人文地理
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論説
  • 松井 歩
    2019 年 71 巻 2 号 p. 127-150
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    2013年漁業センサスによれば日本における漁家の兼業率は50.3%であり,約半数の漁家が漁業以外にも何らかの仕事を持っている。本稿では漁家の生業組み合わせに着目し,石川県能登島における漁家漁業の存立構造を明らかにした。事例地域を囲む七尾湾は閉鎖度の高い内湾であるため,通年で波の低い穏やかな海域で沿岸漁業を営みやすい。そのため,漁業者は世帯の戦略に合わせて多様な漁業種類を組み合わせていた。事例地域においては農業や賃労働,観光業などの生業も組み合わされ,世帯ごとに多様な労働力配分の中で漁家漁業が存立していた。個人・世帯・集落スケールで生業間の関係性を検討すると,海洋環境や地形,インフラの整備などの自然・社会的環境条件,漁業種類の専門性,個人のライフスタイルなどが世帯における生業組み合わせや漁業形態に影響することが明らかとなった。以上から,事例地域における漁家漁業は漁業単独ではなく多様な生業や世帯の戦略を軸に,各スケールにおける自然・社会・文化諸因子の動態的な関係下に存立する。ただし,主たる漁業従事者の高齢化やその子世代の就業形態の変化から,事例地域における漁家漁業が現在の構造のまま維持され続けることは困難である。そのような状況下で,本稿の知見は複数の生業組み合わせを前提とした地域と世帯への総合的な施策がローカルな小規模漁業の維持存立に有効であることを示した。

研究ノート
  • 稲垣 稜
    2019 年 71 巻 2 号 p. 151-166
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    横断データにもとづいて大都市圏郊外の買い物行動を明らかにした研究は数多く存在するが,縦断データに焦点を当てた研究は少ない。本研究では,大阪大都市圏の郊外に居住する人々の買い物行動に関する長期的な縦断データを収集する。対象地域は大阪大都市圏の東部郊外に位置する奈良市の平城ニュータウンであり,アンケート調査にもとづいて分析を行った。バブル経済期までは,大阪大都市圏の上位中心地である難波・心斎橋,下位中心地である大和西大寺駅周辺で高級服を購入するスタイルが維持されていたが,バブル経済崩壊以降難波・心斎橋の利用割合が大幅に低下した。最寄品である普段着の購入においても,1980年時点では百貨店の利用が一定程度あった。しかし1980年代以降,平城ニュータウンに総合スーパーが立地したことにより,普段着を平城ニュータウン内で購入する割合が上昇した。本研究では,大都市圏における買い物環境の変化に伴い郊外居住者の買い物行動が絶えず変化してきたこと,さらには現住地への入居時期により買い物行動の変化の仕方が異なることを明らかにした。

  • 梶田 真
    2019 年 71 巻 2 号 p. 167-183
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,大分市を事例として,1990年代以降における中等教育改革が,各学区の生徒の進学行動にどのような影響を及ぼしたのかを解明し,その結果に基づいて居住地選択にどのような変化をもたらすのかを考察した。一連の中等教育改革を通じて,県立高校では学校間の序列化が進み,公立中学校の進学実績にも有意な学校差を生み出した。最も進学実績の良い2つの中学校の校区では,他の校区に対しホワイトカラー層の卓越傾向が強まっていることが確認され,隣接学校選択制の結果においても,両校は最も人気が高く,競争の激しい中学校となっていた。一方で,こうした校区を志向する,子供のいるホワイトカラー層の世帯と,教育環境を重視する必要性の低い単身者/DINKs(double income no kids)等の子供のいない世帯の居住分化を示唆する動きもみられた。これらの知見は中等教育改革による学校内の同質化と学校間の差異化が,学区内の同質化と学区間の差異化という形で地理的に投影されていることを示すものである。

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