人文地理
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展望
  • 水野 真彦
    2023 年 75 巻 4 号 p. 389-412
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,経済地理学および隣接分野における地域発展に関する諸理論と政策を展望し,空間の捉え方に関する視点の分類と市場/社会のバランスの両面から,それらの図式化を試みるものである。本稿において,空間に関する視点は領域的視点とネットワーク的視点に分けられる。領域的視点とは国や地域などの領域に焦点を当ててその内部の経済活動を考察するものであり,ネットワーク的視点は領域を超えて広がる経済主体のネットワークとそのつながり方に焦点を当てるものである。一方,それらの議論は,市場とそれによる経済成長を重視する立場と,市場の負の側面を考慮し社会的要素を重視する立場の間のバランスによっても分けられる。本稿はまず,領域的アプローチとして,空間経済学・都市経済学と制度派経済地理学・進化経済地理学と,それらとの比較のため内発的発展論をとりあげ,それらを市場と社会のバランスの観点から位置づけた。次に,ネットワーク的視点として,グローバル価値連鎖論とグローバル生産ネットワーク論,ポスト開発論について同様に両者のバランスの視点から検討した。最後に,タテ軸を視点,横軸を市場と社会のバランスとしてそれらの関係を図式化して示した。このことは地域発展とそのための政策の議論の深化に貢献するものであると考える。

研究ノート
  • 貝沼 良風
    2023 年 75 巻 4 号 p. 413-435
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,山形花笠まつりを事例として,今日における人々の祭りへの参加の経歴と,祭りへの意識を分析し,地域を代表する祭りの存立構造を考察した。山形花笠まつりは花笠踊りのパレードを中心とした祭りである。そのパレードに参加する踊りのチームは,地域住民組織や学校,企業,踊りのサークル,県人会などといった団体によって構成されている。踊り手の経歴をみると,彼らは進学,転居,就職などを契機として,時には所属する団体を変えながら,祭りに参加していた。踊り手は,様々な機会を通じて祭りに参加していくことで,団体や地域への帰属意識,花笠踊りを踊れることへの自信,山形市または山形県などの地域へのイメージといった意識を複合的に持つようになる。踊り手が祭りへの複合的な意識を持つことは,所属する団体が変わったとしても,新しい団体の一員として踊り手が再び祭りに参加することを促している。そして,ライフコースの中に祭りに参加する様々な機会があり,各団体内で経験者と初心者がどちらも所属していることは,未経験者の踊りの習得を支え,新たな踊り手の再生産や,パレードの完成度の維持に寄与しているといえる。山形花笠まつりは,こうした複合的な意識を持った踊り手による,様々な機会での参加の受け皿となっていることによって存立していると考えられる。

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