茶種子を川砂にまき,一部を暗所に,一部を明所で発芽させて,幼苗の部分別に窒素成分の構成とアミノ酸,カテキンの比較を行なつた。
茶の特異成分であるカフェインは根・種子には全く含有されなかつたが,暗所で生育した葉。茎では明所の1.8~3倍の濃度があり,カフェインの生成には日光を必要としないことが再確認された。
茶苗の窒素成分は葉に最も多く含まれ,根・茎・子葉の順にはるかに少なかつた。窒素の形態別の構成では,明所の葉・茎の全窒素の1/3,暗所の葉と明所の根ではほぼ1/2,子葉は明暗とも2/3,暗所の茎と根は約3/4が可溶態であつて,暗処理は一般に可溶態の比率を増す傾向を示した。こめ際増減の変動はカフェイン窒素よりも残余可溶性窒素に著しかつた。
苗個体当たりの窒素区分の絶対量からみると,暗所のものは種子中の各区分とほぼ匹敵する量であるが,明所のものは種子の可溶態窒素の1/10はカフェイン窒素となって,その大部分は葉に集積せられ,また1/3は葉・茎・根に移行して不溶態となつているように認められた。
ペーパークロマトグラフィーによつて検出したアミノ酸およびアミドは未詳のものを除き16種で,茶の特異アミドであるテアニンは,種子にはごくわずかしか含まれていないが,発芽すると明暗所とも苗の各部に含まれ,特に根に最も多く含まれるようになつた。これと反対にグルタミン酸は種子の含量は高いが,発芽とともに減少し,特に根にはほとんど検出されなくなつた。
そのほか明暗処理にかかわらず,常にすべての部位に見出されたものはアラニン,アスパラギン酸,アルギニンであつて,前二者は葉・茎に多く,後者は根に最も多かつた。グルタミン,トレオニンもまたほとんど常成分とみなされるもので,前者は茎に多く,後者は各部位とも暗所に多かつた。アスパラギンも一般の作物と同様に暗所に多い傾向があつた。
カテキンについては,明所の葉には(-)エピガロカテキンとそのガレート,(-)エピカテキンガレート,(±)ガロカテキン,没食子酸,テオガリンが見出され,始めの二者が多かつた。明→暗処理によつてカテキン類は減少しことに(-)ラヱピガロカテキンガレートは(-)エピガロカテキンよりも少なくなつた。暗→明処理は明所のものと同様であつた。
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