水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
38 巻, 6 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
研究論文
  • 八尾 泰子, 小田島 千子, 井澤 智生, 薮田 和哉
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 38 巻 6 号 p. 167-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    鉄鋼製造工程で発生する高炉スラグを冷却する吹製水は,CaOを含有する高炉スラグと接触するためアルカリ性と考えられるが,実際に給水槽から採取した吹製水のpHは中性であった。そこで,吹製水中の微生物の硫黄酸化反応によってpHが低下するという仮説をたて実験的に検証した。給水槽から採取した吹製水をpH10以上に調整し,チオ硫酸ナトリウムを添加して60°Cで処理すると,硫酸イオンが生成され,pHが低下した。チオ硫酸ナトリウムで処理した吹製水の次世代シーケンス解析では,Thermi門の細菌が83%と優先種になっていた。以上の結果は,高温かつアルカリ性で硫黄化合物を酸化できるThermi門の細菌が,高炉スラグから吹製水に溶出した硫黄化合物を酸化して硫酸イオンと水素イオンを生成し,アルカリ性と考えていた吹製水のpHを中性化している可能性を示した。この微生物反応は,吹製水の排出に必要な硫黄化合物の酸化と中和を進めていた。
調査論文
  • 古川 隼士, 野中 尋史, 平岡 透, 高見 徹, 亀野 辰三
    原稿種別: 調査論文
    2015 年 38 巻 6 号 p. 173-180
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,大分川の将来の河川管理における衛生指標の数値目標を定めるための情報を蓄積することを目的として,ふん便指標細菌(大腸菌群,ふん便性大腸菌群,大腸菌,腸球菌)の存在実態調査を実施した。調査は大分川の上流から下流の全17地点とし,期間は2013年12月~2014年11月に毎月一回の調査(計12回)を実施した。環境基準項目である大腸菌群数は,多くの調査地点において高濃度で検出された(平均1.1×104 MPN·100 mL-1)。また,他の3種の細菌も高濃度で検出される場合があった。各細菌濃度は夏季に高くなる傾向で,温泉施設が点在している上流部において細菌濃度の変動が大きかった。ふん便指標細菌間の相関分析では,上中流部ではほとんどの項目間で相関がなかった一方で,下流部ではすべての項目で0.38以上の相関係数を示した。細菌濃度と高い関連性を示す水質項目はなく,細菌学的水質を一般水質から推定することは困難であることが示唆された。
  • 横田 恭平
    原稿種別: 調査論文
    2015 年 38 巻 6 号 p. 181-188
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    2014年10月に大分川を水源とする水道水からカビ臭が発生し,その発生源は大分川の支流である芹川に建設された芹川ダムが原因であると大分市によって公表された。そこで,本研究では芹川ダムでの2014年とそれ以前の水質特性を比較し,カビ臭が発生した原因について化学的指標を用いて推測することを目的とした。カビ臭の発生原因である2-MIBは,2014年に芹川ダムをはじめ,下流域でも高い濃度を示した。芹川ダムでの表層と下層の水温差から,11月から翌年1月までの間で水温成層は破壊されていると考えられる。しかしながら,2014年のアンモニア態窒素の挙動は,11月まで2013年までと同じ傾向を示したが,翌2015年1月は異なり,2014年11月よりさらに濃度が上昇する結果となった。以上のことから2014年は,ダム内で貧酸素の状態が長く続いたことにより,本来は分解される2-MIBも完全には分解されない状態で下流にまで到達した可能性がある。
feedback
Top