人文地理
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74 巻, 3 号
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研究ノート
  • 鈴木 更紗
    2022 年 74 巻 3 号 p. 199-216
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
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    本稿は,近世期の長良川鵜飼について,尾張藩との関係に着目しながら,最大の特徴とも言える活動範囲の広域性をつくりあげた背景について論じたものである。尾張藩は近世を通じて長良川鵜飼と強い関係性があり,様々な制度によって鵜飼を保護していたが,これには贈答品としての鮎を確保する意図があった。長良川の鵜匠は,多数羽の鵜を通年飼育するため,美濃国をはじめとして,尾張国,三河国,伊勢国など広く領域を超えて活動を展開していたが,こうした活動を可能としたのは,藩領を超えて近隣諸国に一定の影響力を持つ尾張藩であった。鵜匠は,宝暦2(1752)年に発布された触や尾張藩が下付した鑑札によって,所領を横断する自由な通行を認められた。しかし,鵜匠の生業空間は,触によって定められた河川のみならず水路や溜池などにまで及んでいた。これらの場所は,漁業のほか農業や輸送など多くの人が生活のために利用していたため,鵜匠は各地で生業空間をめぐり衝突を繰り返すこととなる。その際,鵜匠の生業空間を保障したのは尾張藩が生業保障のために鵜匠たちに付与した権威であった。

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