砂質土壌と粘質土壌を用い無機態窒素の動態を,施肥量,施肥時期と肥料を変えて2年間にわたり検討した。
1 NH
4-NとNO
3-Nの土壌中の含有量を1年間にわたり分析した結果,NH
4-Nは4~6月にその含有量が最も高く,秋から冬にかけて低い値を示した。この傾向は砂質土壌において,3~6月の施肥後降雨量が少ないと顕著に現われていた。
NO
3-Nは5~7月と11月に含有量のピークがあり,8~10月と1~4月に谷を持つ経年変化を砂質,粘質土壌で示していた。特にこの周期性は砂質土壌で顕著であった。
砂質と粘質土壌についてNH
4-NとNO
3-Nの含有量を比較すると,NH
4-Nは施肥後の降雨量の少なかった1982年度は砂質土壌で高い値を示したが,降雨量の多かった1983年度では粘質土壌でやや高い値を示した。NO
3-Nは砂質土壌の方が粘質土壌よりも含有量が高かった。この傾向は第1層で顕著であった。
2施肥量,施肥時期,肥料の種類の差異についてみると,施肥量では増施区が慣行区よりNH
4-N,NO
3-N含量が両土壌とも高かった。
また春の施肥量を増すと,NH
4-N含量は1982年度で両土壌とも高かった。
肥料の種類別にみると,1982年度の砂質土壌のNH
4-N含量が第1,第2層とも4~5月にかけて慣行区が有機質区より高かったが,6月に入ると有機質区の方が高かった。NO
3-N含量は砂質土壌の有機質区が5~6月と11月で高いレベルを維持した。
3 茶芽の生育と全窒素含有率についてみると,茶芽の生育(出開度)と芽長は,春増施区と有機質区でそれぞれ高い値を示した。
茶芽の全窒素含有率は,砂質土壌で生育した茶芽の方が粘質土壌の茶芽より大であった。また増施区,春増施区,有機質区ともに慣行区より大であった。
本試験を実施するにあたり,御協力をいただいた奈良農試茶業分場の職員の皆様に深く謝意を表するものである。また本試験をとりまとめるにあたり,懇切丁寧なる御教示をいただいた農水省茶試栽培部前土肥室長の石垣博士,小菅土肥室長,竹尾製茶部長に深く感謝申し上げるものである。
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