人文地理
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展望
  • 佐藤 洋
    2024 年 76 巻 1 号 p. 1-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,地方分権の地理的含意を踏まえて,地方分権に関する地理学研究を対象に,権限・財源・政府の分権化を中心に分類・整理し,英語圏と日本の研究動向を比較して成果を明らかにし,新たな研究課題を提示した。地方分権に関する日本の地理学研究の成果としては,①権限(公共サービス)の分権化では,英語圏地理学の影響を受けた,公共サービスの地域間格差や地域的公正概念に着目した研究,②財源(財政)の分権化では,地方交付税や地方税などの歳入や歳出の配分を対象に,地域特性や水平的な政府間関係に着目した研究,③政府(行政組織)の分権化では,市町村合併や広域行政を対象としてスケールや水平的政治競争に着目した研究が蓄積されてきた。以上を踏まえた課題と地理学からの貢献可能性としては,①権限(公共サービス)の分権化では,公共サービス供給の空間的範囲やスピルオーバーに関する研究に検討の余地があるため,これらの研究を通じた地方分権の基礎的理論の解明や,自治体間で公共施設や公共サービスを融通し合う体制の構築,②財源(財政)の分権化では,近年は歳出に関する研究が不足しているため,地域特性が歳出に与える影響の検討を通じた効率的で持続可能な行財政運営の実現,③政府(行政組織)の分権化では,人口減少・高齢化により自治体の人的資源の不足が問題視されているため,移譲された権限と人的資源とのミスマッチの解消に対する貢献が挙げられる。

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