人文地理
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72 巻, 3 号
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研究ノート
  • 酒川 茂
    2020 年 72 巻 3 号 p. 191-209
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,清酒の需要開発に向けたネットワークの展開過程について,広島県を事例に明らかにすることである。特に規制緩和に伴う商品・サービス拡充期にあたる1970年代以降,中小零細メーカーと酒販店に焦点を当てて分析した。メーカー7社と酒販店8店からなる地酒会議は1994年に設立された。地元市場で認知を得るための活動が始まったが,この組織は2002年に発展的解消し,メーカーのみの目聞き会となった。一方,技術交流を志向する魂志会は,地酒会議設立のキーパーソンが深く関与して2004年に発足し,酒販店は時に助言者として参画することとなった。2018年,目聞き会はメーカーが17社に増加して分布域が全県レベルに拡大したのに対し,メーカー6社となった魂志会の分布域は比較的狭い。従来,酒造・酒販の組合はそれぞれ技術開発や販売促進を進めてきたが,メンバー間でも連携が十分であったとはいえず,組合の機能は限定的であった。それゆえ,中小零細メーカーは業種を越え,酒販店と連携するネットワークを独自に形成したことが明らかになった。清酒の需要開発は新たな段階を迎えたといえよう。また,消費者も自身や酒販店が開催する活動を通して,需要開発に重要な役割を担うようになった。

2019年学界展望
フォーカス
  • 森川 洋
    2020 年 72 巻 3 号 p. 299-315
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/27
    ジャーナル フリー

    本稿は第1期総合戦略が終了した2019年の時点において,人口減少と東京一極集中への対応を主目標とする地方創生政策について,地方創生推進交付金の分析を交えてその問題点を検討したものである。第1期・第2期総合戦略の目標紹介に次いで東京一極集中に関する肯定派と是正派の意見を集約した後,東京の機能分散の必要性を強調した。東京への重要施設の過集積によって地方の大都市はダム機能を発揮することができないので,東京の機能分散によって東京圏への人口流出を解消しない限り地方の衰退は改善されないとみる。また,「小さな拠点」は条件不利地域の存続にとって重要ではあるが,基礎的サービス施設は一定の基準に従って全国全域に隈なく配置すべきであると考える。

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