Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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Editorial
原著
  • 坂野 友啓, 大和 雄, 長谷川 智彦, 吉田 剛, 有馬 秀幸, 大江 慎, 井出 浩一郎, 山田 智裕, 黒須 健太, 村上 悠介, 松 ...
    2025 年16 巻11 号 p. 1265-1271
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)患者における術後のスポーツ復帰の実態を調査し,術後スポーツ復帰にかかわる因子について解析することを目的とした.

    対象と方法:後方矯正固定術後2年以上の手術時年齢18歳以下のAIS患者170例に対してアンケートで術前・術後のスポーツ活動を調査し,X線パラメータやSRS-22rによる臨床評価を実施した.

    結果:170例中131例より回答を得た(回収率77%).術前にスポーツを行っていたのは68例(51.9%)で,うち37例(54.4%)が平均8.3ヶ月で復帰し,75.8%が同じ種目に復帰,70.3%が競技レベルを維持していた.復帰しなかった理由として「部活終了」が最多で,「手術」を理由とする者も11例あった.術前スポーツの有無による比較では,スポーツをしていた群で術前のSRS機能および痛みスコアが低かった.また,術後スポーツ復帰群では年齢が若く,LIVがL3以下の症例が少ない傾向が認められた.

    結語:術後のスポーツ復帰率は54%であり,手術治療がスポーツ復帰を妨げる一因となっていた.

  • 茶薗 昌明, 澤田 尚武
    2025 年16 巻11 号 p. 1272-1278
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:AISの装具治療の離脱開始時期に関して手指骨骨成熟度に焦点を当てて検討した.

    対象:SRS brace criteriaに準じて装具治療を開始し,骨成熟完了まで経過観察できたAIS患者20名(男:女,3:17)である.検討項目として装具装着開始時/離脱開始時/離脱開始後6ヶ月時の平均年齢・身長を計測し,Major Cobb角の推移を検討した.また,Major Cobb角の進行の有無と装具離脱時期の各骨成熟パラメーター(Risser / SSMS / TOCI)との関係についてχ2検定で検討した.

    結果:装具開始時/離脱開始時/ 離脱開始後6ヶ月の平均年齢/平均身長/ Major Cobb角はそれぞれ12.7歳/ 151.3 cm/ 29.8°,15.1歳/ 160 cm/ 30.2°,15.7歳/ 159.8 cm/ 29.2°であった.TOCI 8を装具離脱開始の目安とした場合,離脱開始後6ヶ月のMajor Cobb角進行5°未満は有意に多かった.

    結語:TOCIによる骨成熟度評価を用いることで適切な装具離脱開始時期を前向きに知ることが可能となる.

  • 金山 修一, 鷲見 正敏, 金村 在哲, 宮本 裕史
    2025 年16 巻11 号 p. 1279-1286
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:後頭胸椎固定術(occipitothoracic fusion, OTF)後の代償性脊椎アライメント変化について調査した.

    方法:OTFを施行した16例を対象とした.頚椎および全脊椎矢状面アライメントの経時的変化を調査し,調査時に前方視困難になった症例(NG群)と前方視可能であった症例(G群)で各値を比較した.

    結果:術前T1Sは29.7°,COG-C7 SVAは28.4 mmで,術後は有意の変化を認めなかったが,調査時に36.7°,43.9 mmと増加した(p<0.01).調査時NG群は6例,G群は10例で両群間に術前各値の差はなかったが,術後はCOG-C7 SVAがNG群で47.4 mmとG群21.3 mmより大きく(p<0.05),調査時はT1Sもそれぞれ45.5°,31.4°とNG群が大きくなった(p<0.01).術後COG-C7 SVAが35 mm以上であった8例中6例が前方視困難となったのに対し,35 mm未満の8例は全例前方視可能であった(p<0.01).

    結語:OTF例では経過中に頚椎が前傾する.特に術後COG-C7 SVAが35 mm以上の症例では調査時にT1Sがより増大して頚椎前傾が強くなり,前方視困難が生じやすい.

  • 平野 徹, 和田 簡一郎, 飯田 尚裕, 関 庄二, 谷口 優樹, 辻 太一, 寺井 秀富, 中村 直行, 播广谷 勝三, 三澤 治夫, 村 ...
    2025 年16 巻11 号 p. 1287-1293
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯症に対する運動療法の本邦の現状は明らかでないため,アンケート調査を行った.

    対象と方法:回答者基本情報,側弯症に特化した理学運動療法(以下PSSE)に対する認知,所属機関や近隣医療機関・非医療機関での実施状況,などについて日本側彎症学会員に回答を依頼した.

    結果:193/656名(29%)より回答を得た.回答者の多くは医師(95%)で,経験年数は20年以上が70%,所属機関は大学病院が47%であった.従事する治療内容は70%で手術治療が含まれ,理学療法は15%であった.PSSEの認知率は77%であった.PSSEの効果については,肯定的回答22%,否定的回答35%,「どちらとも言えない」が43%であった.PSSEを実施している回答者の割合は12%であった.近隣で運動療法(PSSE含む広義)/PSSEを施行している医療機関・非医療機関を「知っている」と回答した割合は,医療機関31%/16%,非医療機関36%/17%であった.

    結語:PSSEは回答者の約8割に認知されていたが実際に施行している会員は少なく,有効性の評価は分かれていた.運動療法は非医療機関でも医療機関と同等かそれ以上に行われている可能性が示唆された.

  • 撫井 貴弘, 川崎 佐智子, 定 拓矢, 重松 英樹
    2025 年16 巻11 号 p. 1294-1299
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当院は思春期特発側弯症(AIS)に,硬性装具の大阪医大式(OMC)装具を用いている.OMC装具について患者アンケート調査を行い,①骨盤固定ベルトの前面化,②腋窩パット素材の変更,③装具軽量化を行った(改良型OMC装具).本研究の目的は,改良型OMC装具の治療成績を従来型と比較すること.

    対象と方法:本研究は後ろ向き研究.2014年10月~2022年12月に装具治療を行ったAIS患者を対象とした.従来型(C群)と改良型(M群)に分けた.悪化の定義は,装具直前と装具終了後Cobb角で6°以上悪化または装具終了前に手術に移行したものとした.C群とM群の側弯悪化抑制割合について検討を行った.

    結果:装具治療したAIS患者は95例で,最終的にC群35例,M群27例で検討した.装具直前平均年齢は,C群で13.4歳,M群で12.8歳とM群で若年であった(P=0.029).2群間で側弯悪化抑制率に有意差はなかった(C群65.7%:M群63%).

    結語:OMC装具の矯正コンセプトは変えず,装具の形状・素材を変更した.改良型OMC装具は従来型OMC装具と比較し治療成績に差はなかった.

  • 櫻井 伸哉, 青木 一治, 渡辺 裕貴, 長谷川 まひる, 町野 正明, 小原 徹哉
    2025 年16 巻11 号 p. 1300-1305
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    背景:Adult spinal deformity(ASD)患者の立位バランスは,Sagittal vertical axis(SVA)が100 mmを超えると悪化するとされているが,術前後の立位バランスについて検討しているものは少ない.今回,SVA 100 mm以上を有するASD患者に対して手術前後の重心動揺を比較し,術後の改善効果について検討した.

    対象と方法:術前SVA>100 mmを有したASD女性患者で,中下位胸椎~骨盤までの矯正固定術を施行し,術後1年時にEOSでの全脊柱の撮像と重心動揺の測定が可能であった13例(66.7±7.1歳)を対象とした.重心動揺は,60秒開眼の閉脚立位にて外周面積,総軌跡長,左右軌跡長,前後軌跡長,左右動揺平均中心変位,前後動揺平均中心変位を計測し術前と術後1年を比較した.

    結果:SVAは158.5±40.0 mmが31.2±33.3 mmに減少(p<0.01).重心動揺は総軌跡長,前後軌跡長,前後動揺平均中心変位が有意に減少した(p<0.02).

    結論:ASD患者は脊椎矯正固定術によりSVAが改善し,重心動揺も安定した.

  • 田仕 英希, 大橋 正幸, 澁谷 洋平, 佐藤 雅之, 久保田 美緒, 荒引 剛, 川島 寛之
    2025 年16 巻11 号 p. 1306-1311
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)における椎体変形を三次元的解析した報告は散見される.我々は椎体尾側終板を基準とした三次元座標系を用いた三次元的解析法を考案し,有用性を検討した.

    対象と方法:胸椎AIS(Lenke type 1,2)に対する手術例40例を無作為抽出した.術前CT画像と画像解析ソフトを用いて,主胸椎カーブ頂椎(AP)の頭尾側2椎体を含む5椎体(AP,AP±1,2)について,矢状面,冠状面の傾き(SaT,CoT),頭尾側終板のなす角(EPA)を計測した.椎体間の三次元パラメータの比較,三次元パラメータとCobb角の相関を解析した.

    結果:CoT,EPAともにAPとAP-1で有意に大きく,SaTはAPとAP+1で有意に小さく,前弯化していた.EPAは全椎体でCoTと有意な正の相関を認めたが,SaTとは有意な相関を認めなかった.CoTとEPAは立位Cobb角と有意な相関を認めなかったが,側屈Cobb角とは有意な正の相関を認めた.

    結語:椎体変形は頂椎を中心に大きくなっていたが,立位Cobb角には椎体変形より椎間板変形の影響が大きいと考えられた.

  • 黒須 健太, 大和 雄, 長谷川 智彦, 吉田 剛, 坂野 友啓, 有馬 秀幸, 大江 慎, 井出 浩一郎, 山田 智裕, 松山 幸弘
    2025 年16 巻11 号 p. 1312-1317
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形手術に対する矯正固定術における周術期出血量の定量化リスク因子について検討した.

    対象と方法:2019年12月から2023年11月までに行われた成人脊柱変形手術283例中胸椎から腸骨まで固定した125例を対象とした.

    患者背景(年齢,性別,BMI,抗血栓薬・腎不全・高血圧・糖尿病の有無),手術関連因子(総手術時間,総術中出血量,手術方法,術後ドレーン出血量,周術期出血量)を検討した.また平均周術期出血量以上/未満の症例を比較し出血量に係るリスク因子について検討した.

    結果:平均年齢70.9歳,抗血栓薬継続7例であった.平均術中出血量は971.3 ml,平均手術時間は480.1分,平均ドレーン出血量は1,206.8 mlであり周術期平均出血量は2,178.1 mlであった.周術期出血2,200 ml以上の症例ではBMI高値,骨切り,手術時間に有意差があったが抗血栓薬使用には有意差がなかった.

    結語:成人脊柱変形手術の周術期出血量を算出した.高BMI,骨切り,手術時間は周術期出血量を増やすリスク因子である可能性がある.抗血栓薬の継続使用による周術期出血への影響は今後さらなる検討を要する.

症例報告
  • 松村 郁杜, 茶薗 昌明, 澤田 尚武
    2025 年16 巻11 号 p. 1318-1323
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル フリー

    症例:68歳,男性

    主訴:腰痛

    現病歴:10年前から腰痛を自覚し,近医で投薬加療を受けていた.症状が増悪したため,2023年4月に当科を紹介受診した.LLIF手術のため術前造影CTを施行したところ両側の巨大腎囊胞を認め,下行結腸を著明に圧排していた.泌尿器科で囊胞穿刺とエタノール硬化療法を施行した.初診から1年後に腎囊胞が縮小したためLLIF手術を施行した.術後,腰痛は改善して独歩可能となったが術後6ヶ月で後方インプラントの皮下突出とともにL2/3偽関節と椎体破壊を認めた.同年10月に後方固定延長術後に前方からケージ抜去,病巣掻把と腸骨骨移植を追加し,腰背部痛は改善し,経過良好である.

    結語:本症例では術中検体培養検査では陰性であったが病理検査で感染性疾患を疑う所見を得ることができた.当科ではLLIF手術を施行する場合は原則的に全例で術前に造影CTを施行していたため,巨大腎囊胞を同定することができた.LLIF手術では腹部内臓系異常や血管走行の同定のためにも術前造影CTは必須であると考える.

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