水環境学会誌
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36 巻, 4 号
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原著論文
  • 宮本 紫織, 福田 正幸, 香河 典子, 新田 祐子, 吉田 紀美, 大倉 敏裕, 四宮 博人
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 36 巻 4 号 p. 107-113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    グリホサートは,我が国で最も生産量の多い除草剤であり,水道水質基準項目の水質管理目標設定項目に位置づけられている。その分析法は,プレカラム又はポストカラム誘導体化HPLC法が採用されているが,操作が繁雑で多くの労力を有する。
    今回,我が国の繁用農薬であるグリホサート,グルホシネート,ホセチル及びそれらの主要な分解生成物について,液体クロマトグラフ誘導結合プラズマ質量分析法(LC/ICP/MS)による分析法を検討した。その結果,溶離液にギ酸を用いたイオン交換カラムによる分離を行い,リアクションガスに酸素を用いてPOを定量イオンとして測定する方法により,直接注入による簡易迅速な同時分析が可能となった。検量線の直線性は,0.02∼30 mg·L-1の範囲で相関係数0.999以上となり,河川水及び地下水における添加回収試験を実施した結果,回収率は91.6%以上,相対標準偏差は3.8%以下と良好な結果であった。
  • 隅倉 光博, 田崎 雅晴, 岡村 和夫, 和田 信一郎
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 36 巻 4 号 p. 115-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    活性炭を用いた溶存硫化物の酸化処理促進技術は,酸化処理後の硫黄形態やその存在比,および酸素消費量について,まだ十分に明らかにされていない。そこで,溶存硫化物の酸化前後の形態と酸素消費量を明らかにするために,バイアル瓶を用いたバッチ式の酸化処理実験を行った。その結果,活性炭の触媒作用によって硫化水素イオンは,硫酸イオン,チオ硫酸イオンに酸化されて溶存していることが確認できた。次に,X線光電子分光分析装置を用いて,活性炭表面にある元素とその電子状態を分析した結果,活性炭に保持された硫黄成分は,元素状硫黄であることが示唆された。また,酸化処理前後の硫黄と酸素の化学量論について計算した結果,それぞれ84%と82%の物質収支を推定することが出来た。さらに,酸化後の硫黄成分の生物毒性について調べた結果,硫化水素イオンは活性炭を用いた酸化により,毒性の低い酸化物になっていることを確認した。
調査報告
  • 稲村 成昭, 山崎 宏史, 西村 修
    原稿種別: 調査報告
    2013 年 36 巻 4 号 p. 123-127
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究では浄化槽の法定検査結果による浄化槽処理水BODと浄化槽内水温のデータ16万件を検査月ごとに集計して解析した結果から,処理水平均BODへの水温による影響は,現在の水温ではなく,過去4~5ヶ月から現在までの水温の履歴を含めた移動平均水温に高い直線的な相関があった(平均水温が11~25℃の範囲において)。このことは,現在の浄化槽の状態は一定の過去から現在までの水温の累積によって左右されていることを意味している。
    また,これまでの調査データでは,現在の水温が低い程,処理水BODも低いといった現象も認められたが,移動平均水温として評価することにより,浄化槽の処理性能に対して,これまでの想定通り,水温が高いほど,処理水BODが低くなることが改めて確認された。
  • 宮城 俊彦
    原稿種別: 調査報告
    2013 年 36 巻 4 号 p. 129-135
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    沖縄県における地下水は,近年では,飲料用としての需要は減ってきてはいるものの,依然として住民の生活を支える上で重要である。地下水の水質については,水質汚濁防止法の規定に基づき常時監視が行われ,概況調査と継続監視調査で構成されている。沖縄県が行った平成22年度の継続監視調査では,砒素が7地点中4地点で環境基準値を超過,総水銀が3地点全て検出下限値未満,低沸点有機化合物(VOCs)が4地点で検出下限値未満または環境基準値以下,硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が1地点で環境基準値以下であった。VOCsと硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の発生源については人為的汚染として解釈されたが,砒素及び総水銀については,調査の結果,自然由来であることが示唆された。砒素については,還元状態の地下水に土壌に含まれる鉄が溶出する際に鉄に吸着していた砒素が溶出するタイプ((1)タイプ)と,弱アルカリ性の地下水に接した際に鉱物中の鉄に吸着していた砒素が溶出するタイプ((2)タイプ)とに分けられた。総水銀については,断層に沿って地下深部から上昇してきた水銀蒸気による可能性が高い。平成元年度から22年度までの調査結果は,将来の沖縄県の地下水の水質を考える上で重要な参考資料となる。
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