鉄鋼製造工程で発生する高炉スラグを冷却する吹製水は,CaOを含有する高炉スラグと接触するためアルカリ性と考えられるが,実際に給水槽から採取した吹製水のpHは中性であった。そこで,吹製水中の微生物の硫黄酸化反応によってpHが低下するという仮説をたて実験的に検証した。給水槽から採取した吹製水をpH10以上に調整し,チオ硫酸ナトリウムを添加して60°Cで処理すると,硫酸イオンが生成され,pHが低下した。チオ硫酸ナトリウムで処理した吹製水の次世代シーケンス解析では,
Thermi門の細菌が83%と優先種になっていた。以上の結果は,高温かつアルカリ性で硫黄化合物を酸化できる
Thermi門の細菌が,高炉スラグから吹製水に溶出した硫黄化合物を酸化して硫酸イオンと水素イオンを生成し,アルカリ性と考えていた吹製水のpHを中性化している可能性を示した。この微生物反応は,吹製水の排出に必要な硫黄化合物の酸化と中和を進めていた。
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