人文地理
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72 巻, 1 号
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論説
  • 竹内 祥一朗
    2020 年 72 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,近世の官撰地誌史上の重要史料である『筑前国続風土記』の編纂過程を検討し,さらにこれと福岡藩政や作者である藩儒・貝原益軒の知的実践との関係を論じ,その成果を近世官撰地誌史に位置づけるものである。まず,『筑前国続風土記』の編纂過程について,日記や藩政史料などを用いて検討した。その結果,『筑前国続風土記』の地理情報は藩の支配機構を回路として収集される一方,益軒独自の書物収集によって蓄積されていたことが明らかになった。また,『筑前国続風土記』編纂を成り立たしめた藩儒益軒の知的実践,とりわけ地理的知識の形成は,参勤交代などの移動と藩の職務の遂行を背景としながら,移動先の各地の特性に応じて展開されていた。特に京都では幕藩体制の枠組みを離れた,儒者や公家からなる独自のネットワークを利用して情報の蓄積が図られていた。最終的に,『筑前国続風土記』は型式や政策との関係の点で,官撰地誌史上の17世紀と18世紀の間に適切に位置づけられることを確認し,さらに益軒の考えや配慮に由来する『筑前国続風土記』の個性は19世紀以降の地誌編纂に継承されていくことを指摘した。

研究ノート
  • 王 君香
    2020 年 72 巻 1 号 p. 21-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/08
    ジャーナル フリー

    外邦図は過去の地理情報を直接的に示す資料であり,歴史地理学を始め,地域研究,環境科学などの幅広い研究分野において重要な資料といえる。しかし,これまでの研究の多くは外邦図の目録整理やその製作史に関するものであった。本稿はこうした状況をふまえ,外邦図に記載された黄河下流域の主流における渡口に焦点を当て,旅行記に記録された孟津渡との比較を通して,外邦図の価値と限界を検証した上で,渡口の分布を復原した。さらに渡口の分布の特徴を把握し,その分布に影響を与えた要因を検討した。旅行記に記録された孟津渡の4ヶ所の渡口の内,3ヶ所は外邦図上で確認できた。このように外邦図に渡口は全て記入されているわけではないが,その多くは記載されているといえる。外邦図に基づき復原した黄河下流域の渡口は全部で178ヶ所認められる。渡口は河南省には少ないが,山東省には密に分布している。その要因としては,沿岸の河道状況,鉄道交通,都市(県城)や集落をつなぐ道路,定期市密度にみる経済の発展が関わっていたと考えられる。

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