態,ならびにクルマの運転動機,交通手段への態度,五大性格特性,主観的幸福感等の心的傾向を計測する指標との関係性を把握することを目的に,神奈川県大和市職員を対象としたアンケート調査(n=479)を行った.このうち健康診断データの提供に同意した職員は180名であった.分析の結果,クルマ・バイク通勤者はメタボ該当者がそれ以外の通勤者の倍程度であった.心的傾向については,組織との関係が良好で地域のボランティアに参加しているほど,メタボや高BMIの傾向が示された.この理由としては,勤務先やボランティア等で飲食を伴う交流が盛んであった可能性が考えられる.メタボは危険因子が集積した状態であり,自覚症状が希薄であるため,健康指標として心的傾向と組み合わせた分析を行う際には留意が必要である.
  • 山口 泰斗, 田中 伸治, 田中 庸介, 金友 啓太, 中村 文彦, 三浦 詩乃
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1183-I_1190
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,市民が路上駐車によって被っている迷惑を手軽に報告できるシステムを構築し,迷惑駐車の実態を把握・可視化するとともに本システムの導入により見込まれる効果を検証することを目的とする.本研究では,市民が迷惑駐車情報を簡便に報告することができるスマートフォンアプリを開発し,これを用いて迷惑駐車情報を収集する実証実験を実施した.本システムによって,今まで110番通報に対する心理的抵抗によって見過ごされてきた路上駐車実態を把握できることが明らかとなった.また,迷惑駐車分布を可視化することによって,運転者の駐車行動変更を促し,迷惑駐車を抑止できる可能性があることが明らかとなった.さらに,交通事故の危険となるような路上駐車情報を把握するための手段としても活用でき,交通安全面に関しての寄与が期待できる.
  • 松本 隼宜, 長田 哲平, 大森 宣暁
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1191-I_1199
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    近年,地方都市の公共交通空白・不便地域の存在が,住民の自動車依存傾向を高めているものと考えられる.本研究は,宇都宮市における新規バス路線沿線住民に対して,健康意識に働きかけるモビリティ・マネジメントを実施し,その効果および個人属性に着目して健康意識と行動変容の特性を明らかにすることを目的とする.その結果,健康に関する動機付け情報は,自動車利用減少およびバス利用増加の方向に意識を変容させる効果が認められ,動機付け2か月後に環境意識は低下するものの,健康意識は自動車利用減少およびバス利用増加の方向で意識変容が継続していることが明らかとなった.また,カロリーコントロールの方法,外出目的別の行動変容意向について,個人属性による特性の違いが明らかとなった.
  • 兵頭 知, 吉井 稔雄, 柴崎 宏武
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1201-I_1209
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,沿道状況に着目し東京都と愛媛県の2地域における追突事故発生リスク要因の比較検討を行う.追突事故に影響を与える要因として,時間交通量と道路構造を考慮し道路交通センサスデータと3年間の事故データを用いて,DIDと郊外部の別にポアソン回帰モデルおよび負の二項回帰モデルを用いて事故発生リスク要因の分析を行う.その結果,東京都と愛媛県とでは,同一の要因であっても事故リスクに与える影響が有意に異なる可能性があることを示した.具体的には,DID地区の時間交通量800 [台/h・車線]以上の時間帯における事故発生リスクは愛媛県で増大するのに対し,東京都では減少すること,あるいは,信号交差点密度の増大によって,東京都ではDID地区で事故リスクが増大し,愛媛県では郊外部における事故リスクが増大することを示した.
  • 細島 豪人, 安井 一彦, 稲垣 具志, 池田 隆博
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1211-I_1218
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    近年,道路交通インフラの戦略的な維持管理,更新等により,トータルコストの縮減や予算の平準化を実現するための効果的方策が求められている.そのような中で押ボタン式信号機の点検・見直しにあたり,横断者の交通実態を踏まえた適切な設置可否,現示運用の検討が必要である.そのため本稿では,横断者の押ボタン利用特性について観測調査に基づく実態把握を行い,得られた結果に基づいたロジスティック回帰により,横断者の押ボタン利用判断に影響を与える要因を考察した.その結果,押ボタン信号機の設置を検討する際には,車両交通量だけではなく,道路構造等も考慮する必要があることを示した.また横断者の待ち時間と車両の遅れ時間の観点から,交通シミュレーションにより交通制御方式の違いを比較し,信号機設置の優位性について検討した.
  • 木下 隼斗, 阪本 真, 屋井 鉄雄
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1219-I_1232
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    首都圏空港は更なる機能強化が必要とされている.海外では従来の運用に工夫を加えた先進的な管制運用方式が多数実施されており,実際に効果が認められた施策も存在する.本研究の長期的な目標は,このような先進的管制運用方式を羽田空港などの大規模空港に導入した場合の効果を運用効率と社会的制約の双方から分析することである.本稿ではこの長期的目標を達成するため,管制指示情報を用いて羽田空港到着機の合流作業が行われるT14セクターにおける管制指示の実態や特性を定量的に分析した.さらに分析した管制指示の特性を反映させた空域シミュレータの開発を進め,先進的管制運用方式としてPoint Mergeと呼ばれる方式を再現し,到着機の処理機数の観点から簡易的な分析を行い,Point Mergeの到着機処理に関する効果を確認した.
  • 愛甲 聡美, THAITHATKUL Phathinan, 瀬尾 亨, 朝倉 康夫
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1233-I_1242
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    シェアリングエコノミーと自動運転技術は,交通の在り方を大きく変える可能性を秘めている.ライドシェアによる交通サービスの導入には,利用者の希望を集計し運行ルートおよびダイヤを決定する必要がある.本研究では利用者のアクティビティが所与であると仮定し,すべての利用者のアクティビティが満たされるようシェアリング車両のみで移動するための車両および利用者の経路決定モデルを構築した.ライドシェアサービスが有効な社会の特徴を調べるため,異なる特徴を持つ利用者のアクティビティ群と仮想のネットワークを用いて数値計算を行い,結果の比較を行った.
  • 後藤 梓, 中村 英樹
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1243-I_1250
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    ラウンドアバウトにおけるクリティカルギャップは,流入交通容量の推定に必要であるほか,ドライバーの流入判断を安全面から評価する際にも用いることができると期待され,実観測データに基づいてこれを適切に推定することは極めて重要である.そこで本論文では,諸外国における代表的なクリティカルギャップ推定手法をレビューすると共に,これらを日本のラウンドアバウトに適用し,比較を行った.これにより,手法による推定結果の差異と観測サンプル数の偏りとの関係などが把握された.また,日本で一般に用いられるRaff's method以外の手法を用いることで,クリティカルギャップの代表値だけでなく,その分布のバラツキも考慮して,ドライバーの流入判断挙動を比較することが可能になった.
  • 市井 健吾, 室町 泰徳
    2017 年 73 巻 5 号 p. I_1251-I_1258
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    道徳観を問われる社会問題は都市・交通分野をはじめとした土木計画分野を含め,私たちの身近で多く発生している.この問題解決に向け,非協力行動をとる人に対して協力行動をとるよう行動変容を促す必要があり,そのために「道徳意識」を変化させる必要がある.本研究は,特定の状況下におかれた人間の脳機能を計測するための装置としてfMRIを使用し,道徳意識を問われるような状況におかれた人間の脳機能を計測した.道徳意識を神経科学的な側面から分析した結果,協力行動と非協力行動を取る人では賦活部位に相違があることが示された.
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