水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
37 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 佐野 貴洋, 遠藤 祐子, 林 文音, 芳賀 弘和
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 4 号 p. 119-128
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    中国山地中部の源流域河川における融雪期の栄養塩濃度の特徴を明らかにするために,水文観測と週に1度の河川水採取を通年で行った。調査流域では1月や2月であっても一時的に融雪が進み流量が上昇した。無雪期(5~8月と9~12月)と比較し,融雪期(1~4月)における溶存態の窒素(DN)とリン(DP)濃度は高く,懸濁態の窒素(PN)とリン(PP)濃度は同等かやや低かった。融雪期の河川水のDNとDP濃度には,土壌からの溶脱水よりも積雪からの融雪水の方が強く影響すると推察された。融雪期のPNとPP濃度には,河道内での輸送可能な土砂の蓄積量低下が反映されることが示唆された。結論として,中国山地中部の森林流域においてDN,DP,及びTNの年流出負荷量を推定する際に,融雪期の濃度を無雪期のそれで代用すると過小評価につながること,及び融雪期の実地調査では1~3日に1度の頻度で河川水採取が必要であることが示された。
  • 徳村 雅弘, 種部 悠未, 川瀬 義矩, 柳沢 幸雄
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 4 号 p. 129-138
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    フォトフェントン反応を用いたSMX(スルファメトキサゾール)の分解および無機化実験を行った。初期全鉄イオン濃度が16 mg•L-1,初期過酸化水素濃度が500 mg•L-1,主波長を352 nmとする紫外線照射下で,初期SMX濃度176 mg•L-1を5 minで完全に酸化分解できた。40 minで初期TOC(全有機炭素)濃度83 mg•L-1の65%を無機化できた。初期全鉄イオン濃度が5 mg•L-1以下では,濃度の上昇に伴いSMXの分解速度定数は上昇したが,それ以上では上昇しなかった。反応中の有機酸濃度の経時変化を測定することにより,OHラジカルとの反応性が低い有機酸が系内に蓄積することを確認した。また,実排水中における夾雑物質とSMXのOHラジカルとの反応速度定数の比較により,実環境中の濃度が極低濃度である医薬品成分の場合,夾雑物質の影響を大きく受ける可能性が示唆された。
  • 大道 優平, 中原 真哉, 平岡 喜代典, 川本 康功, 寺脇 利信, 岡田 光正
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 4 号 p. 139-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,窪地の埋め戻し場所に出現したアマモの遺伝的多様性と種子供給源の解明を目的に,岩国市地先及び広島湾周辺海域においてアマモの生育状況調査とマイクロサテライトマーカーによる遺伝子解析を行った。その結果,主な種子生産区域は能美島,大畠-神代,宮島地区と考えられた。1遺伝子座当たりの平均アレル数と平均へテロ接合率を比較すると,埋め戻し場所のアマモは天然アマモ場と比較して大きな差はなかった。ペアワイズFstは0.000~0.037の範囲にあり,アマモ場相互の盛んな遺伝的交流が考えられた。アサインメントテストでは,埋め戻し場所のアマモは近隣のアマモ集団だけでなく,15 km以上離れたアマモ集団との間でも最大尤度を示した。以上の結果から,埋め戻し場所のアマモは天然アマモ場と同様な遺伝的多様性をもち,種子供給源として近隣のアマモ場だけでなく,広島湾内にある遠方のアマモ場も寄与することが考えられた。
  • 生地 正人, 井上 雄二, 末次 綾, 奥村 朋子, 出濱 和弥, 多川 正, 中矢 雄二
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 4 号 p. 145-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    傾斜土槽法は,低エネルギ-消費型の好気性浄化法である。この浄化機構を解明するためにスポンジ担体の傾斜土槽で実験を行った。本実験は,20~50分の水理学的滞留時間で有機性汚濁物質と総窒素(T-N)・総リン(T-P)が同時に浄化されることを示した。排水が傾斜土槽を浸透流下すると,水と有機性汚濁物質は分離される。溶解性の有機性汚濁物質は,生物学的吸着作用で分離され,これに要する時間が20~50分である。冬季を除けば槽内の生物学的浄化活性は高く,槽内部に捕捉された有機物は,土壌にみられる生物群によって分解される。槽重量は冬季に増加し,春季に減少した。T-N・T-P浄化は,生物学的な資化による。さらに,T-Nは硝化・脱窒反応で浄化され,T-Pはリンを含む生成土壌が槽内に残留することで浄化される。本法では,水と汚濁物質の分離,有機物の分解,汚泥の減量化,T-NとT-Pの浄化が同じ槽内で同時進行する。
  • 菱田 尚子, 永淵 修
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 4 号 p. 155-161
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    水銀沈着量の地域的な差異を明らかにするため,琵琶湖流域内の環境条件が異なる4地点において,大気降下物中総水銀濃度の調査を行った。観測期間中の平均総水銀濃度は,5.98±1.66 ng•L-1~8.76±3.29 ng•L-1の範囲であり,各地点の年間沈着量(2012年)をみると,最大は北部における17.5 μg•m-2,最小は東部の10.4 μg•m-2であった。琵琶湖集水域は南北に広く,環境条件や土地利用も多様であることから,地点的な汚染の程度が異なると考えられる。モニタリング結果から,大気降下物による琵琶湖湖面への直接水銀負荷量(2012年)を算出すると9.04±2.00 kg•year-1となった。大気降下物による琵琶湖への水銀負荷を詳細に評価するためには,沈着メカニズムの解明や多地点での長期的なモニタリングが重要であることが明らかになった。
ノート
feedback
Top