茶業研究報告
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1970 巻, 32 号
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  • 安間 舜, 松下 繁, 鳥屋尾 忠之, 家弓 実行
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 1-9
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    A new tea variety named “Benihikari” is a clone for black tea. It was bred by the Tea Breeding Laboratory of Makurazaki Branch, Tea Research Station, and registered with M. A. F. as a superior variety in May, 1969.
    “Benihikari ” is originated from the F, hybrid of “ Benikaori ” (the Assam hybrid) x Cn 1 (the China variety).
    Mature leaves of this variety are large in size, elliptic in shape and light-green in colour. “ Benihikari ” is a late variety with a medium growth habit and the plucking time is a few days earlier than that of “ Benihornare.”
    The superior characters of this variety are cold resistance, vigorous growth, marked quality and high yield. The yield is as much as that of “Hatsumomiji” which produces the highest yield of black tea.
    It has the finest quality, especially in aroma. The cutting strikes root readily giving about 90% success.
    From the results of the trials which were made in different environments, it is concluded that “Benihikari ” is a suitable variery in southwest Japan.
  • 鳥屋尾 忠之
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 10-13
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    紅茶用品種はつもみじとはつもみじの次代との戻し交雑を行ない,クロロホルムテストによって発酵性を調べたところ,四つの組合せで,3:1の分離比で,正常個体と不発酵個体が出現することが確かめられた。
    この不発酵性が,1個の遺伝子nfで支配されているとすれば,はつもみじはこの遺伝子のヘテロ個体で,その遺伝子型はnf/+であり,不発酵個体はホモ型で,nf/nfの遺伝子型となる。
    このことから,供試した親品種の範囲の発酵性は,1座位の複対立遺伝子で支配され,nf遣伝子はこれの一突然変異であると推定される。
    不発酵個体は,クロロホルムテストで全く赤変せず,黄緑色のままであり,ポリフェノールオキシダーゼ活性は,ほぼ完全に失われており,これは発酵性に関する遺伝的閉鎖と思われる。
    このような,不発酵個体は,いわゆる弱発酵個体とは,明らかに区別ができる。また,不発酵個体は枕崎支場の多数の保存系統の中からは発見されていない。
    不発酵個体と正常個体の間には,樹勢ではっきりした差異があり,不発酵個体が劣ることが確かめられた。
  • 採種時間ならびに貯蔵方法と茶種子の発芽
    勝尾 清, 鳥屋尾 忠之, 家弓 実行
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 14-19
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    交配種子の発芽率の向上と,発芽の促進を図るために,日本種,アッサム雑種,アッサム種を用いて,採種適期のは握ならびに種子貯蔵方法の検討を行なった。
    採種適期を,茶樹の種類によって分ければ,日本種が最も早く,アッサム雑種がこれにつぎ,アッサム種が最もおそく,その差は2ヵ月に及んだ。また,同じ種類の中でも,系統によって1ヵ月程度の早晩が認められた。
    交配種子の採種適期は,種子落下の直前であり,この時期の種子は,発芽率が高く,発芽も早い。これに対して,未熟な種子の発芽はおそく,不ぞろいで,発芽率も低かった。しかし,未熟種子でも,採種適期の前40~50日以内なら,ポリエチレン袋で低温貯蔵(5~10℃)することにより,完熟なものに近い発芽をすることがわかった。
    紙袋貯蔵では,未熟種子ならびにアッサム種で特に発芽率が低下しやすいことが指摘され,交配種子で発芽率の低下する原因は,採種後の種子の乾燥と,アッサム種ならびに未熟種子を扱う場合があることによるものと考えられた。
    完熟した種子を,ポリエチレン袋で低温貯蔵(5℃前後)すれば,2ヵ年以上の長期貯蔵ができることがわかった。
  • 種子予措による発芽促進の効果
    勝尾 清, 鳥屋尾 忠之, 家弓 実行
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 20-25
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    交配種子の発芽率を高め,発芽をそろえるために,慣行法では種した1961年交配種の発芽調査を行なうとともに,種皮処理,浸水,温度を変えた貯蔵ならびに催芽処理などの予措に関する試験を行なった。
    1961年交配種の発芽調査の結果,発芽率は組合せによって0%~93.6%まで大きく変異した。発芽個体の90%以上が発芽した日は5月25日~7月13日までで,約50日の開きがみられ,同一組合せ内でも発芽の遅速に大きな個体間差が観察された。
    1965年の種皮処理試験では,はく皮処理が発芽促進に顕著な効果があった。発芽率は無処理では明らかな品種間差があるが,はく皮処運ではどの品種も20日前後で100%に近い発芽率を示した。なお,落下種子のはく皮後の浸水処理は発芽促進に効果がなかった。
    1968年の種皮処理と貯蔵温度を変えた試験では,発芽率,樹高および樹高の標準偏差とも種皮処理の主効果で有意差が認められ,いずれもはく皮処理の効果が大きかった。貯蔵温度による予措は,発芽および樹高に対して効果が認められなかった。
    種子をポリエチレン袋に入れて20℃の定温器内で催芽させ,催芽した種子を低温器(6℃)内で逐次貯蔵し,全個体の催芽が終わった後には種すれば,置床後の発根はきわめて早くしかも均一で,はく皮処理に劣らない結果がある。このことから,多数の交配種子を扱う場合には,この催芽処理法が,発芽の促進と均一化のためにきわめて有効であることがわかった。
  • 刑部 勝, 高城 親義
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 25-31
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    著者らは前報で京都府の茶園におけるケルセンならびにエストックス抵抗性カンザワハダニの地理的分布について報告した。本報では京都府相楽郡山城町のケルセン抵抗性ダニ発生茶園における薬剤散布歴について調査した結果を報告する。
    1.調査園でのケルセンの使用開始は1961~'65年であった。
    2,ケルセンの使用開始時にはEPNやフェンカプトンなどの有機リン剤がカンザワハダニ防除のために使われていた。そしてその効果はケルセンも含めて良好であった。
    3,しかしながら,一部の茶園では1965~'66年ころからケルセンの効力減退が生じた。この現象はケルセンの使用開始から3~4年後に現われた。そしてこの期間中におけるケルセンの散布回数は約20~30回またはそれ以上であった。
    そこで調査園におけるカンザワハダニのケルセン抵抗性とケルセンの散布回数との関係を本報と前報の結果でみると,ケルセンの散布回数が10回未満の茶園では抵抗性が弱,約20回では抵抗性が中,そして約30回またはそれ以上では抵抗性が強であった。
    4,ケルセンの使用開始から効力低下までの間には多くの種類の薬剤が使用されてきたが,ケルセンの散布回数が特に多かった。
    5,1967年現在,ケルセン抵抗性ダニ防除のために依然としてケルセンを使用している。しかしながら,その効果は十分でない。
    ケルセン抵抗性ダニの防除にアクリシッドが有効のようであるが,この薬剤は茶の若葉に薬害が生ずるために茶芽の生育期間には使用できない。
    6,調査園のカンザワハダニはケルセンのほかにフェンカプトン,EPN,そしてパラチオンなどの有機リン剤に対しても抵抗性をもっている。そのために有機リン剤とケルセンの複合抵抗性の発現が考えられる。しかしながら,有機リン剤とケルセンとの間の交差抵抗については明りょうではなかった。
    7,以上の結果から,調査園におけるカンザワハダニのケルセン抵抗性の発達は,ケルセンの過重散布に起因するものと考える。
  • 平峯 重郎, 池ケ谷 賢次郎
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 32-40
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    静岡県掛川市の茶園開墾地に露出した第三紀層の青灰色砂泥岩層(大日層)の化学的性質について調べた。その結果を要約すると,次のとおりである。
    1,青灰色砂泥岩に由来する開墾地土壌はきわめて酸性が強く,多量の酸性硫酸塩を含んでいた。そして,定植された茶樹やタバコは枯死した。
    2,水溶性硫酸塩は主として硫酸マグネシウムであった。
    3,これら開墾地土壌は透水性がきわめて不良であるので,水溶性硫酸塩は容易に溶脱しなかった。
    4,これらの開墾地土壌を茶園にするためには理化学性を改良しなければならないが,これはきわめて困難なことである。
    今後,開墾する場合には精密な地質調査が必要である。
  • 断続通風による生葉保管
    加藤 好武, 西条 了康, 桑原 穆夫, 斎藤 弘
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 41-45
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    The storing method of piled green tea leaves (about 200 kg. 1 m2.) by discontinuous aeration (20 min. blowing, 40 min. stop) was examined with regard to the maturity of leaves. The temperature of piled leaves (the height of pile was 140-160 cm. at first) during the storage was measured. The temperature difference between the upper and lower part of piled young leaves was larger(at about 10°C) than that(at about 5°C) of mature leaves. The height of piled leaves generally decreased to approximately 70% of the initial height after the discontinuous aeration of 24 hours. But when wet leaves were piled, no decrease of height was observed. The decrease of height was larger in young leaves than in the mature leaves of the same plucking season. The variation of air velocity in each part of piled leaves was remarkable in the case of young leaves, therefore it was presumed that young leaves were packed more compactly in comparison with the mature leaves during the storage. From the organoleptic test of the tea which was made from preserved leaves, no significant deterioration was observed. But when the young leaves were preserved under higher atmospheric temperature, it should better to blow more volume of air in order to protect deterioration which was caused by vigorous respiratory heat of tea leaves.
  • 中川 致一
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 46-52
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.上級,中級,下級煎茶,玉露の1煎,2煎,3煎液を調製し,15人のパネルによる滋味の評価を行なったところ,5%の有意水準で玉露,上級,中級煎茶の1煎がうまいこと,3煎はすべてまずいこと,上級煎茶の2煎はうまいと考えられることが判明した。
    2.個々のパネルの評点についてみると,判定ミスではないかと思われるばらつきがみられたが,総合した結果ではきわめて妥当な線が得られた。また,パネルの滋味評価を全体的にみると一致度が高かった。
    3.われわれがうまいと思う煎汁は,カテキン,アミノ酸類,カフェインを多く含み,しかも,アミノ酸類の比率の高いものであることが認められた。
    4.従来,緑茶の滋味に悪い影響を与えるといわれているエステル型カテキン(ガレート)は,通常およびそれ以下の濃度の煎汁では,滋味を高めることが示された。
    5.原料の茶と,その煎汁の化学成分組成は,一般によく似ているが,カテキンの浸出状況にばらつきがあった。
    本研究にあたり,類似度の計算を実施していただきうまた,統計処理に有益な御意見,御指導を賜わった農林省食糧研究所吉川誠次分析部長ならびに官能検査に協力された当場製茶部職員のかたがたおよび煎汁の調製に御協力いただいた中島技官に深く感謝する。
  • 茶生葉の精油成分の差異
    太田 勇夫, 中田 典男, 和田 光正
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 53-62
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶樹品種系統,茶期,栽培環境,年度による茶生葉の精油成分の組成比をガスクロマトグラフィーで調べた。
    1,精油成分の質的な差は少なく,38内外のピークが認められた。
    精油成分の組成をピーク面積比で比較すると品種間差は大きく,それぞれの品種の特徴を示すパターンが得られた。すなわち,リナロールの含有割合の高い品種,ゲラニオール,ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコールの比率の高い品種などに分類することができた。前者に属するものはキャン種,はつもみじ,さつまべにで,後者はいんど,べにかおり,べにほまれであった。
    2,茶期間で最も差の大きかったのはゲラニオールで,ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコールも変化の大きい成分と考えられた。すなわち,ゲラニオールは一番茶の含有割合がきわめて高く,三番茶では低かった。反対にベンジルアルコール,フェニルエチルアルコールは一般的に三番茶でその比率が高くなった。リナロール,サリチル酸メチルは茶期差が比較的少ない成分であった。
    3.アッサム種と日本種との間で最も差の大きかった成分はリナロールで,アッサム種は日本種よりその比率が高かった。ゲラニオールもアッサム種のほうが高かった。日本種はアッサム種に比べてリナロールオキサイド(II),ベンズァルデヒド,ベンジルァルコールの割合が高かった。
    4.栽培環境,年度による精油成分の組成差はあまり大きくなかった。
  • カルボニル化合物
    原 利男, 久保田 悦郎
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 62-66
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    ほうじ茶を減圧蒸留し,液体窒素でトラップした部分から低沸点カルボニル化合物の2,4一ジニトロ7フェニルヒドラゾンを調製し,薄層クロマトグラフィーにより分割した。また,減圧蒸留・エーテル抽出法で得た香気濃縮物から比較的高沸点カルボニル化合物をガスクロマトグラフィーにより分離し,分取したものを2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンに誘導し,薄層クロマトグラフィーのRf,紫外部および赤外部吸収スペクトルなどの分析・手段を用いて同定した。
    その結果,アセトァルデヒド,アセトン,プロピオンアルデヒド,イソブチルアルデヒド,フルフフール,2一アセチルフランおよび5一メチルフルフラールを同定した。また,2一メチルあるいは3一メチルブチルアルデヒドの存在が推定された。
    なお,この他に高沸点部に焙焼香気に関係の深いと考えられるカルボニル化合物が2認められたが,同定することはできなかった。
    終わりに臨み本研究を実施するに際し,2-アセチルフランおよび5一メチルフルフラールの供与を得たお茶の水女子大学山西貞教授および専売公社中央研究所加藤邦雄氏,赤外吸収スペクトル測定にご便宜を賜わった東京大学藤巻正生教授,および静岡薬科大学為政脩教授,ならびに研究の一部に協力していただいた製茶第2研究室水井総枝技官に深じんなる謝意を表する。
  • 原 利男, 久保田 悦郎
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 67-71
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    温度制御のできる実験室規模のほうじ機を試作し,焙焼条件がほうじ茶の品質および化学成分に及ぼす影響を検討し,次の結果を得た。
    (1)茶の品質からみて,ほうじ茶の焙焼条件としては,ほうじ機のドラム内壁温度160~180℃で焙焼するのがよいようであった。
    (2)茶を焙焼することによってタンニン,可溶分およびビタミンCが減少し,特にビタミンCの減少が著しく,ほうじ茶として品質のよいものはビタミンCの残存率が50~55%であった。
    (3)カテキン類の組成をペーパークロマトグラフィーで調べた結果,焙焼することによって煎茶に含まれていた4種の主要カテキン類が減少し,ほうじ茶特有のポリフェノール類が3~4個生じていた。
    (4)head space vaporをガスクロマトグラフィーで調べた結果,ほうじ茶特有のピークが数種類認められたが,これら成分を同定するまでにはいたらなかった。
    この研究を実施するに際し,終始ご指導をいただいた当場古谷弘三製茶部長,桑原穆夫製茶第2研究室長,カテキン類のペーパークロマトグラフィーについてご指導をいただいた中川致之技官および実験機の製作をお願いした静岡機械製作所磯谷恵一氏に深じんなる謝意を表する。
  • 中川 致之
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 72-77
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.外国産および国産紅茶の高,中,下級品35点についてテアフラビン,テアルビジンの分析と官能検査を行なった結果,テアフラビン含量と水色,滋味の間に危険率1%の相関関係のあることが認められた。
    2.紅茶中のテアルビジン含量は高級品でも下級品でもほとんど差がなく,テアフラビンに対するテアルビジンの比率の高いものは一般に品質がよくなかった。
    3.テアフラビン,テアルビジンに対する水色の重回帰式から計算した値と水色審査評点の"ずれ"はきわめて小さかった。
    おわりに,外国産紅茶の試料を提供していただいた三井農林株式会社藤枝工場,統計処理に関し御指導,御意見を賜わった農林省食糧研究所吉川分析部長,官能検査を担当され,実験に対し有益な御意見をいただいた当場桑原技官,計算に御協力をいただいた当場岩浅技官,試料の調製に御協力いただいた中島技官に深く感謝する。
  • 竹尾 忠一
    1970 年 1970 巻 32 号 p. 78-82
    発行日: 1970/01/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
  • 1970 年 1970 巻 32 号 p. e1
    発行日: 1970年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
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